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Mg.D/マグ

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20↑, shipper, 字書き 主にdrfバンチとMP100 無断転載及びAI学習禁止 X⇒howling_deer タイッツー:mg_deer

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Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 17/08/2026
これはショウ律 リーダーたるものマナーも完璧って可能性もたっぷりあるのは重々承知で、等身大のティーンらしい姿にも夢を見ています
題【背比べ】(ショウ律)

 手元を見る。
 たまごやきを齧る。味噌汁をすする。米を一口、箸がまた交差している。顔をしかめて持ち直した。
 夏休みの宿題を一緒にやった時、弁当を食べる律の手つきはきれいだった。同時に、自分の子供っぽい箸使いが急に恥ずかしくなった。
 ドリルなんかよりよっぽど大きな宿題が出た気分だ。幸い夏はまだまだ長い。気合を入れて魚の骨外しに取り掛かった。
010
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 17/08/2026
チョコボックスに頂いて書いた、呪術…戦の🌻さんまとめ(1枚目は回游前軸、2・3枚目は完結後軸🍭🌻) す~~ごく楽しかったです!ありがとうございました!
題【不正義を泳ぐ者】(日車/呪術廻戦)

 怖い話でもします?と疲れ切った提案をされて、日車は「いや、」と端的に断った。またこんな時間まで付き合わせてしまった。
「……誰かが悲惨な目に遭うのは、現実だけで十分だ」
 ソッスネェ~……と力ない同意が机に突っ伏していく。労いのコーヒーでも淹れてやるかと立ち上がり、ふと窓ガラスに映った自分と目が合う。すぐに逸らした。
 嘆きに時間を割くほど暇ではない。
 怪談で終わらせてはいけないのだ。自分たちは、それと向き合い裁く者なのだから。題【すきあり】(篤寛/呪術廻戦)

 お疲れさん、とパピコの片割れを新入りの頬にちょんと当てる。おおきな眼がサイダーの青を追って、日下部に向いた。
「ストックしているのか」
「疲労対策だ。糖分補給と気分転換。いい時間だが、あんたもおとなしくワルイコトしときな」
 さっさと封を切って乱雑に食めば、爽やかな味が冷たく甘く喉を下る。あー、と仰いだところに影が落ちた。
「お言葉に甘えて」
 おおきな眼。真っ黒い中に自分の間抜け面が映っている。サイダー味、と、そぐわぬ熱。
 同じ熱の掌が頬から離れた。
「……気分転換してくる」
「……おう」
 背を向けた日車の、真っ赤な耳を呆然と見送った。彼が戻ってきた時にどんな顔をすればいいのか、手の中で溶けていくアイスは答えてくれそうにない。題【とける】(篤寛/呪術廻戦)

 ワルイコトしときな、と言われて邪な思いが湧いた。間の悪いことに、そういうことはするまいと決めた矢先のことだった。加えて残業続きの深夜で少しばかり理性が緩んでいた。
 目だけで日下部を追う。椅子の背もたれに体を預けて天井を仰ぐ、喉仏の骨ばったラインに触れてみたくなる。
 もし彼が目を逸らさないなら――
 伸ばした掌に無精髭のざらつきを感じた。熱いなと思いながら、普段は飴で塞がっているそこに、ふれる。
 強いて目を開けていた。驚愕の浮かぶ瞳に映る己を見てわずかに目を閉じ、離れる。
「……気分転換してくる」
 足早に職員室を出て、自販機前まで来てようやく顔を覆って溜息をついた。
 エゴと罪悪感と少しの解放感、それを塗りつぶすようにたった一瞬の接触を繰り返し思い出している。
 悪いことはするまいと決めていた。人は時に一滴の希望で溺れると分かっていたから。
 触れたのはほんの一瞬。なのに、背骨がとけるほど甘かった。
010
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 11/08/2026
ツイックスで1日1本140字のセルフ強化月間をやっているログまとめ 140字と言いつつ300字前後あるのはまあ仕様ってことで 画像と色の調整でなんか微妙~に読みにくくなってしまい…適度にALTをご利用ください 8/1 菅野直、未帰還(隊長と菅野/ドリフターズ) 8/2 カンナエの戦い(ハンニバル爺/ドリフターズ) 8/3 一日遅れのハーブの日(峯岸と芹沢/モブサイコ100) (8/4~9 未着手) 8/10 健康ハートの日(ヨシフと統一郎/モブサイコ100) 8/11 山の日(小手指/忘却バッテリー)
030
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 28/06/2026
イベントお疲れ様でしたの島テル 収穫品を胸に抱いてお休みください \ここがお前のスイートホームだ/
「島崎、頼みがある。ちょっと出てってくれない?」
「別れ話ですか?」
 つれないですねぇと肩をすくめつつ、ぐいぐい押し出されるがまま玄関を出た。ひと呼吸おいてドアが開く。内緒話のようなくすくす笑いが耳をくすぐる。
「あのね、――おかえり」
 もうひと呼吸おいて、島崎も対の言葉を口にした。彼を愛おしむ全てを込めて。
032
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 26/06/2026
もうイベント前日ですねの島テル お題は「一緒にカーテンの色を選ぶ」でしたが、島崎はカーテンも色選びも眼中にないので テルくんは一緒に買うつもりだったからちょっと怒ってます
 そろそろ、……、という真剣な声音に思わず竦んだ。肝心な部分はテレビからの歓声でかき消されてしまったけれど。
 自然、足が遠のいた。徹底的に避けるつもりだった。なのに少年はあっさりと島崎を見つけ、あの居心地のいい部屋に連れ戻す。仕方のない迷子だと言わんばかりに。
「ここの段の左端、ふちに線が入ってるシリーズがアンタのだから」
 ひとまわり小さな手が島崎の手を引いて、食器棚の中に増えていた、島崎の居場所に触れさせた。
042
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 18/06/2026
返事は全部「うん」の島テル 「付き合いましょう、いいですね?」で軽やかに言質を取る島もいいけど、テルくんの見てないとこで真面目にしてるのもいいものです
テルキ、居間で寝たら風邪引きますよ。
……聞いてませんね?
