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まくらめ

@mkrm92.bsky.social
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ドラロナを書く カプなしも書きます 右ロを読む 文章練習場 自我あり なにかあれば!🌊 wavebox.me/wave/ak8lkwyspessfp8q

PostsRepliesMedia
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 6h
Δドラロナのショート 二人で煙草を吸う話 6P
063
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 13/10/2026
これで伝説のウンコマンだね、モフチャン
0102
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 10/10/2026
😆✌️
ゴッホで100時間達成!
131
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 06/10/2026
付き合ってるドラロナがコインランドリーにいく話 この前の無配でした!貰っていただきありがとうございました!
0145
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 04/10/2026
ドロトークたくさんできて楽しかったです!!アフターもハピハピすぎました〜!!ありがとうございました!🙇‍♂️✨ これは下手すぎる写真
1100
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 04/10/2026
スッキリテーブル 笑火さんのお隣〜たのしい🎶  そして色々聞きまくってしまい申し訳ない!!ありがとうございます!!
1152
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 28/09/2026
Δドラロナのショート、ポップ 二人はラブラブ 流血、人体損壊、臓器描写、カニバリズム(軽)あり
0134
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 25/09/2026
ドラロナ これの続き、ラストです。ずっと後の話。転化についての話あり
0176
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 21/09/2026
新刊サンプルです、本文より抜粋
010
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 21/09/2026
10/4開催福島ADV021のお品書きできた!よろしくお願いします!!ありがとうcanva、素晴らしすぎるcanva
31511
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 18/09/2026
2/2 二人に青春してほしい
「こっちもおいしいね」
「……へへ、うまいよな!」
 そう、おいしい。再度焼きそばを口に運び、もぐもぐ噛んでごくんと飲み込む。ジャンキーな味なのに、馴染みやすくてするする入っていく。
 求めるままの味が提供されるという嬉しさ。ドラ公のごはんは本当に美味しいけれど、たまーにこういうのを食べると舌が喜ぶんだよな。あいつにバレたら「バカ舌」とか言われそう。帰ったら殺すか。……流石にキレられそうだな。
 ふと、耳に入る鈴虫の声。リンリン、という澄んだ合唱と共に、サアアッと木枯らしが吹いて葉を鳴らす。空を見上げると、そこにはまん丸な黄色い月。
 それにしても。
「な、サテツ」
「なに?」
「公園でメシ食うの、めっちゃ美味くない?」
「……確かに、そうかも?」
 家で食べても美味しいけれど、なんだろう。外で食べると言いようのない良さがあるというか、なんというか。秋だし、気持ちいいし、深夜だし。
 ずるっと麺を啜り、笑う。
「なんか、楽しいな」
「うん、そうだな」
 深夜、公園でカップ焼きそばを啜る。月と電灯の明かりに照らされ、涼やかな空気に浸りながら。ジャンクな食事は、深夜にこそ一等輝く。
 なんか、めっちゃいい夜じゃね? なんて。満ち足りた気持ちで二人笑う。そのうち、揃って空を見上げた。
「また、こういうのやりてえな~」
「やろうよ。今度はハンバーガーなんかどう?」
「いいな! テイクアウトとかしちゃおうぜ」
「これからの時期なら、月見バーガーとか? ……お腹減ってきた」
「んはは、今食ってんのに!」
「へへへ」
「美味いよな~、月見バーガー」

 朝日はまだ遠い。お腹いっぱいのまま新横浜へ戻ろう。並んで歩いて、たまに走りながら。
061
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 18/09/2026
サテくんとロナくんの小話 深夜に焼きそば食べる話です 1/2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「食遊記」、「まくらめ」と記載されています。
画像情報:generated by 新書ページメーカー / Photo by somephoto / フォント:源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

「な、これ食べんの手伝ってくれねえ?」
「どれ? ……俺が全部食べてもいいなら」 
「ダメに決まってるだろ」
 ちぇ、と人差し指を口に当てたサテツへ突っ込みを入れる。
 深夜のコンビニにはサテツとロナルド、そしてレジ作業をしている店員さんの三人だけ。真っ暗闇の中、ぼんわりと明るい光を放つ店舗に惹かれ入店した二人を迎えたのは、棚にぎゅうぎゅうに詰められたカップ食品。
「サテツには他のやつ一個奢るから、これだけちょっと手伝ってくれよ」
「えっいいの!? まあ、それなら」
「よっしゃ! どれがいい?」
 少し悩んだ末、サテツが隣の棚からカップカレーライスを取り出す。おお、そっちに行ったか。
「これ、容量入ってていいんだよな。辛さも選べるし」
「ゴハンも結構膨らむしな~」
 本当にいいの、なんてニコニコ笑顔で差し出された容器を受け取る。めっちゃ笑顔じゃん。
 それからロナルドは「一回食べてみたかったんだよなあ」なんて呟きながら、大きな容器を手に取り笑みを浮かべた。

 時は遡り一時間前。
「意外と時間かかっちゃったしな~……」
「仕方ないか……」
 閉鎖された駅構内を前に、並んでため息を吐く。簡潔に言うと、二人は終電を逃した。ギルドから派遣され吸血鬼退治に訪れたは良いものの、退治終了時刻を思いっきり見誤ってしまった。こんなことになるのならレンタカーでも借りればよかった。
「タクシーでも手配する?」
「うーん、ちょっと勿体無くねえ?」
「まあなあ」
 深夜料金のタクシーは割高だ、不要な支出のようでなんとなく気が引ける。それはサテツも同じらしく、彼から言い出しておきながら乗り気な様子では無い。
 打つ手なし。
 会話が途切れたタイミングで、ぐるっと周囲を見回す。駅の中央、壁時計が指しているのは十二時半。
 この辺りにはあまり来ないが、知らない場所というわけでもない。季節だって既に秋も半ばで、深夜という時間帯も相まって気温は快適。
「……なあ、歩いて帰らねえ?」
「……そうする?」
 暫く歩けば新横浜に戻れるだろう。少なくとも始発よりはよっぽど早く帰れる。
 二人で目を合わせて頷く。そうと決まれば、地図アプリを起動して歩き出した。
 ギルドまで、あと二時間半。


△

「俺の勝ち~!!」
「ちょ、ロナルド! スタートって言わなかったろ!」
「アハハ!」
 歩き出して一時間は過ぎただろうか。道は暫く真っ直ぐで、民家も遠い。道の片方はガードレール、もう片方は林が続く。多少ふざけるには丁度良い道だろ?
「ちょっと対決しようぜ」なんて言って、それからすぐにダッシュを決めたロナルドに、追いついたサテツが文句を宣う。
「じゃあ、もっかいやるか?」
「ええ、うーん、それはいいよ。俺走ると音すごいし」
「お前の左手ガシャガシャ言うもんな」
「うん。だから――スタート!」
「あっおいサテツ、ずりーぞ!」
 悪戯っぽく笑って走り出したサテツを急いで追いかける。身軽さでいえばロナルドが圧倒的に優位だが、サテツは身長が高い分単純にリーチが長い。
 とはいえ負けてはいられない。ぐんと腕を振り、脚ではなく身体で走る。深夜の秋風が頬に当たって心地よい。一気にサテツを追い抜き、勝鬨を上げた。
「――よっしゃー勝ったぜ!」
「っふぅ、やっぱりロナルドは速いな!」
 楽しそうに笑うサテツへと振り返り、ピースを突きつける。それから拳を向けると、サテツは「おっ」と相好を崩して手を挙げた。そのまま、慣れた手つきでグータッチ。
「ロナルド。あとどのくらいなんだ?」
「んー、あと半分くらい? まだまっすぐ」
 この程度の移動で退治人二人の体力が削れる訳もない。世間話しつつ、追いかけっこを挟みつつどんどん進む。
 そうこうしているうち、ふいに黄色のライトが見えてきた。見覚えのある看板についお腹を押さえる。隣を覗いてみると、同じ動きをしている男が一人。
「……なんか食べてく?」
「俺も、そう言おうかと思ってた」
 へへ、とサテツが笑う。退治終わりの長い散歩道、お腹が減らないわけがないのだ。

そんなわけで。

「うわー、すっげえ!」
「普通のやつの四倍だったっけ?」
「それがさあ、七倍らしいぜ! 一回食べてみたくてさ~」
 コンビニ備え付けのケトルでお湯を出し、指定の場所に捨てて隣の公園へ。砂場の近くにあるベンチへ座り、目の前の木製テーブルに二つの容器を置く。一つは大きな白いプラスチック製のもの。もう一つは手に収まる程度の丸いもの。こちらはサテツのものなので、彼の目の前に置く。そして、ロナルドの目の前には。
 ――ペヤ◯グ、ペタマックス。
 蓋に並ぶ怒涛の「超」の文字に気圧される。発売当時大きな話題を呼んだこの商品。いつか食べてみたいな、と思ってずっと気になっていたのだ。しかし一人では食べきれなさそうだし、愛しのマジロと分けて食べようにもいささか量が多すぎるし。
 だが、今日はサテツがいる。
「俺半分食べるから、残り半分よろしくな!」
「任せて! じゃ、俺、先にカレー食べてるね」
 サテツは丸い容器にスプーンを差し入れると、ぐるぐるとお湯と具をかき混ぜていく。そのうちスパイスの美味しそうな匂いが漂いはじめると、律儀に「いただきます」と告げてから、カップカレーを食べ始めた。
 一方、ロナルドは容器の中の麺をざっくり半分に分けて、反対側とこちら側へ寄せた。これで準備は完了。
「よし、いただきます!」
 ぐわっと箸で摘んで口に含む。そのままズルッといくと、懐かしい味が口内に広がった。うまっ!! カップ焼きそばなんて暫く口にしていなかったな。甘くて辛いソースの濃い味がめちゃくちゃに脳を刺激してきて、あー最高。これこれ。
 舌鼓を打ちつつ、「そっちうまい?」「おいしいよ」なんて質問しているうちに、徐々に腹に溜まっていく感覚。美味しいんだけど、マジで多い。パッケージに書かれていた「決して一人で食べないでください」という表示に密かに納得する。これ一人で食べる量じゃないな。
「サテツ、お前すげーな」
 目の前には、反対側から焼きそばを頬張るサテツ。カレーはとっくに食べ終えたらしい。
 全く応えた様子のない彼は、いつものように全くペースを変えずに麺を啜っていた。ニッコニコで。
1146
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 17/09/2026
たのしかった✌️
091
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 16/09/2026
チチャモフ デカモフ
170
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 13/09/2026
仕事終わらないし羽田と成田間違えるし絶食だしで終わりかと思いました モフちゃん、ガンダに付き合ってくれてありがとうね……
190
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 12/09/2026
マインスイーパ懐かしいと思って久々にやったら止まらない たのし〜 タイムがめっちゃ落ちてる、マインスイーパ筋が弱った
020
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 30/08/2026
2/2 フォロワーさんとリプでお話してできたやつです。小説の許可&お付き合いありがとうございました!
けど、何だ? その微笑ましい物を見るような目は!
 とうとう辛抱耐えられなくなって、ドラルクの頬っぺたを両手で包む。おっ? と瞬いたドラルクのその唇を狙って、ちゅーしようとしたんだけど。
「ウォワー!! 勢いが強すぎるっ!!」
「あっ」
 前歯がガチンと当たって目の前の男が砂と散った。死んじゃった。なんで死んじゃったんだよ、死んだらちゅーできねえじゃん。どうしよう、俺もうドラルクとちゅー出来ねえのかな。途端、視界が滲み目頭が熱くなる。
「若造、加減ってもんを……ちょ、泣くな!」
「ドラルクともうちゅーできなくなっちゃった~!!」
「出来るわ! あーもー、ほら」
 蘇ったドラルクは仕方なさそうに笑うと、俺のほっぺたに指を当てて涙を拭う。それから頬に手のひらを当てられて、そうしてようやく、二人の睫毛が近づいた。
 上唇だけ触れ合う距離で、ドラルクが甘い声を出す。
「焦らしてごめんね、ロナルド君。君が可愛くてさ」
「……ちゅーできる?」
「出来る出来る、はいちゅー」
「ン」
 やっと唇に落ちた感触。俺と違って薄い唇。でも、柔らかくって、気持ちいいんだよな。何度かちゅ、ちゅっと触れ合うだけのちゅーを繰り返して、ようやく涙が止まった。ドラルクが口を離していつもの意地悪そうな笑顔を浮かべる。
「ほら、出来たろ」
「うん、へへへ」
 嬉しくなってほっとすると、今度こそ目蓋が重くなる。ぱち、ぱちとゆっくり瞬きしていると、ドラルクに「歯磨きだけしちゃいなさい」と手を引かれ、洗面所へ連れていかれた。それから歯ブラシに歯磨き粉を出してもらって、歯磨きしながら温かいタオルで顔を拭かれて。あーきもちい、どんどん眠くなってきた。
「ほら寝るよー」
「ンー」
 うがいして、また手を引かれて、気が付いた時にはソファベッドに横になっていて、あれ? いつの間に。
「どらこ」
「なに?」
「もっかいちゅーして」
「はいはい」
 寝っ転がったまま、ドラルクとちゅっと唇を交わす。ンフフ、なんて笑った後、ぽろりと言葉が衝いて出た。
「俺、お前とちゅーできなくて寂しかった」
「……そう。私も寂しかったよ」
「マジ?」
「マジマジ」
「んへへ」
 返事に満足して、口元までブランケットを引き上げる。ぽん、ぽんと頭を撫でられている内、いつの間にか意識が落ちていた。全身がずっしりとベッドに沈み込んでいく感覚。真っ暗闇に落ちていく意識。
 今夜はぐっすり眠れそうだなあ。


