「お願い、ふりだけでいいの」
そう請われ絢瀬さんの恋人役を演じるようになって数ヵ月。最初はストーカーから彼女を守る為だったけど、一緒に過ごすうちに唯々楽しくなっていた。
その一方、元々好意を抱いていた相手だっただけに、この自分勝手な感情を悟られる訳にいかないとずっと自分を戒めてきた、のに。
「希、大事な話があるの」
『ふり』を解消してほしい。そう言って近付いてきた彼女の手にした小箱には、陽光を浴びて輝く対の指輪。
「私の本当の『恋人』になってくれる?」
「…うちでええの?」
困惑気味の問いに返る「私がお願いしてる側よ」との言葉と共に白銀の片割れを指に通される。
それは、偽物が本物に変わる瞬間。