ブランケットだけ掛けておきますから。
……ねえ、テルキ、……
私、あなたのことが好きです。返事を頂いても?
……ふふ、聞きましたからね。
では、また明日。
今度は起きている時にちゃんと言いますよ。
020
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 14/06/2026
良かれと思って非常識をぶつけてくる島崎氏(元テロリスト)(なお組織が瓦解しただけで本人が更生した証拠はない)
題『僕の彼氏は元テロリスト』(島テル)

「テルキ、今年の夏はリゾートに行きませんか? 本当は誕生日プレゼントにしたかったんですが、手間取ってしまって。案内しますよ、アナタのですから。え?リゾートホテルですよ。アナタの。ですから、ホテルがプレゼントです。ええ。ちゃんと登記のクリーンなところにしましたよ。そういう問題じゃない? ビーチも付いてますよ。従業員も。違う?身元は確かですって、あっ」ブツン!
 うーん、山派だったんでしょうか。
010
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 07/06/2026
甘える×甘やかすタイプのキドブチ 何しろ惚れちゃってるんでね😉
 よっこらせと立ち上がるついでに隣の人物を担いだとて、我が愛すべき部下たちはとっくのとうに慣れっこだ。酒盛りの喧騒を背に上機嫌な足取りで階段を上る。
 まったく、隙の多い男に惚れると手間がかかる。それがいいのだけれど。
 部屋のベッドに相棒を放ると寝ぼけた腕が伸びてきて、おぼつかない手つきで二三度ブッチの黒髪をかきまぜていく。
 まったく、これで寝ぼけているのだからたちが悪い!
 おやすみの代わりに額にキスを落とし、満足げに相棒の腕の中にもぐった。
031
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 05/06/2026
少し続いたショウ律のターン 降参の瞬間はなんぼ書いてもいいもので
題『ステップアップ』

 お膳立てのお返しにとあれよあれよと事を進められ、今や友達面した片思い相手に壁際まで追い詰められている。まっすぐ覗き込まれて直視できない。
「お前と友達じゃなくなるのは嫌だ……」
 我ながら頼りない声。なのにショウは揺るぎない。いっそ眩しいほどに。
「じゃあ友達兼恋人は?」
 真剣に聞かれて思わず笑ってしまった。強張りはほどけて、よくばり、と小さな笑みは彼の肩口へ。
 重ねた心音ごと、この恋心をお前にあげる。(了)
021
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 04/06/2026
島テル(成立🆕)+ショウ律(未成立) こっちは付き合い始めたんだから観念しろよな
 この片思いが弟くんにバレてからというもの、どうやら僕らは『お手伝い』されている。島崎は島崎で似たような状況らしかった。
「というわけで付き合わない?」
「雑に攻めてきますね。いいですよ、あの子らをお友達でいられなくして差し上げましょう」
 悪役めいて笑った彼は、少し離れたところから僕らを窺っている橙と黒を顎先で示す。まったく世話が焼けるとばかりに。
 教えてあげよう。ひとりが二人になるだけで世界は変わるってこと。
130
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 03/06/2026
「新しくできた店だそうで、ひととおり買ってみました」 「人の胃をあてにしてるなぁ…いいけど。紅茶でいいよね?」 「おや、ありがとうございます」 少しでも長く過ごしたくて曜日や時間帯を気にするようになり、おかげで色々見つけるようになった人の、分っっっかりにくいお礼
『土曜十四時、シュークリーム六個入り』

 あの子に会うようになって日常に増えたものがある。
 時計、カレンダー、ドアチャイム、一人だと持て余す量の手土産。しょうがないふりを装って室内に招く声。ああ、もう戻れない。
 ふわりと真新しい茶葉が香った。にやけてしまいそうなのを堪えて、きっと隠しているつもりの彼にならって気付かないふりをする。
 チャイムとほぼ同時の足音に、声の裏に潜む喜色に、島崎好みの紅茶が常備され始めたことに、いちいち喜んでしまうのだからしょうがない。それが恋というものだ。
 戻れませんねぇ、と内心呟いて、招かれるまま部屋に上がった。(了)
010
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 21/05/2026
#島テル食エト ひっそり参加させていただいてます ようやく拝見した皆様のサンプルが素敵すぎて気おくれ…!ドキワクが止まりません
020
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 01/11/2025
犬の日のヨシ+統 またの名を、思いやり1年生のバッドコミュニケーション
 某所ドッグランにて。
「今日は犬の日だそうだが、気分はどうだ?」
「誰が政府の犬だ。心臓に首輪つけられてる奴の台詞じゃねえんだよ」
「なるほど、犬同士か」
「お前は人の気持ちを最悪にするエキスパートか?」
「……」
「否定しろよ……」
 何も知らない犬たちは楽しげに、右へ左へ駆け回って遊んでいる。
021
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 01/11/2025
ワンライ未満の島テル(お題「ハロウィン」「デート」) 彼は公権力に頼らないと思うのでそういうじゃれ合いです
「島崎、アンタが僕にトリック《イタズラ》した場合、警察にトリート《おもてなし》されることになる。その上で訊くよ、トリックオアトリート?」
「……この間おいしいと言っていた店の、ハロウィン限定メニューでどうです?」
 やった、と笑った子供の声は浮き立っていて、つい苦笑する。
 初めからそのつもりだったけれど、ハロウィンの小悪魔に踊らされるのも悪くはない。
022
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 26/10/2025
#島テルワンドロワンライ お題「秋雨」「読書」 ツーライ+αの中華風パロ 『最年少の天才法務官ですが、宮廷の元暗殺者に求愛されて困ってます!~お前の存在が法規違反~』て感じです 用語は適当なのでなんかいい感じにスルーしてください pixivまとめ読み→ www.pixiv.net/novel/show.p...
