袴の朱色
やけに芝居がかった送辞が聞こえる
耳に残るのはうざったい響き
ありがとう
一緒に頑張ってくれて
僕を尊敬してくれて
怖いいつものジャージが見える
目に浮かぶのはほんの少しの雨
ありがとう
ここまで教えてくれて
私に目をかけてくれて
じめっとした土の匂いが香る
鼻をくすぐる花粉
ありがとう
ここまで育ててくれて
いつだって隣にいてくれて
悩みを聞いてくれて
支えてくれて
紺の袴が少し濡れていた。でもほとんどバレなかった。朱色の着物が水に濡れないようにしながら、わたしは少しだけ振り返った。
2022/3/29 1:09