 あああああああ。
 ちゅんちゅん、ちちち。小鳥の鳴き声響く気持ちのいい朝、ソファベッドの上で声にならない叫びを上げる人間が一人。脱稿ハイからの十分な睡眠。ぱちっと目を開け、昨夜の自分を思い出し、羞恥に震えるまで一分もかからなかった。
 ――昨日の俺やばくなかったか!? い、一週間分ちゅーしてってなに!? 最後寂しかったとか言っちゃってなかった!?
 大の男が言う台詞じゃないだろ! 足を出来る限り静かにばたつかせ、うおおと両手で顔を抑えていると、ゴト、と重い蓋が開く音がした。
「……おい、ロナ造、起きたか」
「あっえっあっあっ」
「寝起き一発寄声を上げるな」
 だって、だって。ううう、と震えつつ、か細い声を出す。
「……なんでお前起きてんの」
「君が起きるのを待ってたんだ」
 なんで。昨日の俺が気持ち悪かったとでもいうつもりか? しょうがねえじゃん、だってさああ。なんて考えつつ、小声で漏らしつつ。そっと背凭れから顔を出して床をのぞき込む。そこに居たのは、蓋をちょっとだけ開けて、ちょいちょい、とこちらを招く吸血鬼。
「おいで、昨日の分だけじゃ足りないでしょう」
「……なにが」
「一週間分のちゅー」
「ピャッ!」
 思わずぎゅっと背凭れを両手でつかむ。生地がミシミシ言っているけれど力を緩められない。なん、そんな、なっ!
「ほら、ロナルド君」
 意地の悪そうな、それでいて、ロナルドの前だけでしか見せない甘い表情で誘われる。二人並んではいったらぎゅうぎゅうになる、真っ暗なそこに。
「私とちゅー、したくない?」
 ――その聞き方はずるいだろ。したいかしたくないかでいったら、そりゃさ。お前さあ。
 そっと身体を起こして数歩歩いたら、そこはもう吸血鬼のねぐら。おいで、と誘う男にまんまとつられ、真っ赤な顔で入り込む。


 蓋が締まったら、あとは二人っきりの世界。中でなにが起こっているのかは、ロナルドとドラルクのみが知る。
181
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 30/08/2026
ドラロナ ちゅーする話 1/2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「七日分じゃたりない」、「まくらめ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

「ウッヒョヒョヒョ脱稿だーーーーッ!! 祭りじゃ!!」
「逃げるぞジョン」
「おっドラ公じゃねえか。ちょっとここ入れよ」
「ウワー! 私は終わりだ、ジョンだけでも逃げてくれ~!!」
「ヌー!」
 60リットルの透明ゴミ袋に試しにドラルクを入れてみた。このまま振ったらどうなるんだろうと思って試すと、「ギャー」と言いながら中で塵になったので、なんだか愉快になってさらに振る。シャカシャカと音が響いた、マラカスみたい!
「踊ろうぜ、ジョン!」
「おぼががが」
「ヌアー!!」
 袋を抱えて適当にステップを踏むと、サラサラ、しゃかしゃか、いろんな音が鳴って楽しい。くるん、と一周回ると世界も回る。俺バレリーナになれるかも。いや、もうポールダンスがあるからなあ、他の踊りに手を出すわけには。
 一頻り踊った後、うつ伏せに寝転がり両肘を着いてジョンと視線を合わせる。「次はダンスフロアに行こうぜ!」と誘うと、泣いたマジロがヌーヌー言いながら首を振ったので、残念だなあと思って眉が下がる。そんなことをしている内に、床にほっぽりだした袋から零れた砂が人の形へと戻った。
「あー酷い目にあった。オエ、気持ちわる」
「ヌー!」
 ぴょん、と跳ねたジョンがドラルクの胸へと飛び込み、復活を喜んだ。笑顔のジョンが可愛くてニコニコしていると、ドラルクはこちらをジト目で睨みつつ、ため息を吐きながらあぐらをかいた。
「今回の脱稿ハイ、面倒臭いな」
「ジョン!! 俺のこと撫でて!!」
「声でっっっかいし急だな」
「ヌー」
 頭を屈めると、ドラルクがジョンを俺の頭の前に持ち上げた。小さな暖かい手がぽんぽんと頭を撫でてくれたので、嬉しくって思わずにんまり笑う。
 ジョンが「ヌヌヌヌヌヌ」と言ってくれたので「ありがと~!」と返す。へへ、原稿を終わらせた俺はジョンから「お疲れ様」を貰う権利がある!
「ハア。まあ、なんか食わせりゃ寝るだろ。今日で三徹目だし」
「俺は絶対に寝ねえぜ!!」
「ご覧、ジョン。若造の声量設定がバグって全部100デシベルになっちゃってるよ。いいから寝なさい。なんか作ってやるから」
「見ろ! 今からI字バランスやるから!」
 しゅばっと立ち上がり有言実行すると、ジョンがぱちぱちと拍手をしてくれたのでとても誇らしくなる。俺すごい? 次Y字バランスやるから、見ててジョン。
「とりあえずこれでも飲んでろ」
 いつの間にかキッチンへと消えていたドラルクが、マグカップ片手に戻ってくる。ホットミルクのいい香り。そして、一緒に漂う甘い匂い。
「もしかしてはちみつ入ってる!?」
「入ってる入ってる。ほら、座って飲め」
 弱い力で押されてソファに腰かけると、ほら、とずずいとマグカップを押し付けられる。美味しそう。ふーふー息を吹きかけてからごくんと飲み込むと、甘い牛乳が口に入ってほっと一息つく。そのまま全部飲み切ると、全身ぽかぽかになってなんだか横になりたくなってきた。
「ほら、マグカップ返して」
「ンー」
 背もたれに全体重を預け、首を曲げて天井を仰ぐ。本当に、今回は大変だった。原稿の前には退治も重なってしまって、思えばこうやってゆったり座ったのは実に一週間ぶりになるかもしれない。そのくらい、ずっと身体と頭を動かしていた。疲労の募った頭がジーンと痺れて、動きが鈍くなる。
 そうだ、そういえば一週間、ドラルクにも触ってない。
「おい、どらこー。ちょっとこっち来い」
「何? ちょっと待ってろ」
 シンクにマグカップを片付けにいったドラルクが「そのまま寝ろってのに」なんて言いながら戻ってくる。首をのそりと向けて、ここに座れとソファをぽんぽんと叩くと、ため息を吐きながら腰かけてくれた。
 背中を離して身体を起こし、ずい、とドラルクの前に身を乗り出す。それから両手を着き、ぐっと視線を上げて、ゆっくり告げた。
「どらこー、ちゅーしろ」
「は?」
「もう一週間お前とちゅーしてない」
 これは由々しき事態だ。ふれあいが少ないカップルや夫婦は別れが早まる傾向にある、一日一回の軽いスキンシップはストレス解消にも役立つしオキシトシンとやらが出まくってハッピーになりまくるらしい、というのにここ一週間禄にお前に触ってない。これはやばい、別れの危機、危急存亡、迫る破滅。
 と、いうようなことを早口で言い募る。ドラルクは話の間、「へえ、そう、ふーん」などと神妙に相槌を打った。お前にも分かったかこの危険性が。あれ、ジョン、キンデメさん連れてどこいくの。え、事務所で映画みるの? 俺もいきたい。
 立ち上がろうとした瞬間、顎をぎゅむっと掴まれて目を丸くする。ドラルクに片手で掴まれて視線を合わせられた。ので、反射でガンを付ける。あ? なんだてめえ殺すぞ。
「おい待たんか、ちゅーするんじゃなかったのか」
 そうだった。「ちゅーしてくれんの!?」と喜ぶと、ドラルクは「もちろん。ホラ、目を瞑って」と告げた。よしよし、と思いながら目蓋を閉じて、ドラルクに要求する。
「いいか、一週間ちゅーしてなかったんだから一週間分ちゅーすんだぞ!」
「はいはいわかった」
 ドラルクが迫ってくる気配がして身構えていると、ふに。おでこにあたる柔らかな感触。目を開き、むぅと口を尖らせる。
「おい、ちゅーつったら口だろ口!」
「口はどこかな~」
「ここ! みえねえの? もう老眼か?」
「なんだとこのガキ」
 人指し指で自分の唇をつんつんつついて教えてやる。ドラルクは頷くと、今度は鼻に唇を落とした。「ちーがーう!」と睨みつけると、続けて頬っぺたとか唇の横にちゅーされて。「ちゃんとやれって!」と怒っても、ドラルクは楽しそうに笑うだけだし。むうう、と頬を膨らませてみせる
1175
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 25/08/2026
サテくんとロナくんの小話 大食いに行く話です
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「食遊記」、「まくらめ」と記載されています。
画像情報:generated by 新書ページメーカー / Photo by somephoto / フォント:源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

 なんでもない用事の帰り道。新横浜駅から歩いて五分、何の気なしに通った飲食店街で、はた、と気づく。
「……あ」
 小さな黒板製の看板に描かれている、イラストと文字列。目に留めたそれをまじまじと見つめ、ふんふんと頷き、それからスマホを取り出した。
 昨日一緒にパトロールをしたとき、今日は終日オフなのだと言っていた。では早速、と電話を掛ける。きっと大喜びするだろうなあ、なんて考えて、思わず笑みがこぼれた。

 通り沿いの電柱の下、手持ち無沙汰にスマホをいじっているとほどなくして声がかかった。
「ロナルド!」
「おーサテツ! 待ってたぜ」
「急にどうしたんだ、呼び出したりなんかして」
「まあまあ、付いてこいって。今日暇なんだろ?」
「そうだけど……」
 急な呼び出しに応じてくれたサテツを手招きしながら、二人並んで歩く。五歩、六歩もいかない内に見えてきたのは黒板で出来た看板。自分でもわかるくらい、口元がにやりと緩んだ。
「ほらこれ」
「これ、お前……!」
 新装開店! 大食いチャレンジ開催中!
 でかでかと書かれた文字と、その下にチョークで書かれた手書きの大盛チャーシュー丼のイラスト。途端、瞳をきらきらと輝かせたサテツにふふん、と胸を張る。
 蕎麦屋さん大食いチャレンジ、超大盛ビビンバ攻略戦、から揚げ 8kg勝負、ラーメン合計 6000g食べきれたら賞金あり――。
 ロナルドは様々な場所で大食いチャレンジを見かけては、その都度サテツに連絡を取ることを習慣としていた。無限の胃袋を持つサテツはいつだって食に飢えている、だからこそ。
「あ、ありがとうロナルド!!」
「へへ、まだこの店知らないだろうと思ってさ。ほら、入ろうぜ!」
「うん!」
 にこにこ笑顔のサテツを引き連れ、暖簾をくぐる。たくさん食べれば食べるほど褒められる、そんな場所が彼には必要なのだ。

「はー、おいしかった!!」
「あっという間だったな……」
「自慢の10㎏が~!!」
 入店、注文、完食。果たしてかかった時間は計40分。その間、注文・調理時間が25分。初めは「残ったらお持ち帰りしてもいいからね!」と快活に笑っていた店主の顔。それが驚愕に歪み、恐れ、戦慄くまではすぐだった。そうだよな、見慣れてるからなんとも思わなかったけど、初めて見ると普通に人間びっくりショーの類に入るか。
「デザートにパフェでも頼もうかな」
「おっ、俺も食べようかな」
 再びメニューを開いたサテツに続いて、ロナルドも覗き込む。サテツと違って通常サイズのチャーシュー丼を頼んだが、この店は全商品デカ盛りサイズで提供されているらしい。通常とは思えないほど大盛りではあったが、ロナルドだってサテツほどではないにしろまあまあ食べるタイプだ。ぺろりと完食し、アイスでも食べようかと吟味する。
 さて店員さんを呼ぼうか、というところで店主がテーブルへと現れた。どうしたのだろう、と二人揃って首を傾げる。
「すみません、少しお願いしたいことが」
「はい?」
「完食した方に記念の写真撮影をお願いしようと思っておりまして。完食第一号として、チェキを撮っても構いませんか。壁に貼り付けさせてもらいたいんです」
「ええっ」
戸惑ったサテツがロナルドへと視線を向け「ええ、どうしよう、そんな」ともごつく。「いいじゃん、記念だぜ!」とロナルドが笑うと、そうかなあ、なんて言いつつ、それでも尚惑っている。そのうち店主から懇願されると、ようやく頷いた。お前、頼まれたら拒めない性質だもんなあ。なんて、人のこと言えないけれど。
「ありがとうございます! あの、よろしければお連れ様も」
「えっ!? 俺もですか?」
「ええ、ぜひ」
 今度はロナルドが助けを求めてサテツを振り向くと「いいじゃん、一緒に写ろうよ」と笑い返される。食べてないのにいいのか? と思いつつ、促されるままサテツの隣へと腰かけた。うわ、空き皿でかっ!
「あれ、すいません。お二人が写真に収まらないな……」
「サテツでかいからな~」
「な、ロナルドだって小さくはないだろっ」
 軽口を叩きつつ、二人小さく縮こまる。最後にサテツがきゅっと頭も肩も出来るだけ丸めたところで、ようやく画角に収まったらしい。
「ではいきますよ、はいチーズ!」

「ごちそうさまでしたー!」
「おいしかったです!」
「またどうぞ~!」
 にこやかに店主や店員から見送られつつ、店を出る。従業員みんな明るくて、ご飯も美味しくて良い店だった。これはリピート確定だな。
 歩きつつ二人、腹を抑えながら会話する。
「いやーおいしかったな!」
「そうだな。教えてくれてありがとう、ロナルド」
「どういたしまして」
 自分ではあれほどの量は食べられない。目の前でどんどんと大量の食材が消えていくのを眺めるのはなかなか楽しいものだ。動画サイトでは大食い動画が人気を博しているというが、サテツと共に大食い店に入るたび、そりゃ人気も出るだろうなと思う。動画越しでも圧倒されるというのに、それが生で見られるのだ。
「俺もお前と飯行くの楽しいからさ」
「そ、そうか?」
「二度と奢らないけど」
「はは……」
 奢ると言って連れて行った焼肉店。焼いた瞬間に目の前から消えていく肉の山を忘れることは生涯ないだろう。苦笑いするサテツに笑いかけながら、昼の新横浜を歩く。
「次回はラーメン食べに行きたいな!」
「えっ。じゃあ、今から行くか?」
「……俺、流石に入らねえかも」