惑わしの雨
 広げた巻物から墨が香り立って雨に気付いた。振り仰いだ窓の外はすでに暗く、ひとたび目を離せば文字は夕闇に沈んで読めない。またやっちゃったか、と輝気は溜息をついて書を巻き直した。続きが気になるのは山々だが、終業の鐘の後の居残りは日暮れまでと決めている。
 異例の若さで司法府に任ぜられた輝気を快く思わない者は多い。輝気への仕事を後回しにしておきながら、灯火代を税の無駄遣いだと陰口を叩いたり、窓の明かりを見ては「名は体を表すものだ」と軽口ぶった皮肉を囁いたり。英気が輝くようだ――などと思っていないことは目を見れば分かるというのに。
 溜息をこらえて燭を灯し、あたたかな光に目を細めた。雨のせいか思ったよりも体が冷えていたようだった。どれくらい降っているだろうかと戸口を覗こうとして、そこにある黒が夕闇ではなく黒衣であることに気が付いた。
「っ、」
 一体いつ来たのだろう。足音も気配も感じなかった。上背のある、感情の読めない笑みをたたえた男だった。
「こんな時間まで居残りですか? 熱心ですねえ」
、顎に手をやって笑う男の、裾の刺繍の見事さが目を引いた。黒い官服は貴人の警護職であることを示す。要人とその周辺人物はあらかた覚えたはずだったが、輝気は彼に心当たりがなかった。つとめて当たり障りのない口調で応える。
「……僕宛の仕事はよく遅れるんです。皆様お忙しいのでしょう」
「確かに、法府に任官された年若い官吏の話はよく聞きますね。なるほど」
 何が確かにでなるほどなのか、性格の悪い笑い方をする奴だなと思った。輝気は値踏みの視線を断ち切るように裾を翻し、書架を示すふりをして悟られない程度に距離を取る。曲者には関わらないに越したことはない。
「おかげで書物を読むのがはかどります。今日も坡公の新しい写本をつい読みふけってしまって。それで、あなたは何かご用ですか?」
「探し物を。衛府からの書簡が誤ってこちらに来てはいませんか?明朝までに見つからないと困るのですが」
「ああ――」 輝気は通達をまとめている箱を探り、藍色の綬(組み紐)のついた書簡を見つけてかざしてみせた。
「これでしょう。風雅な筆跡の方が就任なさったようですね、使いの者も大変でしょう」
 衛府の下士程度であれば読み書きのできない者が採用されることもままある。往々にして彼らは各府への使い走りを命じられるが、そうして預けられた書簡の取り違えもまたよくあることだった。
「衛府とうちは同じ回廊上ですし、綬も似ていますから。どちらか変えるだけでも間違いが減るでしょうに」
「進言してみましょう」
 え、と見上げた男は輝気には目もくれず、綬をつまんで指先で形を読んでいる。盲目なのか、とその仕草でようやく気が付いた。
 するとなおさら彼の所属が知れなくなる。盲目の衛士など聞いたことがない、と内心首を傾げる輝気をよそに、男は軽く頷いた。
「確かに受け取りました。では」「あ」
 とっさに裾を掴んで引き留めてから無礼に気付き、曖昧に笑ってみせる。
「せめてお名前を。どなたかも分からない方に文をお渡しするわけにはまいりません」
 なるほど、と男は面白そうに笑った。
「亮。忠亮の亮です」
 坡公とは趣味がいい――独り言めいて黒い官服の裾が翻る。男は夜に溶けた。
 思わず戸口に駆け寄って辺りを見回す。男の姿も足音も何もかも、そこに誰かがいた痕跡は何一つ残っていない。けれど文箱は開いていて、藍色の綬の文はそこにない。
 呆然と見上げた空からは絹糸のような秋雨が降り、紙燭の明かりに音もなく金の輝きをはじいていた。 (了)

※亮:明るい、誠実である、補佐
※忠亮:嘘偽りのないこと
043
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 17/10/2025
#島テルワンドロワンライ お題「秋色」「写真」 デキてる時空です お食事イチャイチャおうちデート
色づく季節

 その日『旬の味覚コーナー』の売り文句のもとに、輝気は未知との遭遇を果たした。
 未確認食材はキッチンを経て恋人の口元へと向かう。
「島崎、あーん」
「え、毒物ですか?」
「毒見ではあるかな。まあ味はいいはずだよ」
 すんと揚げ物の匂いを嗅いで、島崎は思いのほかためらいなく食べた。「ん、おいしいですね」と反応もまずまずだ。
「天ぷらですか」
