拳
身体に見合わぬランドセルを背負い、胸に猫を抱きしめ小さく震える少年と、刃物を片手に少年に詰め寄る男の間に身を滑らす。頭には、今朝方腐れ縁のおかっぱから聞いた「最近小動物が意図的に傷つけられて居るらしい」と言う言葉が浮かんでいた。「テメェ、ソレどうする気だ。」低い声に、目の前の男が肩を揺らし半歩下がる。「どうする気だって聞いてんだよ。」語尾を強めもう一度問う。何も返答が無ければ多少の暴力も辞さないと、拳を握れば男は俺の背に居る少年に一度目をやり、そのまま身を翻し走り出した。二、三かけた静止の声も届かぬ背を睨み付け、後ろを振り返る。