 新横浜の一角。新しく開店した中華料理店の壁には退治人二人のチェキが飾られている。恥ずかしそうにへらりと笑ってピースをした、二人の写真が。
1145
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 24/08/2026
月一回の仙台訪問三ヶ月目記念 画質の悪いミニロちゃん
030
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 22/08/2026
2/2
「多分人間でも危ないと思うけど。その状況」
 二人で好き放題言いながら、植物の間に整備された道を進む。人気なのは温室より手前のエリアや、屋外の花園らしい。すっかりと人影の途絶えた空間を、二人きりで歩く。
 ロナルドは車を降りたときからキャップを深く被り続けていた、身バレ対策なのだろう。……顔を隠した彼と二人、夜の植物園での散歩。なんだかお忍びデートみたいだな、なんて空想してからようやく思い立つ。
「そうだ、ロナルド君。退治ってどうなってるの?」
 先ほどまで柔らかな笑みを浮かべていたロナルドが、すっと真顔に戻り「それは……」と言ったきり、ふいに顔を背けた。覗き込むように表情を追うと、さらに顔を背けられる。だいぶん体幹反っちゃってるけど。バランス感覚すごいな。ていうか、あれ。
「……拗ねてる?」
「ハ?」
 一転、ロナルドはドラルクへと視線を戻すと、僅かに眉根を顰めた。
「んなことねえよ」
「……本当に?」
「チッ」
 舌打ち出てるぞ。
 ――勘。そうとしか言いようがない。ロナルドと幾度も時間を共にしてきたからこそ、なんとなく感じた疑念。でも、なぜ。仕事について尋ねただけなのに。……いや、待てよ。彼は城を出る時に「退治」など言っただろうか。もしかしてこれは、仕事ではない?
「なあ、もしかして今日って」
「ドラルク」
 あからさまに言葉を遮られる。はた、とロナルドをみると、彼は唇をはく、と動かし、それから視線をうろうろ彷徨わせる。そして暫くの逡巡の後、ふいにドラルクの手を握った。ふわりと、頼りない力で。
「……この橋の向こうまで、このまま進むぞ」
「……わかった」
 突然の指示。しかし、意図がわからない以上そのまま従うしかない。ドラルクの予想が当たっているのかはまだわからないから。ああ、でも。
 きゅっ、と手を握り返すと、ロナルドはびくりと震え、それから柔く握り返した。
 そういえば、こうして手を繋ぐのは初めてだ。 
 ロナルドは素手、ドラルクは手袋越し。ああ、惜しいことをした、手袋を外しておけばよかったな。ごつごつとした手、様々な武器を扱い吸血鬼を滅してきた君の、タコだらけの手のひらに触れる幸福を噛み締めたい。
 しかし、時間は無常に過ぎ去る。短い木製の橋など十数歩で歩き終えてしまう。
「……もういい」
 渡り終えた途端、ぱ、と離れた手のひらに、あ、と追い縋るような声が漏れた。
 俯くロナルドの赤く染まる耳。そのまろやかさに唆られる。
「……ロナルド君、ここに吸血鬼は居ないってことでいいか」
「……」
「いいんだな?」
 誰もいない温室の中。人工の川の音が、低い滝の音がゴォと響く。ロナルドはそのまま動かない。彼の正面に回り、深く被ったキャップをついっと引き上げる。ようやく現れた青の瞳。ねえ、こっちを向いてよ。
「どうして今日ここにきたのか、聞いてもいいかい」
「……理由が、いるのかよ」
「……それは」
 ロナルドの顔。む、と唇を尖らせて、目を伏せたその表情。
「恋人と出掛けんのに、理由がいるのか」
 そう言ってぷい、とそっぽを向くのが可愛らしくて。つい彼の手を握ろうとすると、ばっと振り払われ瞬く。
「あっその、すまない」
「っ、いや、ちがう。……もういい」
 さっきくらいで、ちょうどいいから。
 そう、モゴモゴと口にしたロナルドの頬が淡く染まっていたものだから。心臓がぎゅうっと収縮して、誘われるままに目の前の手のひらを握りしめた。おいっ、とまたしても振り払われそうになり危うく死ぬかと思ったが、気合いで押し留める。美しい碧眼がようやくこちらを向いた。私の知らない、昼の空の色。
 うん、これはわたしが悪かったな、ふふふ。
「ロナルド君」
「っ、ん」
 顔を寄せ、やわらかな口許にキスを落とす。触れるだけの優しいそれに、ロナルドは肩を震わせた。数秒の後、そっと離すと、ジトリとした視線が向く。
「……お前、こんなところで」
「いいじゃないか、誰も居ないんだし」
 もう一度口付けようとすると、入り口の方から「すごいねー!」なんて声が響く。温室の奥の奥、植物に隠れた自分達を視認してはいないだろうが、思わずびくりと肩が跳ねた。
 ロナルドが目を細めて笑う。
「ここまでだな」
「そうだね」
 さてそれでは。と、握った手に再び力を込め、密やかに誘いを申し入れる。
「デートの続きと行こうか」
「……エスコート。お願いしてもいいんだろうな?」
「任せたまえ、私のヒスイカズラ」
「はは、キショ」
「なんだと。ほら、覚えてない? さっき天井から下がっていた植物だよ」
「あ~なんかそんなんあったな」
 悪戯っぽい笑顔を浮かべた君を眺める。きっとわたしも、似たような顔をしているんだろう。
 夜の温室を二人で進む。隣に並んで、コショコショと話をしながら。

 きっとこの植物園は、私に合わせて選んでくれたんだね。夜に遊べて、吸血鬼が居ても違和感がない。
 さあ、次はどこへデートにいこうか。次は私が君を連れて行くよ。

△

――遡ること数日。積み重なった塵の横、退治人と使い魔の会話より。

「なあ、ジョン。出掛ける時の服って、こんなんでいいと思うか?」
「ヌン、ヌッヌヌイ!」
「そうか? ……植物園とか、どうかなって思ってるんだ。ほらここ。夜でもやってるらしくてさ」
「ヌイヌヌヌヌン」
「よし、じゃあここにすっかな。ありがとな、ジョン」
「ヌン!」
 ご主人様の幸福のためならば。このマジロ、どんな協力だって惜しまないのである!
 しかし。
「……ドラルク、どう思うかな」
 いつも自信満々なこの退治人が、珍しく不安そうに瞳を揺らすこの姿。暫くはジョンにだけ独占させて貰おうかな。きっとドラルクに知られたら、ロナルドは照れて怒るだろうから。
 ずっとずっと年下のこの男を、ジョンは存外気に入っているのだ。
041
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 22/08/2026
読切ドラロナ 植物園に行く話。甘酸っぱい二人 1/2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「君は花言葉を知らない」、「まくらめ」と記載されています。
画像情報:generated by 新書ページメーカー / Image by ぱんじ / フォント:源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

「ハーッハッハ! 我は吸血鬼植物名鑑! 展示植物について聞いて下さればなんでもお答えいたしますぞ!」
「おお」
「おおじゃないが」
「では御用がある際はお呼びください、私は中央受付に居ますので」
 名乗っただけである。
 それじゃっ! と歩き去ったギリースーツの吸血鬼。手を振り見送るロナルド。なんともシュールな光景に、ドラルクは既に疲れていた。
 夜の植物園は酷く静かだ――と、思いきや、どうやら夏季限定で深夜まで一般公開されているらしい。園内には若い女性集団からカップル、親子連れまで、多くの人で賑わっていた。日中に訪れることの出来ない吸血鬼達もこれ幸いと訪園しているらしく、同胞の気配も多い。
「それで、ロナルド君。ここからどうするの」
「……こっちだ」
 ロナルドがスタスタと歩き始めたので、普段通り後ろに続く。さて、今宵の獲物は何なのだろうか。

 遡ること数時間前。ロナルドから入った『出かけるから準備しておけ』というメールに、ドラルクはまた退治に連れ出されるのだろうなと悟った。時刻は既に夜半近く。ジョンと共に「今日は夜明けまでに帰れるといいね」と祈っているうち、錠前のゴン、ゴンという固い音が響いた。
「今空けるよ……あれ、今日はいつもの恰好じゃないんだな」
「おう」
 端的に返したロナルドをまじまじと見つめる。シンプルな白のトップスに暗いブラウンのボトムス。珍しい、どころではない。思えば退治人衣装以外の彼を初めて見たような。週刊バンパイアハンター増刊号の退治人ロナルドグラビア特集では、Tシャツを着たりはたまた礼服を着たり、あとはなぜか野球拳シャツを着て拳を握る写真などが載っていたので、厳密に言えば初めてというわけではないが。
「どうだ? この服」
「うん、いいんじゃないか。よく似合っているよ」
 というか彼に似合わない服など存在するのだろうか、なんでも似合う気がする。ロナルドは「ならいい」と頷くと、ようやく本題を口にした。
「出かけるぞ、ドラルク」
「はいはい、今日はどこに退治に行くの?」
「……植物園。こっから車で一時間くらいの場所」
「植物園ねえ……あれ、ジョン?」
 ドラルクの腕の中、大人しく収まっていたジョンが徐に立ち上がり、ぴょんと絨毯へ飛び降りた。首を傾げたドラルクへとヌーヌー喋りかける。
「ヌヌヌヌヌヌ、ヌンヌヌヌヌン」
「ええ、お留守番するって、珍しいじゃないか。一体どうしたんだい?」
「そうだぜ、ジョン。一緒に行かないか?」
「ヌヌ」
 二人してしゃがみ込みジョンへと視線を合わせるが、今夜のマジロは頑なである。だめ、今日はポップコーンを食べて待ってる、と首を振ると、やがてロナルドへとつぶらな瞳を向けた。それから眉間にぎゅっと皺を寄せ、拳をぎゅぎゅっと丸め。
「ヌヌヌヌヌン、ヌー!」
「……分かったぜ。いくぞ、ドラルク!」
「ええっ、ジョン、ゴーってなに!? というかポップコーンって何? 私、買った覚えも作った覚えもないんだが」
「俺が買ってきて毎回渡してる。ほらジョン、新作だぜ。コンビニ限定バター増量250パーセントバージョン。たらこバター味もある」
「ヌーイ!」
「いままでも私の知らないところで食べていたってことか!? ああっジョン! せめて一袋にしておきなさい!」
 ロナルドは突然の一人参戦に騒ぐドラルクをレンタカーへと連れ去り、エンジンを起動した。窓の外、お見送りに馳せ参じたマジロが告げる。
「ヌヌヌヌヌヌ」
 ポップコーンは低カロリーだヌン――――。そう手を振るジョンの姿は既に遠い。きっとこの声も届かないだろう。なあ、ジョン、なんでも食べすぎると太るものだよ。 

 ――そう、一対一で彼と過ごすことに戸惑ったのだ。
 一ヶ月ほど前、吸血鬼の催眠にやられたロナルドと、なし崩しに身体を繋いだ。全てが終わった後、二人荒く呼吸を繰り返したベッドの上で、ドラルクは。
 呆然とした様子で胸郭を上下させるロナルドを見た。碧眼を潤ませ、ただドラルクを見上げ、ふるり、とまつ毛を震わせた彼を。
 どんな傷を負おうと呻き声一つ漏らさない癖に、キス一つで力なくドラルクに縋った、ロナルドを。
 水分を湛えた瞳から、やがてぽろりと一滴の滴が落ちた。人差し指でそれを拭った時、口を衝いて出た言葉。
「また君と、キスがしたいのだけれど。君はどう?」
 ロナルドはドラルクを向いて、ゆっくりと瞬くと、これまたゆっくりと問うた。ともすれば、幼気に。
「……キス?」
「うん」
「……つきあうって、ことか?」
「君さえ良ければ。……好きだよ、ロナルドくん」
 告げられた言葉をゆっくりゆっくりと咀嚼したロナルドは、ドラルクがソワソワし始めた頃、ようやく答えた。
「おれも、おまえ、すきだぜ」
 はは、と笑うロナルドに、もう一回戦決めてやろうかと思ったが貧弱な己が持つ筈もなく。それから二人眠りに落ちて、目が覚めた頃にはロナルドはもう城を出ていた。
 それから数日後、再びこの城を訪れたロナルドはすっかりといつもの様子で。
 言及しようにも、関係性を否定されてしまったら、と思うとどうしても言葉にすることができない。
 それからずっと変わらない、二人の距離感。私は、君と関係を深めたいんだけれど。君は。

 兎に角、ロナルドの言う通り一時間程度で着いたこの植物園。夜も深いというのに大勢のはしゃぎ声が絶えないここに、本当に敵性吸血鬼が居るというのか。もしくは下等吸血鬼の退治だったり? 首を傾げつつロナルドに付き従っていると、不意に目の前の背中が立ち止まり額がぶつかる。
「うわっ、ごめんロナルド君」
「おいこれすごくねえか? でっけえ葉っぱ」
「ああ、本当だねえ。バナナの葉っぱだって」
「俺よりデカいな」
 いつの間にか温室に入っていたらしい。周囲の景色はガラス張りに変わっていて、月光が緑色や茶色の葉っぱに光のヴェールをかけている。植物に合わせて設定された気温はほんのり暖かく、湿気った土の香りと生の植物の香りが混ざり合う。
「おい、あっちにもデカい木あるぜ。天井までぶつかっちまいそうだな」
「流石に大きいな。あ、実が生っているよ、ココナツだ」
「あれが落ちてきたらお前死にそうだな」
1156
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 18/08/2026
2/2
親指を当てた。指紋認証をし、解錠する。結局玄関扉をくぐるまで口論したままになってしまった。
「君が出なくたって、にく美くんも、退治人諸君もいた。私だって、そりゃあ頼らないが、全く戦えない訳ではない。だから私のことを信じて後方待機していてくれればよかったんだ。……分かるか。今回だけじゃない、君は時折、突飛な行動をする。それが心配なのだと言っている」
 家に入ったことで少し落ち着いたのだろうか。はあ、とため息を吐きながらドラルクが頭を掻いた。革靴を脱ぎ捨て、自宅へと入っていく。
 なんだか悔しくて悲しくて、そして腹立たしくてぎゅうっと唇を噛む。
 ロナルドがドラルクを心配したことは本当で、助けたいと思ったのは純粋な気持ちだったのに。ドラルクのことは信頼している、だからそんな、信じてないみたいな言い方しないでほしい。
 ぐるぐると胸中に言いたいこと、言えないこと、言語化出来ない感情が渦巻く。
 ――今日はオムライス作ってくれるって、約束してたのに。家出る時は二人ニコニコしてたのに、なんでこんなふうになっちゃったんだろ。
 ドラルクに続いて、家へと入る。どうして苛立っている時って胸の奥が重くなって、喉がイガイガするんだろう。ロナルドの気持ちを分かってほしい。……でも、それ以上に仲直りしたかった。険悪な雰囲気のまま過ごすのなんて、嫌。
「どうか分かってくれよ、君に傷ついてほしくないんだ。……なあ、現場ではなるべく私の命令を聞き入れてはくれないか」
 手洗い、うがいと済ませダイニングへと戻ったドラルクは、少し気まずそうにしながらも先ほどよりは随分と柔い声で言葉を続けた。黄金の瞳はロナルドの足元を見つめている。目が合わなくて悲しい、いつもドラルクはロナルドの顔を見て話してくれるのに。
 ドラルクの言うことが正しいのだろう、分かっている。それに、ただ怒っているわけではない、ロナルドを心配してのこと。謝るべきだ、でも、謝りたくない。だって、間違ったことをしたとは思っていない。それでも、仲直りはしたくて。どうしよう、どうすれば。――そうだ、前にへんなが言っていた。
 仲直りの必勝法。
「ドラルク」
「……ロナルドく――――何ッ!?」
 ぱよんっ。
 シャツをぐいっと開き、胸――おっぱいを晒す。
 突如まろびでた魅惑の膨らみ。如何なる場面でも冷静沈着であると評価の高いダンピールの男は目を見開き、数歩後退した。

 ドラルク曰く、たわわな実り、尊き果実。ふわふわで揉み甲斐があるのだと以前酔っぱらった勢いで話していたのを覚えている。両手を埋めても尚指先が余るのが良いらしい。

「あっえっな、ロナ、ウッ!」
 すかさずドラルクの頭を引き寄せ己のおっぱいに埋めた。尖った鼻が胸骨に当たる、ふわふわと漂う黒髪がちょっとくすぐったい。
「はなっ、離さんか、話を逸らす気か!? 無駄だぞ、そもそもにして君は、ンブ」
 ぎゅっ。
「ちょ、はな、離して、話しているとちゅ、ンンン」
 優しく、しかし力強く。ドラルクの呼吸を止めない程度に、ぎゅぎゅ~。
「ちょ………」
 ぎゅっ!
「……」
 やがて完全に沈黙したドラルクに、ロナルドは囁いた。
「ドラ公、おっぱい揉む?」
「…………ウン」

 男はおっぱいに弱いですからね! 男女のどんな喧嘩も、たわわな乳房が優勝ですよ! パオーン! 