「うん、ただ色がすごくて。アケビって食べたことある?」
「ああ、はい」
 島崎は納得の色を浮かべた。「紫色の植物、特に野菜はすごい色をしているんですってね。紫芋のシチューも無言で私に回されました」
 味はいいのに色が毒々しかったらしくて、と男は笑う。
 わかるよ、と輝気も頷いた。正直、売り場でもそのド派手な紫色にちょっと引いたのだ。美味いことは知っていたし、好奇心で買ってみたはいいけれど。
「いざ食べるとなるとな……」
「キミの学校の制服も紫ですよね」
 食べてもいいかと言外のお誘いをガン無視して、自分でもアケビの天ぷらを食べてみた。なるほど、意外と癖のない味だ。
「仮に僕が『金色だよ』って言っても確かめる方法ないだろ」
「ありますよ」
 え、と顔を上げると島崎は何やらスマホを操作して、輝気の眼前にかざしてみせた。機械音声が色の名を告げる。
「――こういう、色を教えてくれるアプリというのがありまして」
 制服が金だったらアナタは全身金色になっちゃいますね、と男はくつくつ笑った。そのまま食卓のあれこれをアプリに読み上げさせる。白、黄色、オレンジ、茶色、銀、紫、茶色、緑。
「もしかして、今日の献立って彩りとしては大変なことになってます?」
 不意に真面目な顔になったので思わず噴き出してしまった。そうかもしれない。栗ごはん、豚汁、秋刀魚、アケビの天ぷら、マイタケの天ぷら、おひたし。
「……味は普通だから、安心してよ」
「そこは疑っていませんが」
 島崎は箸を取って、美しい所作で秋刀魚の骨を外し始めた。こういう時、未だに不思議な気持ちになる。彼にとって世界はどう見えているのだろう。
「アナタにとって秋は紫なんですか?」
「うーん、金色かな? 実りの秋」
「なるほど」
 す、と長い指が輝気の短い髪をすくう。心臓が飛び跳ねた。
「ちょ、食事中は、」
 自分で制止しておいて、あっさり離れた体温を名残惜しく思う。紅潮した頬が見逃されていればいいが、そう甘くはないのがこの男だ。
 かざされたスマホ。気付くと同時にシャッター音。
「こら!」
「ふふ」
 スマホを取り上げようとする輝気から身をよじって逃げて、島崎は実に楽しげだ。手を伸ばしても体の幅で絶妙に届かない。
「アナタは、実りの季節の子なんですね」
 耳元を優しい声がくすぐった。息を呑めば、もう愛しい人の腕の中だ。
 色づいた頬は体温でばれているだろう。写真消して、と声が揺らぐ。承諾されないだろうと分かっていても。
「お前以外に見られたくない……」
「もちろん、見せる気なんてありませんとも」
 己には見えない秋色をやさしく梳いて、島崎は満足げに笑った。だって私の前でしかしない顔ですから、と言われればぐうの音も出ない。
 島崎の写真フォルダにひっそり残る、自分の寝顔を輝気は知らない。 (了)
142
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 13/10/2025
#島テルワンドロワンライ お題「映画」「おでん」 Xでバタバタしててこっちで投稿し忘れてました おでんの材料一式持って自宅に押しかけてくる(しかも料理させる)元テロリスト、テルくんはもっと怒っていい まとめ読み→ t.co/mP8UjQBlbN
正しい週末

「今夜はおでんにしましょう」
「は?」
「夜のお供にB級映画も持ってきました」
「泊まる気満々か?」
 思わず率直なツッコミが口を突いて出た。返事も聞かずに上がり込んできた男はでかいエコバッグを引っ提げて、ゾンビとサメどっちがいいですか、なんて笑っている。友人でも恋人でもない上に元テロリストである。しかも罪を償ったという話はとんと聞かない。
「献立を決める手間も買い出しの手間も省けたでしょう? そろそろ鍋物の恋しい季節ですし」
 勝手な言い分ではあるが、事実でもあった。なぜ冷蔵庫の中身を把握しているのかは置いておいて、材料が揃っているなら夕飯の選択肢としては悪くない。
 万一の時は速やかに捕縛して通報しよう。そう割り切って、目の前のおでんの誘惑に乗ることにした。
「……一応聞くけどお前、料理の経験って」「ハハハ、血の味がする料理が食べたいなんて酔狂ですね」
「聞いた僕が悪かったよ」
「冗談です、自炊程度はどうにか」
