ケーキバースのカサネオトスバ
「戻ってこいよ」
仮面を貼り付けた笑顔で彼は言った。僕は首を横に振る。悲しそうな顔をされるが、それもどうせ演技に違いなかった。
「頑固者め」
「僕が戻ったらどうなると言うんですか」
「そりゃ良いことだらけだ。まずふかふかのベッドと温かいお風呂に毎日入れるし、王選候補者の元で内政官として働くなんてやりがいのある仕事も紹介してやれる。それに──もちろん食事も」
ごくり、と喉が鳴った。もう僕は、この世で一番美味しい味を知ってしまっている。その唇に食らいついてやれば、首元に噛み付いてやれば、溢れ出る汗と涙を吸い取ってやれば、一体どんな味がするのか、僕知っている。