 吸対の飲み会に参加した時、へんなが言っていた言葉。酒など飲んでも大して美味しくないけれど、居酒屋ご飯を食べながらみんなの話を聞いているのは楽しい。これまた酔っぱらったへんなの言葉に首を傾げつつ「ニューリン・モンローが彼氏(役)を胸で黙らせようとしたのは最高でした!」と鼻息荒く話していたのを思い出す。ロナルドのおっぱいでも大丈夫なのか一抹の不安もあったものの、どうやら十分だったらしい。

 胸に埋まったままのドラルクが両手を上げ、胸に当て、むに、むにと揉む。骨ばった関節が乳首にあたってちょっとそわつく。むにむにむにむに。おい揉むとなったらめちゃくちゃ揉むじゃねえか。
 ふう、と呼吸を整えて、努めてゆっくりと話す。
「……ドラルク」
「……なに」
「今日オムライス食べたい」
 腕を緩めると胸元からぷは、と顔を出したドラルクが、何かを言いたげに口を開き、そして閉口した。それから、んんん、と何やら呻いた後、眉を八の字にして、それでも仕方なさそうにへらりと笑う。
「……ハンバーグも乗っけてあげるよ」
「やった」
 嬉しい。嬉しいな、胸の奥のモヤモヤも消えてぱあっと晴れたみたい。ロナルドがにへっと笑うと、ドラルクも首を傾げて笑い返した。よし、じゃあそろそろ手止めろ。ムラムラしちゃうから。
 ふと、以前「君の胸が私の手を誘っているのだよ、私は招きの声に乗っているにすぎない」と神妙に語っていたのが脳裏に浮かんだ。未だに意味がわからん、どういうことだったんだろう。
「よし、じゃあ手を洗っておいで、ロナルド君」
「おう、わかった!」
 洗ってくるから手離せ。


 ――これからは気を付けよう、なるべくドラルクの言う通りに。でも、今日の行動を謝りたくはない。だってやっぱり怪我してほしくなかったから。きっとこれからも、ドラルクに危機が迫っている時、命令を破る時は来る。……けど、今回は、ドラルクに悪いことをしたとは思う。
 ドラルクだって、先ほどは勢いに任せて色々言ってきたけれど、ロナルドの気持ちだって分かってくれている筈。いつもそう、ロナルドが言葉に出来ない気持ちまで、分かって気遣ってくれるから。


 お互い曲げられない感情がある。言葉で分かり合えない夜だって。だから今日は、これで仲直りってことで。
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 18/08/2026
Δドラロナ 譲れないラインについて 1/2
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付記に「カウンターパンチ」、「まくらめ」と記載されています。
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以下は本文の内容です。

「大体君があそこで前に出てくる必要はなかった!」
「で、でも、それじゃドラ公怪我してたかもしれないじゃんかっ!」
「多少の恐れはあったがね、しかし君が前線に出てくる方が危険だ。ロナルド君の血に興奮した下等吸血鬼共がさらに暴れでもしていたらと思うと背筋が凍るね!」
「っお前が怪我しなかったのは結果論だろ!」
 ぴしゃりと言い放ったドラルクが足早に歩く。カツコツと響く革靴に並びながら、ロナルドも負けじと声を張り脚を運ぶ。帰路を進むこと数分、既に自宅は目前だったが、吸対を退庁してから直ぐに始まった言い争いは未だ収まりそうもなかった。

 下等吸血鬼の大量発生。ここまではいつもの話、問題は背後に高等吸血鬼が潜んでいたことだ。町に下等吸血鬼を放ち混乱に陥れている最中、密かに人を攫い吸血事件を引き起こそうとしていた。
 大量発生した吸血サワガニ。一匹一匹の脅威はそうでもない。しかし、あまりにもの大群に退治人だけでは賄いきれず、吸対に声が掛かったことが結果として幸いした。現着したドラルクが下等吸血鬼からほんの僅かに香った別の吸血鬼の気配を察知し、違和感を抱いたのだ。
「ロナルド君、ちょっと一匹捕まえて来てくれないか」
「あ? いいぜ」
 ひょいと摘まみ上げた個体をドラルクの元へと運ぶ。ロナルドには生臭い匂いしか感じられなかったが、ドラルクには違うらしい。クン、と鼻を動かしたドラルクは眉間に皺をよせ、血液錠剤を含んで町の気配を探り、そして頷いた。
「……やはりな。諸君、ただの大量発生ではないようだ。大将を叩く必要がある」
 現場に出ていたダンピールは退治に精一杯で、微かに香る程度の弱い気配を探知する余裕はない。ドラルクだからこそ察知できた危機だった。
 サワガニの気配から黒幕の気配に辿り着いたドラルクは、急ぎロナルドに退治及び拘束を指示。インカムから場所を伝えつつ現場本部にて全体指揮に当たっていた。
 命令を受けたロナルドは、すぐさま飛び出した。数回の跳躍にて、左程苦労もなく吸血鬼の潜む暗渠に辿り着く。だが、狭い場所で必死の抵抗をされては厄介だ。これ以上、施設やら物やらをぶっ壊すわけにはいかない。前回ビルに風穴を開けた際こっぴどくドラルクに叱られたのを思い出し、身震いする。
 ざわめく黒い影、ロナルドと程近いほどの身長の男。吸血鬼が、こちらに気付き走り寄る。
 見つけた、と呟くと、インカムから声が響いた。
『そこにサワガニはいるか?』
「……いないけど、なんで?」
『高等吸血鬼の支配下にあるからか、このサワガニは血液に対し反応する傾向があるようだ。君の血の匂いを嗅いだが最後、興奮状態に陥る可能性がある。出来るだけ怪我をしてくれるなよ』
「……って、言ってもなあ」
 グ、グ、グと指先に力を込める。
 既にロナルドは吸血鬼の牙を受け止めた後だった、コンクリの壁を守るために。
 ぽた、ぽた、と手のひらから落ちる新鮮血。吸血鬼が右手を巨大な牙へと変形させ、壁ごとロナルドを切断しようとしたものだから咄嗟に鋭利な先端を握ってしまった。
 息を切らした吸血鬼はけろっとした様子のロナルドに一瞬怯んだ。だが、己を奮い立たせるように「くそおお!」と声を上げ、反対側の腕にも牙を生やし再度振るった。
 ロナルドに向かって放たれた攻撃。うん、これなら大丈夫。
 牙が辿り着く前に吸血鬼の背中を引き寄せ、腹部を蹴り上げる。ふぐっと掠れた呻き声が零れ、メキ、と鈍い音がした。膝から伝わる柔らかな腹部の感触がちょっと気持ち悪い。
 そのまま失神し、倒れこんだ吸血鬼を抱き留め、床に転がし拘束にかかる。やっと吸血鬼捕獲用の紐の使い方を覚えたのだ、これくらい楽勝! ふふん、と少し得意になりながらぎゅっと結ぶ。けれど、あれ? よくわからなくなってしまって「ええっとお」なんて言いながらとりあえずぐるんぐるんに巻き、最後はちょうちょ結びに。うーん、これでいいんだっけ。まあ強めに巻いたから大丈夫だろう。
 こつ、こつと人差し指でインカムを叩く。
『はいこちらドラルク。ロナルド君、終わったか?』
「捕まえたぜ」
『やはりか。サワガニの勢いが急に落ちたからそうだろうと思って。ご苦労だったな』
「今からそっちに戻る。ちょっと血出ちゃったけど、もう塞がったぜ」
『そうか。……ふむ、しかし血臭が残る以上、前線に出るのはちょっとな。私と一緒に本部で待機していてもらおうか』
 了承の返事をし、吸血鬼を背負って地上に出る。時を待たずして拠点へと戻ったが、しかしドラルクが居ない。すっかり伸びた吸血鬼を他の署員へ引き渡し、首を傾げ尋ねる。
「ドラ公どこ行ったんだ?」
「先ほど前線に出ました、どうやら逃げ遅れの一般市民が居たようで。吸血鬼の導線をみながら自分が誘導した方が早いからと」
「ふーん」
 テントから出て下方を眺める。発生場所から少し高台に設置された現場本部からは、全体の状況が良く見えた。目の上に手をかざし、ぐうっと目を細める。あれは半田、こっちはヒナイチ。あの白くて細いのがドラルクか。傍にはにく美を付き従え、サワガニの隙間を縫うように進んでいる。そんで……なるほど、ランドセルを背負った女の子。あの子か、逃げ遅れは。
 こちらで待機していろと言われたし、そうしていようかと思った瞬間。突如サワガニが群れとなってドラルク――正確には少女へと向かうのが見えた。己の危機を悟り、一番確実な獲物に狙いを定めたのだろうか。退治人連中が走り出し、にく美が刀を構えたその時、既にロナルドは跳躍し、サワガニの群れへと一撃を加えていた。
 ズガンっという重い音と共に、地面にクレーターが生まれる。中央から放射状に一メートル程度広がったそれにあちゃーと思うも、もう遅い。
「ロナっ……!」
「ドラ公、大丈夫かっ!」
 振り返り、三人の無事を確認しほっと息を吐く。サワガニも最後の攻勢を削がれたためか勢いを失い、それから程なくして全て退治された。

 だからまあ、結果的には大事には至っていない。いや地面は割れたけど、それはいつものことだ。ではなぜここまでドラルクが怒っているのか。
「もしサワガニが興奮してしまったとしたら、そしたら奴らが向かうのは君だ! 数百、いや、数千ものカニに一斉に襲われでもしてみろ、流石の君でも溜まったものではないぞ!」
「俺ならすぐに治るから問題ない!」
「私が嫌なんだ! サワガニの捕食はえぐいぞ、そりゃあもうね! カスみたいな非捕食体験を君にさせたい訳がないだろう!」
 大体、ロナルド君が怪我をしたのだって気に食わないのに! ドラルクはそう声を荒げながらドアノブに
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 14/08/2026
2/2
「どらちゃんだ」
「……ヘイ、ドラちゃん。こっ…………こいびとと、ちゅーする、方法は?」
 ロナルドがじとっとドラルクへと視線を向ける。ははっと力のない笑いが零れ、急速に身体が再生した。なんでって、この子を抱きしめる腕が必要だから。
 なに君、そんなことであんなに何度も相談していたの。AIは君になんて返したの? まあそんなことはどうでもいいや。一番素敵な方法を、この私が教えてやろう。
「そんなの簡単さ、君がほんのちょこっと顔を傾けて、目を瞑ってくれればそれで」
 得意げに人差し指を立てて説明した私を、ロナルドが笑う。
「顔あかいぞ、砂おじさん」
「……放っておけ」
 いいだろ、AIは顔色もなにもないんだ。私みたいな方が可愛げがあるだろうが。そもそも、いじらしいことをする君が悪い。
 コホン、と咳払いをしてロナルドを促す。
「それで?」
「あ?」
「やり方は教えたぞ。……どうするんだ?」
「え!?」
 あ、えっと、あ、う、なんて言葉にもならない鳴き声を零した後。これまた頬を真っ赤に染めたロナルドが、こちらを向いて目を瞑った。
「んっ!」
 つん、と尖らせた唇が冷静沈着な吸血鬼を誘い込む。さすが私、誘惑の方法を正しく教えられたらしい。
 誘い込まれるままに唇を寄せる。あーあ、最初のキスは君好みの夜景の綺麗な場所で決めてやろうと思っていたのに。
 でもまあ、こんな風にチューするってのも、私たちらしいか。かわいい恋人のキス待ち顔だって拝めたワケだし。

 さてAIよ、君には私よりも良い方法を提示することが出来るかな?
 一番私好みの、「私」の誘惑の仕方をさ。
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 14/08/2026
1/2 ドラロナ小話 インテリジェンス砂おじさん
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付記に「正直君ならなんでもあり」、「まくらめ」と記載されています。
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以下は本文の内容です。

「おいロナ造、足あげろ」
「んー」
 ひょいと持ち上げられた足の下にガコガコと掃除機をかける。ついで、ちらとロナルドへと視線を向け眉を顰めた。またか。
 背もたれに全体重を預けたロナルドが、すいすいと軽快にフリック入力を繰り返している。そんな姿をもう八十二回は見た、流石に多すぎるだろう。

 機械知能、人工知能システム、機械学習モデル。様々言いようはあるけれど、つまるところ、ここ最近のロナルドはすっかりとAIチャットにお熱なのである。それはもうズブズブ。恋人であるドラちゃんをおざなりにする程度には。

 なにをまた尋ねているんだか知らないが、君の隣に居るのはウィキペディアレベルの知識を(一部)持つ真祖にして無敵の吸血鬼ワルド・ドラルクであるぞ。この私に聞けば教えてやれることもたくさんあるってのに。勘違いしてくれるなよ、別に、寂しいってわけじゃないからな。断じて。
 さて何を聞いているんだ、と思って尋ねてみると「セミの種類」やら「そこらへんの草の名前」やら、挙句の果てには「土が茶色い理由聞いた。なんでかなって思って」などと言いだす始末。夏休みこども科学電話相談か。ちなみに何故土が茶色いかというと、腐葉土や鉄の酸化物が入っているからしい。ふーん、あっそ。別にそんなん私だって答えられたけどね。五分くらい調べる時間をくれたら、すぐに。