 へえ、と思ったのもつかの間、島崎は全ての材料を下処理なしで鍋にぶち込もうとした罪であえなく退場となった。
 ただ「じゃあ見ていてもいいですか」と言うので頷いたら、キッチンテーブルに頬杖をついて輝気がこまごま動くのを柔らかに眺めていて、それだけは少し落ち着かなかった。
 おかげで日が暮れるまであっという間だった。柔らかな色味を帯びた光がオレンジから紫へ、そして群青へと移ろっていく。ことこと煮える鍋はお出汁の香りの暖気を部屋に満たして、隣からは島崎が面白そうに手元を覗き込んでくる。
 どうしてこんなに胸がそわそわするのだろう。
「皿を出すくらいは手伝えよな」
 そう言ってようやく追い払って、ひと呼吸。
 土鍋代わりの一番大きい鍋に、古新聞を鍋敷きにして、いただきますの声が重なった。
「あつ、あー、おいしい……」「映画、どれでも好きなのをどうぞ」
「本当にB級しかないな……。趣味なのか?」
「誰かと一緒に見る時はB級と決めているんです。音声ガイドがないので」
「ああ、……え、つまり僕にガイドしろってこと? 『メカヒグマvsバトルシップシャーク』とか『キラー・オブ・スモウゾンビ』とかを?」
「キミ上手そうですから」
「ガイドできるくらい真剣に見ろってこと?って意味だよ!」
 怒られてもくつくつ笑っている男は次の瞬間餅巾着で舌火傷して、ざまみろ、と思った。
 軽い問答の末、少なくとも食事中に見るラインナップではないということで映画は夕食後となった。ガイドのやり方をざっと教わり、どれを見ても苦行確定だろうと適当な作品を再生し始める。
 大写しの画面に、着ぐるみのサメがバタフライで現れた。
 ぐっと笑いをこらえる息が伝わったのか、島崎が軽くこちらを窺う。同時にサメが人語で吼えた。
「ンッフ、……サメですよね?今の」
「サメ、っていう、設定だね」 笑ってしまって駄目だった。呼吸の合間に状況を説明するたび笑い声が上がる。
 ようやく終盤に差し掛かって笑い疲れた頃、半分眠くなってきた頭でぼんやり思った。一人暮らしで鍋料理を食べるのは初めてだった。自宅でこんなふうに誰かと笑いながら週末を過ごすのも。
 ――どうりで落ち着かなかったわけだ。
 エンドロールの音楽で少し視線を上げる。島崎はあの柔らかな表情で輝気を見ていた。
 悪くないでしょう、と唇が動いた気がした。うん、と答えたつもりで目を閉じる。
 きっと世間ではありふれた、自分には無縁だと思っていた、――けれど正しい週末の過ごし方だ、と、思った。 (了)
075
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 04/10/2025
(5/5)
 知っているんだ。
「お前の願い事、叶えてやろうか」
 身をかがめて内緒話の姿勢を取れば、男も身をかがめてくる。これを好意でないと言い張るには無理があるだろうにと内心で笑って、男の薄い唇に、砂糖とバターの焼き菓子を押し当てた。
 満月の名を冠する菓子だ。
「月の味を確かめてみるといい」
 風が木立を鳴らす。キミの初めてをもらうのは気分が良いと、テレポート直前の言葉が蘇る。
 ――食べてもいい。お前なら。
 わずかに弧を描いた唇が満月を食む。テルは中身の減ったマグカップをそっと膝の間に置いて、掌で蓋をした。
 月と自分との間に柔らかな影がかかる。
 砂糖とバター、その向こうに、ブラックコーヒーの味がした。 (了)
132
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 04/10/2025
#島テルワンドロワンライ お題「コーヒー」「月」 遅刻参加失礼します 夜の登山でティータイムついでの駆け引き☕🍪(1-4/全5P)
月蝕

「登山しませんか」
 実に軽く誘い出されて、あれよあれよという間に山の中だった。しかも、何を思ってか夜の登山だ。静かでいいでしょう、と見透かしたように男は笑った。登山リュックにぶら下げたブリキのマグカップがカラカラと音を立てる。
「X軸とY軸の移動ばかりだと飽きてしまって」
「登山のことをZ軸の移動って言う奴、初めて見たよ」
「それは光栄ですね」
 ハハハと軽い笑い声が夜の木立に吸い込まれていく。
「……の、……、をもらうのは気分が良い……」
 ザァ、と風が吹いた。湿気を含んだ特有の匂いに目を眇める。今、なんて?
