私が物心つく前に、病に倒れた母
連休になると、父が車を出して母の墓へ向かった
旅行には行かなかった
けれど、道中の街並みや山々を眺めるのが好きだった
峠に連なる車のテールランプは、まるで誕生日ケーキを飾る蝋燭の炎のようで、子どもの私は、それを綺麗だと思っていた
その時間帯になると、父は疲れたのか、私に肩をたたいてくれとせがんできた
私が肩をたたいていると、父は「眠くなるな」と言って、冗談めかして鼾をかく
そんな父は嫌いじゃなかった
私はずいぶん歳を重ねた
二人の墓参りには、相変わらず誕生日ケーキに火が灯っている
今はもう、私も自分の力でそこへ行ける歳になった。