 とにかくきっかけは数日前のあの日。
「ショットが教えてくれたんだ! 今流行ってるらしいんだぜ」
 と、ドヤ顔でドラルクにAIチャットアプリを見せつけて来た時。シンヨコハマAIではない、もっと世界基準で流行っている人工知能。そんなんとっくに知っている、私がいつからインターネットにどっぷり浸かっていると思っているのか。今更知ったのかい子猿ちゃんカワイイネ~と揶揄するといつもの通り殴り殺され、それから画面をずずいと突き出される。13,589人。なにこれ。
「ほらみろよこれ! 新横浜の人口だってすぐに教えてくれるんだぜ」
「そんなん検索すればすぐに出るだろ」
「っじゃあコレだ! 空はどうして青いのか!」
「それは海の色を反射しているからだよ」
「そう太陽の光が空気にぶつかっ……え、そうなん?」
「嘘だ」
「クソ野郎!」
「ぐえーっ!」
 いや順当だろ、私の方が五歳児に適した回答だろうに。とはいえ既にAIで答えを知っていた若造には得心いかなかったらしい。フン、と唇を尖らせてそっぽを向いた男をジトリと睨みつけた。かわいい顔すんじゃないよ、ちゅーするぞ。

 そんな出来事から数日、すっかりこの若人はAI文化に夢中だ。青い瞳が視線を向けるのは無機質な電子の画面ばかり。分かっているのかな、君わたしと付き合い始めたばかりだよね。かわいい恋人を放っておいてそんなことしてていいと思っているワケ? いや別に寂しくないけど。
 そんなわけで。月光滴る甘美な今宵、ウブな恋人に自らをアピールというわけである。
「ねえロナルド君……」
「ぴゃっ!」
 すり、とスマホを持つ手に指を添わせながら耳元で囁く。私が隣に座っても画面ばっかり見つめているからだぞ、君が悪い。
「そんなにスマホばっかり見ちゃってさ。ねえ、ヘイドラルクって聞いてみなよ、答えてあげよう」
「お前嘘ばっかつくじゃん」
 うへえ、とロナルドが表情を顰め目を眇める。そうだけれど、それだってコミュニケーションの一つだろ。嘘ばっかりなわけでもないし。生身の生き物だからこその娯楽だぞ。だからほら、なんだって言ってみなって。
「でも私、AIより君好みの答えを出せると思うんだけど。試しに今日の夜食を聞いてご覧よ」
「……今日の夜食は?」
「おっと、ヘイドラちゃん、と付けてもらわないと」
「ヘイ砂野郎今日の夜食は!?」
「ブエーっ殴り殺す必要はないっ!! 今日の夜食は油淋鶏!!」
 君が昨日、TVを見ながらぼへえっと羨ましそうに眺めていたメニュー。町中華特集なんて見るんじゃないよ、あんなん大蒜だらけなんだから。大蒜なしで美味しく作ってあげられるのなんて私くらいだぞ。
 パァッと瞳を輝かせたロナルドが、パチパチと瞬きして身体を乗り出す。近い近い。
「ほ、ほんと?」
「ほんとほんと。ほら、ドラドラちゃんAIはホントの事しか言わないんだから」
 だからほら、君の本当の悩みを教えてご覧よ。そう告げると、ロナルドはング、と言葉を詰まらせ身を引いた。もう遅い、私が隣に座った時点で君の負け。

 草の名称に蝉の種類、そして土の色の意味。それらに興味を惹かれたことも事実なのだろう。しかしドラルクは知っている、最近ロナルドが何かに悩んでいるのだということを。繰り返し繰り返しAIと会話しているのを知っている。単発の質問と、連続した会話とではフリックの回数が違うのだ。君ってば家だとスマホミュートにしないものね、操作音全て聞いているよ。
 なあ、最近の君を悩ませている問題はなに。私に聞いてくれよ、そしたら一緒に悩めるのに。一緒に解決策を考えだせるのに。
 無機質な人工知能と私、どっちが好きなの。

 ロナルドは煩悶した末、やがて唐突にドラルクへと拳を向けた。音速より速いグーパンチが突如としてドラルクを襲う。
「ゥワーッ! かきっかき混ぜるなっ」
「ンンンンン」
 散った塵をぐるぐるとかき混ぜながら、ロナルドが呻く。そうしたいのはこっちだと思いながらもなんとか顔を再生させると、視界に入ったのはりんごよりも真っ赤なロナルドの顔。殺された怒りも忘れてただ見つめる。だって、美味しそう。
「……へい、すな」
1149
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 09/08/2026
最高のイベント、最高の三日間だったあ…ロナくん本当におめでとう…🎉 あまりに会場かわゆくて涙が出る…
010
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 06/08/2026
#0808狙い撃ち6お品書き #2026赤い退治人をねらい撃ち6 ドラロナ小説と本編の短いやつの再録(この前あげたばっかりのやつも含まれます🙇)と既刊展示します、よろしくお願いいたします〜!
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 05/08/2026
Twitterにあげたやつ!140字できた〜!!ちゅーせえドラロナ!!
0154
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 04/08/2026
いろんな嘘をつくんじゃないよ
051
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 03/08/2026
2/2
スも大好きだが、こうしてただ抱き合って触れ合わせるだけのキスも大好きだ。ドラルクは良く知っている。
 そのままグ、とロナルドの肩に力を込めると、彼は抵抗せずにソファへと身体を横たえた。有難く恵体の上に乗り上げ再び唇を重ね、今度は舌も重ね合わせ。暫く堪能した後にようやく身体を上げると、ロナルドはすっかりと脱力し艶然と寝そべっていた。ぽってりと腫れた唇はほころんで、真っ赤な舌が少し覗く。
 乱れた銀糸の髪は柔く落ち、美しい赤い双眸を覆い隠す。指先で払ってやると、ロナルドは潤んだ瞳から一粒の雫を零してはにかんだ。
 ぐう、と欲がせり上がる、胸が苦しい。彼を抱きたい。隅々まで愛し尽くせと脳髄が告げている。
 飢えた獣のように彼をみつめる。目が合うと、ぱちりと瞬いたロナルドがぽやりと笑った。
「なんかわかった、かも。ごはんのきもち」
「は?」
「お前、さっき言ってたろ」
 さっき、と言えば夕食の時か。確かに言った、ゆっくり食べろと、ごはんの気持ちを考えろと。どうして今? と疑問符を浮かべると、ロナルドが、す、と自身の下腹を撫でた。いつも君がおかしくなってしまう所、君の最奥。
「いや、なんかさ……。おれ、これからお前にたべられちゃうんだな……へへ」
 明け透けな言葉にごく、と喉仏が動く。――そうだ、正しく、君の隅々まで、この私が。
 ロナルドの手の上に己の手を重ね、くうっと優しく腹を押す。「ふ、ぁっ」と空気を震わす掠れた声にゾクゾクと痺れが走り、口角が上がる。これだけで気持ちよくなれるようになっちゃったね。
「ねえ、どんな気持ちなの。……ごはんの、気持ちは」
 キスもセックスも何も知らなかったのに、私に隅々まで何度も触れられて、身体を塗り替えられて、どんな気持ち?
 そんな意地の悪い質問に、ロナルドは瞳を蕩かせた。垂涎もののその表情。
「味わって、食べてほしい、かな」
「……任せたまえ」
 しっかりと味付けして、一番美味しい君を味わって見せよう。
 ありのままの君も、大好きだけれどね。
051
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 03/08/2026
Δドラロナ ショート ちょっとシモい表現あります 1/2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「フォークとスプーンはいらない」、「まくらめ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

「人の気持ちをもっと考えてくれたまえよ」
「いいじゃん、別に。俺が行った方が早かったんだから。んぶっ」
 頬に残る血痕を拭き取ると、白い布地に真っ赤な跡が一筋残る。後で重曹洗いをしなければ。
「だからといって、目の前で人間がミンチになるのを見たいわけがないだろ」
「人間て、俺吸血鬼じゃん」
「吸血鬼だろうと臓器も皮も人間と同じだろうが」
 皮一枚剥げば肉と血の塊に過ぎない、人も、吸血鬼も。違いは塵になるかどうかの話。とはいえ、ロナルドは死なないので当然塵にはならないけれど。
 いつものことだ、敵性吸血鬼との戦闘中にロナルドが酷い怪我を負った、それだけ。彼はドラルクの言うことはよく聞くが、逆にいうと現場判断をさせると途端にこうなる。独断専行、猪突猛進。なまじっか強いからこそ全てなんとかなってきているというのがまた良くない。自殺願望がさらに拍車を駆けている。この前も頭半分落としたろう、なぜまたやるんだ。死ねなかったんだからせめて違う方法を試せ、いや試すな。
「普通は血とか肉とか脳みそとか、そういう「グロい」のはあまり視界へ入れたくないものさ」
「そうなん?」
「そうだ、誰だってね」
 本当はこんな語り口で伝えたくはないが、しかし。
 行儀悪くドラルクのデスクに腰かけたロナルドは、うーん、と視線を上げて考え込むと、やがて小さく頷いた。
「そっか。んん、なら気を付ける」
 ほら、素直に聞いた。まあ、数日経ったら忘れてしまうことも多いのだけれど。 

 心配するから、と。君に傷ついて欲しくないのだといくら伝えても、彼には上手く伝わらない。天真爛漫自由奔放、可愛らしく素直な側面とは裏腹に、自分を大事にしようとしない。死なない体質がそうさせるのか、死にたい気持ちがそうさせるのか。それとも何か他の要因が理解を阻んでいるのか。
 共に過ごして暫く経ち、ようやくドラルクが学んだのは「ああいう言い方」をすること。嫌がる人がいるかも、よくない影響があるんだよ、と。そうすると、基本的に善良な吸血鬼である彼は「人に迷惑をかけたくないから」と考えを改めてくれるのだ。
 この伝え方が正しいとは思っていない、もどかしく感じることもあるけれど。

 この言い回しは他の場面でも頻発した。なにせ、彼に足りないのは自分を大事にすることだけではない。ドラルクは教師のように、毎度毎度口を酸っぱくして常識や注意を説いた。

「もっとゆっくり食べろ、肉は逃げやしないから」
「でも一か月ぶりの唐揚げだからさあ」
「はいはい、待ち遠しかったんだな」
「うん!」
 きらんと輝く可愛い笑顔につい目が眩むが、しかし負けてはならない。ちゃんとよく噛んで飲み込まないと喉を詰まらせるのかもしれないのだから。実際ロナルドは一度ドラルクの前でやらかしたことがある。急いでハイムリック法を試みたドラルクの心中を察してほしい。終わったあとけろっと「ごめんごめん」と謝るロナルドに、内心オーッとしつつも疲労困憊でなにも言えなかったのはつい二か月前の話。
「ゆっくり食べなさい。唐揚げだって米だって、そんなに慌てて飲み込まないで、ちゃんと味わってくれって思っているさ」
「そうなのか?」
「そうそう。ごはんの気持ちをよく考えるんだな」
「んー……」
 いつもの言い回しで適当に促すと、ロナルドは少し首を傾げて唐揚げをジッとみた。

 家でも職場でも、この吸血鬼が壊したものは数えきれない。当初力加減が難しくカズサのスマホを始め様々なものを破壊してきた彼だが「あまり壊すなよ」と注意してからは一応改善を試みてくれた。しかし中々上手くいかず、破壊する度いちいち半泣きになって謝ってくる彼に煩悶した結果、良く効いたのがこの言い回し。
「ほら、えんぴつの気持ちを考えて。ぎゅうっと握ったら痛がるよ」
「お皿は繊細だから優しく、だ」
 ここは幼稚園か。部署内全員からそんな視線を向けられたような気がしたが、しかしこれが一番なのである。ロナルドはハッと道具を見つめ、柔らかく触れた。それからは何に触れるにも一呼吸置くようになり、そうして次第にあまり物を壊さなくなった。未だに町はぶっ壊すけども。
 常識を、人間の町での暮らし方を、自分を大切にすることを説く。気持ちを考える、相手の、物の、建物の。そして、ごはんの。

 でも、こんな場面で彼からそんな言葉が出てくるとは思いもしなかったな。

 いつも通りの夜。違うのは、ジョンがヒナイチのところにお泊りしているということだけ。
 革張りのソファに二人並んで座り、ただ映画を流す。今夜のお供はなんらかの賞を受賞しているらしい恋愛映画。しかしロナルドには少し退屈だったようで度々指先を弄っていたし、ドラルクだって大して集中していなかった。
 映画も中盤に差し掛かった頃、すすす、とロナルドが隣に身体を寄せてきたので、ドラルクも彼の白い手に己の手を重ねる。これだけで終わる夜もあるし、終わらない夜もある。今夜は、どうだろう。
 ロナルドは頬を淡く染め、ぱち、ぱちと瞬いた。長い睫毛がぱさぱさ揺れる。先ほどドラルク直々にクリームを塗った唇は、赤く艶めく。彼はふる、と口許を震わせると、首を傾げた。
「どらこ、今日、ど、どう……?」
 先ほどの映画に出てきた遊び人の女性が、夜の誘いに使っていた言葉。勇気を持って発せられたお誘いに乗らないほど、ドラルクは情けなくはない。
 そのままロナルドを引き寄せ口付ける。「ンッ」と驚いたような小さな声が、口づけの度に艶やかに色を変えていく。ちゅ、ちゅと唇を寄せては引いて、角度を変えて何度も口付ける。隙間に漏れるのは普段の元気な様子からは考えられないほど、あえかな吐息。ロナルドは飲み込まれるようなキ
1147
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 02/08/2026
みなさまと会えて嬉し〜!最後はりさんと二人だったから喜びのギターをかき鳴らしました✌️
140
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 01/08/2026
やばい私も同じ時間でした😭 道長いですね…!😭
100
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 31/07/2026
2/2
てくれないのかな。リップクリーム、買ってみようかな。

 手を繋いでみたい。夜景を一緒に見に行きたいし、なんならもっかいちゅーしたい。でもドラルクはあれから、こしょばゆくなるような言葉で愛を囁くことはあれど、触れてくることは一度もなかった。ロナルドから触れればよいのだろうけれど、でも。
 もしかしたら、あの時のちゅーは単なる思い付きで、ドラルクは所謂プラトニックな関係というものを望んでいるのだろうか。しかし、ロナルドはあのうっすい身体に触りたい。柔らかい唇にもう一度触れたい。
 悩んで考えて、頭の中にどれだけ雲が出来たのかわからない程もやもやもやもや考えて。悩み抜いた末、一度ドラルクと離れればこの煩悩も収まるかと『ロナ戦長期出張取材の旅』を組んだ。フクマさんには「ドラルクさんは連れて行かないのですか」と尋ねられたし、すっかりついてくる気だった吸血鬼には「なぜ私を置いていく」と相当詰められたけれど。
 出発の時間をドラルクの出てこられない明るい時間にしてよかった。口ではあの男には敵わない、物理的にやりこむしかないのだ。