 大きな手が腕を掴む。浮遊する感覚。少しの目眩は、満天の星空への驚きですぐに吹っ飛んだ。「……すごい」
「天の川とか見えます? 私には分かりませんけど」
 リュックを下した島崎は、思いのほか手際よくカセットコンロの準備をしていた。火を挟んで向かい合う椅子が二つ、マグカップも二つ。こういうところが、ずるいと思う。
「おやつの準備はしてきましたか?」
「持ってはきたけど、本当に必要だった?」
「遠足には必須でしょう。自分で選ぶと面白くないんですよ」
「へえ? 自分の好きなものにこだわるタイプだと思ってた」
 島崎は答えず、湯を沸かしている。どうにも勝手が掴めなくて居心地悪く椅子に腰を下ろした。
 見上げた空は溜息をつくほど美しい。目線だけで星々を追って、自分がそこまで星座に詳しくないことにまた別の溜息をつく。
「……秋の星座ってなんだっけ」
「ないんじゃないですか? あまり多くても気疲れします。――コーヒーとココア、どっちにします?」
「コーヒー。――見えなくても気疲れする?」
「無遠慮に見られるのは嫌いです」
 そうでしょう、と言いながら島崎はバリスタ顔負けの淹れ方をする。立ち姿がいいのもあって様になっていた。
「ここ、前にも来たことがあるの?」
「ボスに連れてこられました。星が見えるというのもその時に」
「ああ」
 なるほど、と再び見上げた木立の上に、ぽこんと丸くて黄色いものが乗っかっている。奇妙な光景に思わず目を凝らした。
 よくよく見れば満月なのだった。どこか現実感のない、カステラみたいな月。そのことを口にしようとして一瞬ためらい、けれど挑む気分で声に出す。
「……、月が綺麗だ」
「星も奇麗でしょう」
 打てば響くような答えとともに湯気の立つマグカップが渡される。ふわりとコーヒーの芳しい香りが鼻をくすぐった。
 分かって言っているな、と思った。同時に、それを邪魔されたくなくて登山なんて言い出したんじゃないか、とも。
 手の中のマグカップが熱い。
「ミルクはいらないんだけどな……」
「無糖ですよ、一応」
「半端に子ども扱いするなよ」
 くつくつと笑う男を尻目に、マグカップに口を付けた。ついでに自分の荷物の中からおやつのクッキーの箱を出し、ふと月を見た。
『月が綺麗ですね(あなたを愛しています)』
『星も綺麗でしょう(私の思いをあなたは知らないでしょう)』
 向かいの椅子で足を組み、涼しい顔でコーヒーを飲んでいる男に、知っているよ、と告げたくなった。お前が誰でもこうして連れ出す性質でないことくらい、気に入ったものを手元に置いておきたくなる性分であることくらい、そのくせ軽口で誤魔化してすぐ逃げられる距離を取っていることくらい、もう知っている。
165
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 02/10/2025
10/3 島テル もうじきこんな季節が来るのかと感慨を込めて
 場所を間違えたな、とテルは唇を噛んだ。このままでは待ち合わせに遅刻してしまう。
 秋の匂いがする夕暮れだった。帰宅ラッシュと重なって人通りが増えている。すれ違う無数の視線が彼をよぎっていくことに心がざわめく。
 はらはら、はらはら、オレンジ色の花が彼の頭上に降り積もる。
 キンモクセイの花冠を被った男と顔を合わせるなり爆笑しないよう、テルは必死に呼吸を整えた。
164
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 18/09/2025
レドフォ訃報に寄せて きっと光の向こうのオーストラリアに行ったのでしょう
 目を開けていられないほど眩しくて、けれど相棒のはしゃぐ声がしたので肩の力を抜いた。潮風の匂いと波の音、砂の感触。――海辺だ。
 オーストラリアかと問えば、さあな、と明るい返事がある。
「どこだっていい。お前といりゃ、どこへだって行ける」
 当たり前のように言うので俺もなんだか笑ってしまって、砂を払って立ち上がった。
 そうとも、もうどこへでも行ける。誰も知らないほど遠く。
020
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 04/06/2025
6/4 ヨシフと様子のおかしい統一郎(お題ガチャで出たやつのお題を見失った) 政府施設ならきっと超能力者の脳波を検査できる技師さんもいるでしょう
 世界征服できる力を手に入れてしまった。
 ヨシフは傍らの男を盗み見る。〝力〟であるところの統一郎は、静かに天井を仰いだまま微動だにしない。これは放っておいたらまずいやつだろうか。
 勝ったら何でも言うことを聞く。その場の勢いでよくある賭けをして、勝ってしまったがゆえの気まずい空間である。
 真顔でそんな様子のおかしい挙動をするな。いや乗った自分も悪いのだが。
 殺せ……と、か細い呻きが聞こえた。これはまずいやつだな。ヨシフは彼に緊急用の麻酔を突き立てて証拠隠滅を図った。
031
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 25/05/2025
ブチキド寄り キッドが眉間に皺寄せたツラを心底可愛いと思っているタイプのブッチ
 扇状に広げてかざされた手札の上をブッチの指が行き来する。視線は己の指に、けれど意識は相棒に。
 ふっと抜かれた札の柄にキッドは大きく息を吐いた。
「クソ、また負けだ」
 何だってお前には勝てねえかな、と零した相棒を横目にブッチは軽く笑みを漏らす。
「さあ、なんでかね」
 とぼけてみせて再び札を配り直した。負けず嫌いの勝負は今夜も長くなりそうだ。
 可愛い奴だ。俺との勝負に限って、目の色が変わるほどムキになっちまって。
041
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 24/05/2025