 それから日本中を退治に回って一か月、新横浜よりも少し剣呑な雰囲気を持つ吸血鬼たちを退治して回って。おかげですっかりネタ帳が分厚くなった。変態もいたけれど新横浜と比べ圧倒的に数が少ない、どうなっているんだあの土地は。
 だからもう、ロナ戦的には帰ってもいいのだけれど。
 改めてスマホを眺めてため息を吐く。肝心の旅の目的を達成したとはとても言えない。だってほら、メッセージの文字列をみるだけで堪らない。いますぐ帰って骨ばった手に触れて、手と手を繋げたい。もう大丈夫かな、と思って写真を送ってみたけれど全然だめらしい。どうすりゃいいんだこれ。
 あー、んー、と脳内で呟き、それからよし、と覚悟して指を動かす。
『もう俺としたくない?』
 続けて、ちゅー、と、そう打とうとして、少し戸惑う。「したくない」とか返ってきたらどうしよう、凹むかもしれない。仕方のないことだと受け入れるつもりは十分あるけれど。ていうか、ちゅーって打つの恥ずかしいな。
 むむむと唇を噛んでいると一言『なにが?』と返ってきて、そりゃそうだよなと思う。それから間を置かず電話がかかってきたので、少し悩んでから受話を押した。他に乗客が居なくて本当によかった。
「なに? 電車の中だからすぐ切るぞ」
「ああうん。それで、したくないって、なにが?」
 急いたような声音でドラルクが問う。離れてからずっと理由を付けて電話を無視してきたからだろうか。だって声なんか聞いたらRINEどころじゃなくイチコロにやられちゃうだろうからさあ。
「あのー、あれだよ、あのさ」
「なに」
「……ちゅー」
「は?」
「だから、ちゅー。……お前がしたくないなら、全然いいんだけど」
「ハア!?」
 あんまりにもな大声にスマホを耳から離す、キーンってなったぞオイ。
「ンなわけないだろ我慢してたんだよ、五歳児には刺激が強すぎるかなって思って!」
 あっさりと告げられた言葉に、ほっと胸を撫でおろす。「突然なんだってんだ」と狼狽した様子のドラルクが、何かに気付いたように問いかけてきた。
「まって、もしかして君、それで帰ってこないの? 私とキスしたくて、でも出来なくて?」
「もう切るぞ」
「待たんか! あっちょ」
 やべ。すぐにぶちっと電話を切ると、スマホは少し沈黙した後にやがて再びブブと揺れた。あ~からかわれたらどうしよう、永遠に殺し続けてしまうかもしれない。というよりもう帰れないかも、恥ずかしすぎて。
 みたくない、でもみないと何も進まない。何を言う気なんだろう、とちらりと恐る恐るスマホを覗く。
『次どこ行くの』
『君の宿泊先を教えろ』
『ちゅーしに行ってやるから』
 立て続けに入ったメッセージの羅列に呆然としてから、それからのろのろと再び手を動かした。次の目的地と、それからホテルの名前。……だってちゅー、したいし。
 すぐに『待ってろ』と連絡が入る。待ってろ、だとさ。ドラルクが新横浜からこちらに着くのは、時間帯のことも考えるときっと翌晩になるだろう。それまでに冷静になれたらいいなあ。このあっつい体温も少しは落ち着くだろうか。
 はあ~、と車窓を眺める。胸がいっぱいでお腹もいっぱいになっちゃったかも。いや嘘だ、全然食べられるな。
 残り分を咀嚼しながらじんわり考える。俺からちゅーしたら、よろこんでくれるかなあ。


 それからドラルクは、予想を裏切りその日の夜にはホテルへ来た。ドラウスに抱えられ飛んできた姿に、どんな言い方で父親に頼んだのだろう、と気にはなったけれど。二人っきりの部屋の中、ロナルドの胸に飛び込んできたドラルクがすぐにちゅーをしてくれたから。柔くて懐かしい感触が嬉しくて堪らなくて、他の事が全部すっ飛んで、なんにも言うことが出来なかった。


 ロナルドが新横浜に帰れないのは、ドラルクとキスがしたいから。単純明快至極当然。解決方法は、恋人だけが知っている。
0101
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 31/07/2026
キスするドラロナの話 1/2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「車窓から」、「まくらめ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

 ロナルドが駅弁を食べているのは、腹が空いているから。単純明快至極当然。

 いまどきの駅弁は、紐をきゅうっと引っ張って数分待つだけで、なんとホカホカに温まってくれるらしい。初めて知った最新技術にそわそわする、帰ったらみんなにも教えてやろう。なんて、したり顔を浮かべたりしちゃったりして。
 しかし、ロナルドは知らなかった。弁当をホカホカに温めると、開けた瞬間匂いがぶわっと広がるのだということを。あっという間に充満した芳ばしい焼売の香りに焦るが、自分以外に乗客は居なかったことを思い出してほっと一息をついた。
 田舎町の二両編成、先頭車両にいる車掌は運転席の中。ボックスシートは丸々ロナルドのもので、座席の真ん中には簡易的なテーブルまでついているありがたい親切設計。この路線は、季節によっては観光車両として人気らしい。
「……いただきます」
 パッケージに表示された通りきっちり六分待ってから開封した、湯気の立つ焼売弁当。誰も居ないとはいえ公共交通機関の中だ、食前の挨拶は小声で済ませる。
 いただきます、ごちそうさまは欠かしちゃいけない。兄に、そう教えてもらった。
 もぐもぐと口を動かしながら窓の外を眺める。うん、やっぱりおいしい。お気に入りの店の商品なのだから当然だ、しかも今日は動く風景付き。
 車窓の外は藍色に染まり、鬱蒼とした木々がずうっと流れ続けている。ともすれば陰鬱な気分になりそうなものだが、普段見ない光景というだけでなんとなく面白い。
 ふと思い立ってパシャっと一枚撮影してみる。ブレブレの……なんとなく、木? に見えるか見えないかという程度の風景が写真に収まった。同居人の吸血鬼に送信すると、すぐにブブブとスマホが揺れる。画面に映った『なにこれ』という返信に、フリックをすいすい動かす。
『栃木の車窓から』
『なんもみえんわ、写真下手くそ選手権一位』
『お前もなんか撮れ』
返信がないまま一分が経過。つぎの焼売に箸を伸ばしてぱくりと一口、もぐもぐ咀嚼しているうちにまた揺れる。
『シンヨコ夏の風物詩』
道端に座り込んでしょんぼりしているゼンラニウムが、ジョウロで水をかけられている。あーあ、こんな時期に外出なんかするから。生き物も川も道路も暑さに喘ぐこんな夏、お花の変態妖精が茹だらない訳がないだろう。
『俺の方がうまい。旅先感を演出できている』
『抜かせ、私の方が季節感を表現できている』
『ゼンラで季節感を表現するな』
『君こそ旅先感もクソもないだろ、鶴間川沿い全力疾走すれば同じような写真撮れるわ』
『俺が全力で走ったらこんなもんじゃねえぞ』
『君いつ帰ってくるの?』
 唐突に挟まれた質問に、澱み無く動かしていた指先が止まる。う~ん、と首を捻ってから、今度はのろのろとフリックを動かす。
『あと二、三件仕事こなしたら、帰る』
『もうロナ戦のネタは十分だろ』
 箸を動かす手も止まり、ただスマホの画面を見つめる。そのまま一分経った頃、再びブブブ。
『君の顔がみたいよ』

 酔っぱらった勢いのまま重ねた唇。あれ以来、一度も触れていない。

 ドラルクと付き合い始めて半年が経っていた。付き合う前の晩、ロナルドはたまたまお歳暮で貰ったビールで酔っぱらっていたし、ドラルクはものすごい高級なのだというブラッドボトルでほろ酔いになっていた。事務所のみんなでテレビを見ながら騒ぎ、音楽番組で流れる歌に合わせて適当に踊り、気付けばジョンは目蓋を瞑り穏やかな寝息を立てていて。
「くそすな、なんかつくれよ」
「まだはいるの? きみのいぶくろはほんとにすごいな」
 なーにつくろっかなーなんて声を弾ませながら、それでもドラルクはソファから動かずけらけらとテレビを眺めていて、ロナルドもなにもいわずにただ缶を傾けた。ぽんやり座っているだけなのに心地がよい。真隣に座るドラルクの体温が気持ちよかった。
「あ、そだ、ロナルドくんさ」
「あっそういやドラこー」
 隣を向くと、同じタイミングでこちらを向いたらしいドラルクとバチッと目が合う。普段はゴマ粒みたいでよくわからない、まっかなひとみ。何かを言おうとして名前を呼んだ筈なのに、なにも言葉が出てこない。
 なんだっけ、なんて言おうとしたんだっけ。おい、お前もなんか言おうとしてたじゃん、言えよ。なんでなんもいわねえんだ。なんでおれ、なにも言えないんだろう。
 おもむろにドラルクが目を瞑ったので、つられて目を瞑る。空気がやんわりと動いて、ふに。
「……ちゅーした?」
「ちゅーした」
「なんで?」
「……なんでだろ」
 ンフフ、と声を潜ませて笑ったドラルクがまた目を瞑るものだから。だからロナルドも目を瞑って、薄い唇に己のそれをつんと触れ合わせたのであった。それから何度もなんども触れ合って、気が付けばロナルドの上に乗り上げていたドラルクがひそひそ声で囁く。
「……わたしたち、付き合っちゃおっか」
 ふわふわで、気持ちよくて、ドラルクの骨ばった身体が心地よくて。だからロナルドは「うん」なんて夢見心地で頷いた。そうしたらまた唇が降って来たから、嬉しいな、なんて思って。
 次の日、夢かと思っていたら夕方に起きてきた恋人が「夢じゃないぞ」なんて悪戯っぽく笑ったから、ロナルドはつい拳を振るった。即座に復活したドラルクは盛大に眉を顰めロナルドへと人差し指を突き立て大口を開け、それから少し固まった後、くしゃりと笑った。
「顔、真っ赤」
 言われんでもわかっとるわ。こちとらずっと、顔から火が出そうなんだよ。

 そんなわけで晴れて恋人同士となった二人は、それからも大して変わらない日々を過ごした。いままでとおんなじ、ただ関係性が一つ増えただけ。それが問題なのである。そう、恋人同士の触れ合いが出来ていない。
 ロナルドは一時間で別れた彼女、それからカナブンさん以来の恋人の存在に大層浮かれた。相変わらずクソウザい砂おじさんだし緑の悪魔でいじってくるカスではあるものの、時折見せる素直な笑顔や不意にロナルドへ向けられる優しい瞳にときめいたし、なんなら視界が輝いた。やめろやめろ脳みそ、ガリガリおじさんを星のエフェクトで飾るな。
 そんなモヤモヤしているロナルドを他所に、なにも知らない恋人は愛しい使い魔と戯れている。ジョンの腹を撫でて顎をこしょこしょとくすぐって、それからちゅっと唇を落としたり。無意識に自分の唇にも手をやると、少し毛羽立つ感触に触れた。だからちゅーし
11811
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 27/07/2026
おわ〜…よかった、なにもかもが… 映像になるとこんなに、こんなになるもんですか?ああ〜…余韻
110
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 21/07/2026
2/2 ロは結構ドちゃんに首っ丈。
092
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 21/07/2026
ドラロナ ショート こちらの続き 1/2
1188
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 15/07/2026
ヨシャ
030
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 09/07/2026
2/2 1.5h
へと擦った。途端に表情が見えなくなって、ドラルクは胸の内を静かに軋ませた。
「わたし、夏の夜空が一番大好きなんです。だから、一緒に眺めたくて」
 膝の上に力なく置かれたロナルドの手に自身のそれを重ね、手の甲を撫でる。骨ばったその手は普段よりもずっと熱い。
「秋には紅葉が綺麗ですから、一緒に落ち葉で焼き芋をしたいです」
「うん」
「冬は美味しい紅茶を飲んで、一緒に温まりましょうね」
 ロナルドの手を解いて、一本一本繋ぎ合わせた。ロナルドの熱がドラルクの手にじわじわと移って、堪らないような気持ちが溢れる。
「そして春には、花が咲き始めるんですのよ」
「……そうだね」
「そうしたら、わたしとあなたが出会ってから一年になるんです」
 あなたと全部の季節を埋めたかったのに。
 ぽつり、と落ちたロナルドの言葉は、いつもよりずっと弱かった。大きな体を縮こませて、ドラルクにほんの僅かに体重を預けた彼。ああ本当に、君と居ると初めてのことばかり。
「君となら、春夏秋冬の全てを好きになれそうだよ」
「そう、なら嬉しいのですが……。そのための第一歩だったのに、私が弱いばかりに……免疫細胞って腹筋の回数を増やしたら強くなりますか」
「それはわからないけれど、ほら。顔を上げて、お嬢様」
 くい、と顎を引き上げると、ロナルドは力なく従った。その拍子にぽろり、と零れ落ちた涙を掬っておやおやと笑う。さっきまでの楽しそうな君はどこにいってしまったんだ、情緒不安定だね。早く風邪を治していつものロナルドに戻ってもらわないと。
 そのまま額をすり合わせ、上唇だけ触れさせたまま、密やかに囁いた。

「星空の下でキス、というのもロマンチックでいいじゃないか。素敵な夏の思い出になりそうだよ」
041
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 09/07/2026
反転ドラロナ ショート お家デートの話 1/2
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「真夏の君に浮かれる」、「まくらめ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

「グランピング……星空の下のステーキ……食後のアイス……寝る前のミルク…」
「食べ物ばかりだな」
 すっかりぬるくなった冷えピタを剥がし、新しいものを張り付けると「冷たいですわぁ」とほやほやした声が落ちる。発熱している人間が一人いると、どうして部屋全体が温く感じるのだろう。いままで抱いたことのない疑問にドラルクは思考を飛ばした。

 春は虫が増えるし夏は暑い。秋は落ち葉の掃除が面倒臭いし、冬は寒くて嫌いだ。いつの頃からかドラルクはずっとそう考えていて、だからこそ城内で過ごす時間が好きだった。山中は少し湿気るが四季を通して快適なことが多い。
 だからこそロナルドの「夏を楽しみましょう!」というプランには賛同出来なかった。しかし笑顔のロナルドにはいくらでも賛同してやりたいので、ドラルクは二つ返事で誘いに乗った。

 そして来るべき明日、ロナルドとドラルク、そしてジョンのみっぴきでグランピング施設に行く予定となっていたのだ。言い出したのはロナルドで、日付を決めて旅のしおりまで作ったのもロナルドだし、当日風邪でダウンしたのもロナルドだった。準備万端だ、と浮かれたマジロを撫でていると突然『無念でございます』と武士のようなメッセージが届いたものだから、ドラルクは割と驚いた。
 支払いも送迎もロナルドが行う予定だったから、ドラルクにはなんの損もない。元から予定だってなかったしグランピングにだって然したる興味はなかった、ただロナルドが行きたいというならば否やはないというだけ。むしろ風邪を引いたというロナルドが気にかかり、ジョンに留守番を頼んでロナルドの自宅へ失礼したのが一時間前。玄関で少しロナルドと攻防戦を繰り広げ、それから観念したロナルドに迎え入れられたので、ドラルクは現在思う存分「恋人の看病」という一世一代の大仕事に勤しんでいるところである。

「う~すみません……予定を潰したうえにお世話まで……」
「気にするな、元々私は君と出かけるのが楽しみだっただけでグランピングは二の次だ。君だってわかっているだろう」
「そうですね、おっしゃってましたものね、わかってはおりますけれど……」
 新横浜では夏風邪が大ブームなのだという。ロナルドも退治中にマスクをつけたり手洗いうがいを徹底したりとそれなりに対策を取っていたようなのだが、見事惨敗してしまったらしい。
「でも、ドラルクさんとジョンさんと星をみたかったのに……」
「星はいつだって見られるだろう?」
「違います、今年の夏が良かったんです……。あ、そうだ」
「お嬢様、寝ていないと」 
「ちょっとだけですから」
 静止の声も聞かずベッドからふらふらと起き上がったロナルドは収納を開けると、棚を開けていくつかの荷物を床に置いた。花瓶にルービックキューブ、小物入れにコスプレのような衣装。君、白鳥の湖の衣服なんか何時着たんだと追求する前に「ありましたわ」とロナルドが何やら箱を掲げた。二十センチ四方程度のそれは。
「……プラネタリウム?」
「ぴんぽーん、ですわ」
 にへ、と潤んだ瞳と赤みの差した頬で笑ったロナルドが、両手でドラルクへと箱を差し出す。表面には可愛らしい文字で「寝室に宇宙を」と書かれていた。

 それからロナルドは「いまから見ましょう!」と言ってやけに楽しそうに箱を開封しだした。以前、商店街のくじ引きで当たったのだという。熱のせいで一周回ってテンションが高くなっているらしい、普段であれば見ることのない素直な姿に少しときめきつつ、心配しつつ。もうこうなればロナルドの気がすむまで付き合って、それからすぐに寝かしつけるのがいいだろうと判断し、ドラルクは準備を手伝った。とはいえ、開封して電源を繋げるだけだけれど。
「一緒に座って見ましょう!」
「はいはい、ホラお嬢様、しっかりと布団をかけるんだよ。冷えたらいけない」
「んふふ、ドラルクさんも一緒ですわ」
「全く……」
 ソファベッドを背もたれに、二人並んで座る。背中からすっぽりと包まるように厚手のブランケットでロナルドと自分を包み、ローテーブルの上に置いたプラネタリウムの電源を付けた。外は既に夜も更けていて、その上遮光カーテンを閉めて電気も消せば部屋は真っ暗闇に包まれる。カチ、とボタンを押してから、それから少し待つと天井から部屋の隅々にかけて作り物の星空が広がった。
「わあ、すごいですわね」
「中々しっかりしているな」
 多少はチープだがそれでもしっかりと星空が再現されていて、思わず関心してしまう。現在は北半球の星が映っているそうで、少しぼやけた惑星や星々が星座を形作っていた。とはいえそれだけである。ドラルクにとって新たな感動はない。さてロナルドは満足しただろうか、と隣をみると、光に淡く照らされたロナルドが瞳を輝かせて天井を見上げていた。
「ドラルクさん、あの星とあの星を繋げるとなんの星座になるかわかりますか?」
「おや、お嬢様は星座に詳しいのかね? 一体何になるんだい」
「お饅頭座です、今作りました」
「……お腹が減っているのか?」
「減ってはいないんですけど、明日の食事を楽しみにしていましたから食べ物のことばかり考えてしまいますわ」
 ふふ、と楽しそうに笑ったロナルドは、それから首を傾けドラルクへとほんの僅かに体重を預けた。たったそれだけのことで、ドラルクの鼓動は忙しなくなる。ロナルドと出会ってから初めての経験ばかりだ。恋人の看病も、胸の逸りも。
「ドラルクさんに、星空を見せてあげたかったんですの。ご案内しようと思っていたところはとても評判が良かったんです」
「そうかい、ありがとう。この星空も綺麗だよ。大丈夫、来年こそ行こうじゃないか」
 旅行のためのたった二連休。ロナルドがその休みを捻出するために随分と気を揉んでいたのを知っている。最近の新横浜は高等吸血鬼の居住数が右肩上がりだそうで、その影響か下等吸血鬼の出現が増えたのだという。今年の夏はあんまり休めなさそうです、と少し眉根を寄せていたロナルドが、それでも旅行に拘っていたようだから少し珍しく思えていたのだ。
 きっと今年の旅行はもう難しいだろう。冬にでもどこか連れていってやろうか、そう考えていると「今年が良かったんです」とロナルドが零した。密やかな、小さな声で。
「今年の夏は、あなたと初めて過ごす夏でしたから。だから、綺麗な星座を見に行きたかったんですわ」
「……お嬢様」
「あなたと過ごす初めての一年ですから、うんと思い出に残るものにしたかったんですの。……なんて、勝手に考えていたんです」
 はにかんだロナルドが、ぐい、と額をドラルクの肩
1104
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 08/07/2026
ドラロナ ショート 本編から十年後くらいのイメージ 1/1
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「お前アルバム」、「まくらめ」と記載されています。
以下は本文の内容です。

 いつの頃からか、ロナルドは写真撮影に目覚めていた。それもただのカメラではない、チェキだ。

 どうやら普通のカメラは露出がなんだ、倍率だなんだと難しくて触れる気がしないらしい。値段が高すぎるのもネックなのだという。むしろそういうところにハマってこそのカメラなのではないか、と思うが。いつもながら変に繊細な男である。

 ロナルドは事あるごとに写真を撮った。それも、ドラルクを。
 出張先で、遊びに出かけた先で、町の中で、家の隅で。頻度は高くはない、たまに鳴るパシャ、ジーという音で撮られたことに気付くことが大半である。人に黙って写真を撮るのはマナー違反なのではないかと咎めると、お前にマナーを説かれるとかウケるな、と軽く流されて終わってしまった。なんだこの野郎、随分生意気に育ちおって。だが、我慢ばかりの男をドラルク限定でワガママボーイに育てたのは何を隠そう自分なので、それ以上の言及は留めておくこととした。

 それから数年経ち、十年経ち、撮影された写真がいくつかのアルバムに収められた頃。
 炬燵に収まったロナルドが写真を見返していたので、ドラルクはなんとなく向かいに座った。どうせ欲しているだろうとココアを注いだコップを差し出すと、ロナルドは当然のようにン、と言って受け取った。それからふうふうと息を吹きかけて冷ましながら、ゆっくりと一口飲む。ごくん、という音と一緒に上下に動いた喉仏を自然と見つめてしまい、ついぐっときた。
 そんな青臭い考えを首を振って捨て去り、アルバムを眺める。当たり前だがドラルクは写真には写らない、それも意識していない時はなおさら。ロナルドがいくらチェキを撮ろうが、そこにドラルクはいないのだった。
「……君さあ、何を撮ったのか覚えてるの?」
「ん? あぁ」
 ふと疑問に思って言葉に出すと、アルバムを見つめていたロナルドが視線を上げた。唇の上にちょっぴりココアが付いていたので、親指で擦り取って自身の口に運ぶ。甘い。
 昔はそんなこと一つでドラルクを殴り殺すくらい照れてみせたのに、今では慣れ切ったロナルドはまたン、と小さい声を挙げるだけで、ただ成すがまま。
「だってこれなんか、ただのキッチンじゃないか」
 一枚の写真を指さす。何の変哲もない自宅のキッチンだ。宙にフライパンが浮いている、なにせそれを握るドラルクが写っていないので。
「……これは、お前が豚の角煮を作った時のやつ。俺が食べたいっていったら、次の日すぐに豚バラのブロック買って来てくれたろ」
「ほう、よく覚えているな。じゃあこれは?」
「これは駅前で北海道フェアがやってた時のやつ。限定牛乳を手に入れるんだって、お前がへたくそスキップしてたとき」
「じゃあこれ」
「退治先でネモフィラが咲いてたから、せっかくだからって撮った時。お前ってネモフィラよりは顔色明るいんだなって思った」
「やかましいわ。……じゃあこれ」
「これはお前が洗濯物を畳んでいるところ。今日は一気にシーツを干したって、満足げにしてたから」
 だから撮った。そう続けたロナルドについ呆れる。もしかして全部覚えてるの? なんて聞いたら、ロナルドはいっそあどけない様子で「ああ」と頷いた。
「覚えてるよ、全部。お前が忘れても俺は全部覚えてる」

 この写真のお前は、ちょっとこっちを振り向いて笑ってた。いま私のこと撮ろうとしてたろ、分かってるぞって。
 このお前は月を見上げてたな、良い夜だ、なんてジョンにかっこつけてた。
 そっちの写真のお前は時間をかけて仕上げた料理が上手く出来て、ご満悦そうにしてたな。

 愛おしそうな瞳で、手つきで、ロナルドが写真をなぞる。
「覚えてるよ、いつまでだって」
 知らず、ぎゅうと眉を顰めた。まただ、とドラルクは思う。ロナルドはたまにドラルクを喪失する前提で話す時がある。いつ自分が飽きられてもおかしくないとばかりに考えているのだ。既に言葉で、身体で愛を交わしているというのに。ドラルクが唇を拭う人間などロナルドしかいないというのに。
 別に悲観してるわけではないのだろう。ただ、事実としてとらえているだけで。昔よりずっとわがままに育った五歳児は、それでも根っこのどこかで自分を肯定できないままでいる。
 写真を撮る趣味だって彼が楽しいのならばと思って黙認してきた。事実楽しいのだろう、だが、ドラルクが考えていたよりもよっぽど明後日の方向に楽しんでいたらしい。
「……私も、君の写真を撮ろうかなあ」
「あ?」
 訝し気に顔を上げたロナルドが、少し上目にドラルクを伺う。にいっと笑い返して、それからアルバムを指さした。
「いいじゃないか。君は私を撮って、私は君を撮ろう。それで暫く経ったら、お互いに写真を見せ合おうじゃないか」
「なんで?」
「思い出は多ければ多い程いいからさ」
「なんだそりゃ」
 そうして写真を連ねて行って、いつか君が芯から愛されることに慣れたら。喪失の二文字を忘却したならば。
 そしたら積み重ねたアルバムを盾に言ってやろう。私も君の思い出を隅々まで語れるぞ、と。
 これからもアルバムを二人で作っていこう、と。

 伸ばし始めたドラルクの髪が、いつか背中まで届いた頃までには、きっと。
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 04/07/2026
ミニロ君、非オタの友達からあまりの可愛さにセラムンのキャラだと思われていた。可愛いからね…
030
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 24/06/2026
ドラロナ 引きとめる話 10P
0197
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 16/06/2026
本日の全てが嬉しすぎてロくんに飛んでいただいた。綺麗な腰だね、ロくん…
040
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 13/06/2026
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 魅力的な言葉につい頷きそうになるが、さて、距離的にはどうなのだろうか。もう十分取ったと言ってもよいのだろうか。うーん、と悩んでいると、ドラルクが続けた。
『そういえばさっきの写真って外で撮影したものだよね。君いったい今どこに居るの?』
「長野」
『そりゃまた遠い所まで。退治かい?』
「おう、もう終わったぜ。簡単な案件だった」
『そう……。なあ、なんで私じゃなくて私のぬいぐるみを連れて行っているんだ? 最近君、私を呼び出すこともしなくなったよな』
 ドラルクの声が少し低い、ような。月光も碌に差さない暗い森の中に風が吹き、木々を躍らせた。ザアアと葉のなびく音がロナルドの鼓膜を揺らす。
『どうして会いに来てくれないの、連絡も少なくなったし。こうして電話に出てくれるということは対話を避けてはいないようだけれど』
「なにを急に、どうした」
『急じゃない、ずっと考えていたんだ。なぜ突然遠ざける、君の隣に並び立つのは私でなければならないだろう。もしや飽きたとでも言うつもりか、このドラルクに。……そんなこと許さない、絶対に逃がさないからな』
「は」
 矢継ぎ早に投げられる言葉たちを理解出来なくて、返事が遅れる。だって、よく分からないけれど、まるでロナルドに会いたいと言ってくれているようではないか。
 とりあえず答えられるものから返事をしていかないと。なんだかドラルクの様子がおかしいように感じて、気が逸る。
「ぬいぐるみはお前の代わりに連れてきたんだよ」
『……え?』
「俺たち、最近ちょっと近すぎたと思わねえ? ただのコンビなのに家に入り浸ったりするのは違うんじゃねえのか、ただでさえお前引きこもりの雑魚なのに。そりゃあ仕事として必要な時は呼び出すけど」
『ちょちょちょ、ちょっと待って。一つ話を戻してくれ、なんで私の代わりにぬいぐるみを?』
「なんでってそりゃ、お前が居なかったから」
『なんで?』
「なんか物足りなくて?」
『え?』
「あ?」
『……ええっと、それは。私に会えなくて、寂しかったってこと?』
 言い淀むドラルクに、疑問を覚える。あれ、もしかして自分はとんでもないことを言ったのでは。ドラルクはいまなんと言った?
「……」
『ねえ、ロナルド君』
「……じゃあな」
『えっ!? ちょっとま』
 返事を聞く前にぶちっと通話を切る。やばいやばいやばい、大失言どころじゃない。いい年した男が聞かせるような言葉ではないだろう、恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。もはや少し発火しているんじゃないのか、長野の山中で人体自然発火など起こしたら山火事でとんでもないことになる、それはそれでどうしよう。
 というかこれ距離が近いどころではないほど気色の悪い発言なのではないか、挽回の手はあるのか、などと考えている間にドラルクから鬼のように電話が入る。こんな調子で出られる訳がない。応答を切って切って切っていると、やがて鳴りやんだスマホがポン、と一通のメッセージを表示した。
―――わたしもさみしかった
「……え」
 それから、ポンポンと続けて通知が入る。宵闇の森に軽い音が何度も響いていく。
―――君にあいたか
―――あいたかった
―――電話にでtて
 ……誤字ってやがる。呆然と通知欄を眺めていると、それから少し、間を置いて。最後の言葉が届いた。
―――次は私が会いに行く。いつも君が来てくれるから、今度は私が。明日の夜に行くから。
 あまりに都合の良いメッセージに、ロナルドは現実を疑った。先ほどの吸血鬼に催眠でもかけられたのか? いや、そんな訳がない。だってただの下等吸血鬼だったのだから。
 茹だった頭がぐつぐつと煮られるままに、勝手に指先を動かしていく。止まらないと、だって全然冷静ではないのだから。でも、まあいいか。恋に落ちた人間が、醜態を晒さない訳がない。だからまあ、もういいか、なんて。
 ポチ、と電話のマークを押して、履歴を出す。一番上に連続で記された名前へ向けて、電話を掛けた。プルル、という聞き慣れた呼び出し音が一度も鳴ることなく、電話を取られる。
『ロナルド君』 
「……明日の夜は、空いてないから」
『……』
「……明後日、俺が会いに行く」
『……分かった!!』
 まさに喜色満面、といった声音でドラルクが返事を返す。その後、でもいつか君の家にもお邪魔させてね、なんて言葉が続くけれど、上手く言葉を返せない。なにせ冷静ではないので。
『楽しみだなあ、君の好きな料理をたくさん準備しておくよ! そうだ、君のぬいぐるみも連れてきておくれよ、私のと一緒に』
「ああ」
『君に会えてない間に話したいことがたくさんあったんだ、私の親族の話はしたことがあるよね? 君が喜びそうな話があるんだ』
 ここぞとばかりに喋り倒す吸血鬼の声を聞きながら、思う。ロナルドが思っているよりも、ドラルクはロナルドを好意的に見てくれているのかもしれない。
 希望的観測に過ぎないが、それでもどうにも頬が緩む。
 次はデートにでも誘ってみようかな。
 ここ最近、胸にぽっかりと空いていた穴が急速に埋まっていくのが分かる。ぬいぐるみもいいけれど、やっぱり本人も良いものだ。
 電話を耳に当てながら、ぬいぐるみを持ち上げ軽く唇に当てる。こんな場面、誰に見られるわけにもいかないな。