あるかもしれないバンチ(昨日分アーカイブ)(Xくんのデータが取得できないの勘弁してほしい)
 煙草が手元にないと落ち着かない。知った上で強制没収した相棒はベッドの隣で拗ねた背を向けていた。
 ――俺はお前のためなら死ねるぜ、だなんて。
 悪かった、と、言えばいいのだろう。けれど悪いとは思えないのだ。自分の命はとっくにこの男のものなのだから。
 逡巡していると、溜息とともに起き上がる気配がして、キッドの脇腹に手が触れた。
「お前の血を見るのはもう沢山だ」
 それきりまたベッドに沈む。俺もだよと思ってしまって、たった一言の謝罪がどうしても言えなかった。
021
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 06/05/2025
5/6 こどもの日・振替休日(島テル) いつものヒモ崎 島が雑に作った新聞紙の剣に対して👔ソードで切りかかるテルくんは没です
 買い出しから帰ると、テーブルの上には柏餅が、ソファには腹立たしくも長い脚があった。もう叩き出す気力も失せて冷蔵庫に食材をしまう。
 ふと、流し台の上にオフホワイトの包みが立てかけてあることに気が付いた。すっきりと伸びた緑と涼しげな紫は今日飾るべき花だ。自分では買わなかった花。
「夕食、中華にしませんか」
 和風のは見つからなかったのでと背後から声がかかる。彼はどんな顔でそれを探し回ったのだろう。どんな気持ちで。
 振り返れないまま、うん、と返すのが精いっぱいだった。
032
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 05/05/2025
こどもの日(エクボとスヤスヤ茂夫) 最終回の「色薄くなった?」にこういう考察があったなと思い出して
 寝る子は育つが悪霊は眠らない。窓の外から茂夫の部屋を覗くと、子供は健やかに眠っていた。
 成長期なのだ。よく食べ、よく眠り、よく挑戦し、たまに挫折し、それでも前を向いて歩いていく。悩みの種は尽きずとも、彼は周囲に恵まれている。
 窓辺の菖蒲があるかなしかの夜風に揺れていた。朝それを吊るした子供の手つきに迷いはなかった。祓われる存在などここにはいないと言わんばかりに。
 全くたまったものじゃないと月に笑う。悪霊が守護霊に育つだなんて。
0123
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 01/03/2025
パンドラの段ボール箱(忘バ/藤堂) イップスまわりの課題曲練習
 明日治るかもしれない。一生治らないかもしれない。
 ボールをキャッチする。振りかぶる。反射でできる送球のフォーム。一塁へ――
 たったそれだけが、どうしてもできない。
 だからもう住む世界が違うんだって自分を塗りたくって。全部忘れようって野球部のない都立に逃げて。なのに、結局捨てられず未練がましくしまい込んでいたその箱を、もう一度開ける。
 使い込まれた黒革が鈍く輝く。しまい込んだいつかと変わらず。
 希望とはひどく残酷だ。それでも、と願ってしまうなんて。
031
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 22/02/2025
2/23 島テル にゃーにゃーみゃーの甘えた猫の日  「キミ世話焼きですよね笑」と「キミの料理は美味しいですから」をリズミカルに繰り出してくるヒモ崎
 公園のベンチに島崎がいた。寒さの緩んだ日差しにつられてか珍しく眠っているようで、ふてぶてしい風体の猫がちゃっかり膝に乗っていた。あまり厚着をしない彼の体温はさぞ心地良いことだろう。くすりと笑って目的のスーパーに向かった。
 買い物を済ませ、ドアの前で鍵を出したところで背後から背の高い影がかかる。
「……猫みたいな奴だな」
 彼のズボンを一瞥し、スーパーの袋を持たせて粘着クリーナーを取りに行く。予定を変えて先に料理だ。彼が来たということは、腹が減っているということなので。
021
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 22/02/2025
猫の日(ヨシフと統一郎) あなた疲れてるのよ
 街中で猫のモチーフと日付の組み合わせを見るようになった。あれは動物愛護デーか何かかと問えば猫の日だという。
「猫の日?黒猫の日じゃなくてか?」
「語呂合わせといって、2を”ニャン”と読む。ニャンニャンニャンで猫の日だ」
「へえ」
 平然と流してみせたが内心動揺していた。不意打ちとはいえ、四十代男性(妻子持ち)による真顔の「ニャン」を浴びせられるとは。
 帰ったらさっさと寝よう。それこそ猫のように。
121
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 18/02/2025
ポケット争奪戦(Thisコミュ)
「デルウハはにこが一番いいよねーっ!」
「はぁ?あんたなんか誰も相手にしてないわよ!」
「ガッハッハ!モテモテだなぁデルウハ!」
 ちょこまかとまとわりついてくる彼女らの目当てはデルウハその人ではなく、ポケットである。筋肉質な人は体温が高いらしいぞと暖を取りに来ているのだ。一時的な流行だろうが、いちこまで若干そわそわしているのは勘弁してほしい。
「じゃれるなクソッ、点呼くらいじっとしてろ!」
 怒鳴り声を縫って子供らの明るい笑い声が雪山に響く、つかの間の休息である。
020
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 01/02/2025
昨日のお見舞い崎の続き 冷蔵庫の中には写実的なうさぎ林檎と、薄切り林檎を巻いてバラ型に盛り付けたバージョンがあって、競ってないのに負けた気分になる