 そんなロナルドへ、ぬいぐるみだけがつぶらな瞳を向けていた。
060
まくらめ @mkrm92.bsky.social · 13/06/2026
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ガラスが汚れてる、拭かないと。
 一人で結論を出すな! と叫ぶ吸血鬼の幻影は、遥か彼方のロナルドへと届きようもなかった。

 そんな結論を下して、三週間になる。あれから約束通り遊びには行ったが、次回の取り決めはせずに解散とした。ドラルクは戸惑っていたが、執筆が忙しい、と一言告げると大人しく引いてくれた。まあ嘘ではないし、あれから忘れていた締め切りがものすごい勢いでロケットスタートを切ってきたから、真実ロナルドは大忙しだったし。その原稿も終わり、溜まっていた書類提出も完了し、溜まっていた依頼を終了させ、よし、と息をついたところでフクマが現れたのだ。

 つんつん、と指先でドラルクぬいの頬へ触れる。やわらかなフェルトの感触につい頬が緩み、それからちょっと眉が下がった。
 そう、たった三週間、もう三週間である。そんな短い期間の間に、なんとロナルドはドラルクが恋しくなってしまっていた。だっていままで継続的に会って来たというのに、会えない時はメッセージでくだらない連絡を取り合っていたというのに、この三週間はなんにもないのだ。そんなのちょっと物足りなくなっちゃっても仕方がないだろうが! と胸中で叫ぶ、まあ別に誰に責められた訳でもないけども。
 あのホームページにはどの程度距離を取るべきか書いていなかったので、ロナルドには適量が分からなかった。連絡を減らせばいいのか、それとも会う頻度を減らせばいいのか。正解が分からなかったので、とりあえず全部試してみることにしたのだ。まあ何事もでかければでかいほどいいんだし、距離だって取れば取るほど良いんじゃないのか。
 そんな折に訪れたこのぬいぐるみ。ドラルクの代替として少し愛でてやろう、そしたらこの乾きも多少は満たされると信じて。
 抱き上げて、ぎゅっと胸元で包む。あーあ、こんなことをドラルクに出来る日なんて訪れるんだろうか。

 そんな出来事から、再び三週間。つまりドラルクと離れてから一ヶ月と少し。
 ありえないだろうこのロナルド様がぬいぐるみを持ち歩いて、あまつさえ写真を撮ってにんまりするなんて。そう考え世間には隠し通している、ファンのイメージを守るのも大事な仕事なのだから。
 そう、ロナルドはぬい活にハマっていた。それも、ドはまりといって良い程に。
「……よし」
 ドラルクぬいを掲げ、スマホのシャッターを切る。今日は出張退治で他県まで来ることになったので、せっかくだからとぬいぐるみを連れてきたのだ。長野の遥かな山々をドラルクぬいへと見せる。すげえだろ、埼玉にはアルプスねえもんな。
 誰にも知られずぬい活を続けていたロナルドは、割と日々を楽しく過ごしていた。ご当地アイスを見せてみたり、今回のように旅先に連れて行ってみたり、退治先に連れて行ってみたり。さすがに紛失や破損が恐ろしいので退治そのものには同行させないけれど。
 ドラルクからはちょくちょく連絡が届いていて「まだ会えないのかい?」「忙しいの?」「そろそろ遊ぼうよ」なんてメッセージにいちいち踊らされている。遠隔でも心臓を跳ねさせるなど、なんと末恐ろしい吸血鬼なのだろうか。恐るべしドラルク。完全に無視をするのも悪いので適当に返事を送っていたが、最近は「会いたい」という旨のメッセージが増えていた。……もしかしたら、本当にそう思ってくれているのかも。いや、最近入り浸っていた暇つぶしの出来る人間が来なくて、少し時間を持て余しているのかもしれない。そう思うと俄然腹が立ってきたな。
 ドラルクにはついぞ身の覚えのない怒りを燃やしつつ、ふと思い立つ。そういえばドラルクにぬいぐるみのこと説明していなかったな、と。ロナ戦にドラルクも出している以上、知らせておいた方がいいのかもしれない。
 よし、RINEしちまうか。距離を取るといっても仕事の話は別だ、少しくらい連絡を取ったって問題ないだろう。時刻は既に丑三つ時を回っている、どうせゲームでもしているに違いない。
 スマホを取り出しRINEを起動して『俺とお前のぬいぐるみが出ることになった』と打ち込み、送信する。それから、なんとなくドラルクぬいの写真も送った。折角ぬい活しているのにかぼちゃとツチノコしか見せる相手が居らず、少し残念に思っていたのである。ドラルク本人ならば問題ないだろう、既に情けない姿だって晒しているのだ、今更あいつの中でロナルド様のイメージが崩れることもあるまい。
 トーク画面にロナルドのメッセージと、山々を背景に映るドラルクぬいの姿が映る。
 あれ、これって俺がドラルクぬいを持ち歩いているように見えてしまうのではないか。もしや、やらかしてしまったか、と脳裏に浮かんだ瞬間、ドラルクから電話が掛かってきた。ついいつもの癖で応答ボタンを押してしまう。やばい、しくった。
「……もしもし」
『もしもしロナルド君?』
「うっ」
『えっどうしたの、大丈夫か!?』
「問題ねえ……てめえ、この野郎……ッ!」
『なんで急にキレられてるの、私』
 心の準備もなしに好きな奴の声聞いて平静でいられる奴なんかいる訳ないだろうが、と内心腹を立てつつ、体制を整える。つい胸を押さえてしゃがみこんでしまった。
「そんで、なんの用だよ」
『ぬいぐるみの件だよ! なにあれ、私聞いてないんだけど』
「俺も聞いてない」
『なにそれ怖い』
 電話の向こうで狼狽しているドラルクへ、かいつまんで説明する。ざっと話し終わった頃には全てを理解した様子で相槌が返ってきた、相変わらず理解が速くて助かる。
『なるほど、そういうことか。……あれ、待って、写真に写ってるのって私のぬいぐるみだけだよね。君のはどういうのなの?』
「今手元にない。欲しけりゃ後で写真を送る」
『楽しみにしているよ。というかまだ忙しいの? そろそろ会おうよ、君に食べてもらいたい食事のレパートリーも増えたんだ』
「そうだなあ……」
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 13/06/2026
読切ドラロナ 恋愛初心者読ロくんの続きですけど多分読んでなくても読める、と思います 1/3
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「ぬいぐるみ活用法」、「まくらめ」と記載されています。
画像情報:generated by 新書ページメーカー / Image by ぱんじ / フォント:源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

 ぬいぐるみ、なるものが流行っているらしい。そういえば、町中でキャーキャーと楽しそうにぬいぐるみを掲げて写真を撮影しているのを見たことがある気がする。
「というわけでこちらがロナルドさんを模したぬいぐるみとなります。こちらがドラルクさんですね」
「あのー……許可を取られた覚えがないのですが……」
「取っておりませんので……」
「あ、そうですか……」
 淀みない所作で恭しくお辞儀をしたフクマに、それ以上言えることはなく。ロナルドに出来ることは、サンプルとして提示されたぬいぐるみをまじまじと観察することだけだった。そういえば、これ系の企画に対しどうせ自分はノーと言わないので、最近では「お手間を取らせても悪い」と無許可なことが多かったことを思い出す。
 では、と告げて異空間へと消えていったフクマに戦慄しつつ、ぬいぐるみを手に取り試しにツチノコへ渡してみた。すると、ノコノコ言いながらぬいぐるみのロナルドをもふもふと齧り始める。
「ツチノコ、腹こわすぞ」
 ほっこりしつつ綿の塊をひょいと回収した。だめだ、遊んでくれるかと思ったけどこのままでは食べてしまう。じ、とツチノコから恨みの目線が向いている気もするが、こればっかりは仕方がない。ペットの異食行為を止めるのも飼い主の立派な役割である。
「しかし、良く出来てるな……」
 どうやらロナ戦出張版掲載誌に応募券が入っており、全員サービスで購入することが出来るらしい。
 帽子やマントまで再現された自分のぬいぐるみは、傍目からみても完成度が高いように思う。瞳、口は全て綺麗に刺繍がほどこされており、髪の毛も衣服の細かな装飾も再現されている。帽子についているにんにくの花や髑髏、十字架まで完璧だ。そりゃ、ちょっとは、どころかだいぶんデフォルメされてはいるけれど。
 次に、ドラルクのぬいぐるみを眺める。そういえば以前、フクマに頼まれるがままドラルクを撮影したことがあった。きっと、その写真が資料として使用されたのだろう。ドラルクをそのまま模したぬいぐるみは、こちらも黒いマントを付けて衣服も精工に作られている。頭の上には茶色い丸がマジックテープでくっついている、ジョンだ、世界一の丸。その下にあるドラルクの表情はきりりと眉をあげ、瞳は少し垂れており、なんというか、その。
「…………かわいい」
 クッ、とどこか悔しい気持ちでドラルクぬいを持ち上げた。なんとなく両手を持つ形で持ち上げてしまい、複雑な心持に至る。だってなんか胴体握って持ち上げるのも違う気がして。
 そうだ、と唐突に思いつく。
 町中でぬいぐるみと写真を撮る少女たち。現代日本では老若男女を問わず「ぬい活」なるものが流行っているのだと以前ワイドショーで見かけたのを思い出す。
 俺もやってみようかな、ぬい活。
 ―――ロナルド様は片思いに疲れていた。ほんのちょびっとだけ。

 ドラルクと距離を縮めるためにこれまで行った数々の行為。まあ、数々というほどではないが、ロナルドなりに色々と挑戦してきたのだ。手土産を渡すことから始まり、遊びに誘ったり、連絡頻度を増やしたり、果てにはあだ名で呼んでみたりもした。しかしどれもこれも上手くいかない。この短期間に何度ドラルクの困惑した顔を見ただろう。しかも、途中で何度もドラルクに、あー、その……所謂、ええっと、と、ときめいてしまい、醜態を晒す羽目になったのも片手の数では足りない程。
 そんな模索の日々で、いつものようにインターネットで情報収集していた時に目に入ったのはある文言。
『一定の距離を保ちましょう』
 その言葉が稲妻のように胸を貫いた。背中をデスクチェアの背もたれへと預け、頭を抱える。どうやら、あまりに距離を詰めすぎると相手へ与えるプレッシャーが大きく、また、執着心丸出しの状態で近づくのは恐れられる可能性があるらしい。
 聞いてないんだが。検索ソフトの一番上に赤字ででっかく書いておいてくれよ、そういうことは!
 だって最近のロナルドといったら、まあ分かりやすくアプローチをしていたつもりだ。距離を近づけよう好きになってもらおう、とあからさまに。
 聞くに、どうやら筋金入りの引きこもりであるドラルクは人間との接触に慣れていないきらいがある。城に泊まってほしいだとかロナルドと過ごせる時間が楽しいだとか抜かしていたが、その言葉がどこまで本気なのかとロナルドはずっと疑っていた。単に、初めての人間の知り合いがロナルドだからそう言ってくれているだけなのではないか。他に友人が出来れば、そいつにも同じことを言うのではないか。何せあの男、自分を殺しに来た相手とコンビを組めるほど、もとい友人関係を築けてしまうほど距離感がバグっている。その恩恵をいただきつつ、こいつおかしいんじゃねえのか、と、お前が言うなと怒られそうなことを思いつつ過ごしてきた。そんな矢先にこの言葉。
 いつもの癖で開いたRINEの画面をみつめる。トークの一番上にいるドラルクのアイコンの横には、返信されてきたメッセージが記載されていた。
『嬉しいな、待ってるよ! 今度は1on1のゲームもやろうね』
 ここ最近ではロナルド、もしくはドラルク双方が誘いあい、週に一、二度は退治でもないのに奴の城に赴き、食事やゲーム、歓談を楽しんでいた。今回誘ったのはロナルドで、これがその返信。他に、退治にも連れ出しているので週のうち半分くらい会う時もある。
 は、と思う。会いすぎじゃねえか、と。仕事はともかく、社会人にもなって毎週遊ぶなんて、どんなに仲良しの友人でも中々ないだろう。
 未だドラルクは対人接触に慣れていない。今は物珍しさから何度も何度も会ってくれているが、いずれ気づくのではないか、会いすぎだと。そうなったらどうなる。あの貧弱な吸血鬼のことだ、ビビるのではないか、ロナルドに。なんでこいつこんなに城に来てるんだろう、と。
 ―――距離、とるか。
 ふぅと息を吐き、乾いた眼差しで窓から青空を見上げた。今日も太陽は粛々と登り、ロナルドの心中と反比例して煌々と輝く。……あ、ちょっと
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まくらめ @mkrm92.bsky.social · 06/06/2026
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