 人の気配と鼻歌と。だるく首をめぐらすと、キッチンに見慣れた背中があった。超能力で包丁を使いながら調味料を探している――ああくそ、人を負かしておいて。
 引っ掻き回されている棚から塩の小瓶を出してやって、再び目を閉じる。
 起きた時には男の姿はすでに無かった。枕元にはきちんと剥かれた林檎が器に盛られ、蠟梅の枝が活けられている。それだけが名残だった。
 頭が痛い。――こんなことが嬉しいなんて。
153
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 31/01/2025
島テル 自分がボコした相手にうきうきと見舞いに行く男 何たる屈辱でしょう
 冷たい風の中、みずみずしい甘い花の香りがした。辿っていくと剪定鋏の音がする。
「蠟梅ですか?」
 庭の主らしい相手はいい香りだろうと誇らしげに笑った。床の間に活けると朝日に透けた花弁が美しいのだと。
 なるほど、起きるのが楽しみになりそうだ。
 分けてもらった一枝の新聞包みを抱いて、自然と笑みが漏れる。発熱の子に見舞う林檎が楽しげに袋を鳴らしていた。
131
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 25/01/2025
島テルとホットケーキ 手先の器用な知能犯
 部屋に充満したバニラの匂いにすんと鼻を鳴らした。バター、シロップ、それに焼き菓子の香ばしさ。もはや侵入者に動じもしない声が「お皿二枚取って」と指示してくる。それなりに厚みのあるものが左右の皿に滑り落とされた。
「右は普通のホットケーキ、左はベーコン乗せ。好きなほうを選んでいいよ」
「では右を」
 彼は甘党ではないからと選んだそれにハート形の焼き目があること、近所のスーパーではもうバレンタインの売り場ができていることを島崎は知らない。
143
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 24/01/2025
風邪引きバンチその2 起きたら片付いてたキッチンと隣を見てめちゃくちゃ溜息つくキッドと兄属性ブッチ
 発熱のまどろみは焦げ臭さで霧散した。毛布にくるまったまま台所に向かうと、真っ黒になった鍋が哀れな姿を晒していた。
 火事でないことを確認し、どうやら粥を作ろうとした形跡を見つけ、ソファの上で丸まった毛布からふて寝中の犯人の金髪がはみ出ているのを見つけて、笑みがこぼれる。
 弟妹達と同じことをしてら。
 起こさないよう金髪を撫でてソファの隣に座り込み、風邪が治ったら何をして遊ぼうかと考えながら目を閉じた。
032
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 24/01/2025
Xに投げた風邪引きバンチ 心配が先立って適量を見失ったブッチvsこの後寝込んだキッド
 元気を出すには甘いものを。よく言うことであり、何かにつけて小さな菓子を寄越してくるブッチらしいことでもある。
 しかし、とキッドはパン粥の皿に視線を落とした。全面を覆う蜂蜜は些か多すぎやしないだろうか。指摘しようにも、大変頑張って作った料理下手が心配そうに横で見ている。
 そうじろじろ見られると食べにくいからと追い払い、食欲は戻ったと示すべく半ば意地で完食した。体力が回復していくのを感じると同時に気力は減ったが、まあいい。
 あんな顔で看病されるくらいなら胸焼けのほうがマシだ。
042
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 01/01/2025
初夢は元日の夜です
 正月早々、金縛りで目を覚まして嫌な汗をかいた。耳元で誰かの声がしている。
「労働基準法……未成年……最低賃金……危険手当……」
 うなされて飛び起きた。ひどい気分だ、去る年の疲れを持ち越してしまったらしい。
 家にいる気になれなくて街をぶらついていると、餅つき大会帰りのモブが餅をお裾分けしてくれた。代わりにお年玉を渡す。
 中学生なら相場は英世さん一人分といったところだろう。
 おいエクボ、なんだその目は。
020
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 31/12/2024
12/31の島テル 「甘かったです」(食べ盛りの食事量の見通しが) 「辛口派だった?」(醤油が)
「おや、キミの年越しそばは雑煮と兼ねる派ですか」
「正月から寒いキッチンに長居したくないんだよ。それでお前、そばは何杯食べる?」
「はい?」
「餅は五個で足りる? 影山くんたちに町内餅つき大会に誘われてて、つきたてを貰うと買った分が余っちゃうかなって」
「それ、詰まらないですか?」
「面白いと思うけど?」
「……とりあえず、そば一杯と餅二つで」
「お前にも遠慮ってものがあったんだね」
「いえ……、いや、いいです」
053
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 28/12/2024
SD🏀/147 イブSSの後日談
「聞けよ宮城、俺クリスマスプレゼント貰っちまったよ。靴箱になんか入ってると思ったら使い捨てカイロでさ、ほっせえ字で『応援してます』って書いてあんの。ありゃ内気で口下手な子が勇気出して入れてくれたんだろうな。もったいなくて使えねえよ」
「悪かったっスね」
「なんでお前が怒るんだよ? うわ早、おい、待てって!」
 分かんねえ人だな、受験生が体冷やすなよ。
030
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 27/12/2024
おっといけねえ カーテンコールです 🎂12/25🎂 六車一家(CoCうちよそ) どうやら信じられない量を食っている
 その夜の公演はメリークリスマスの掛け声で星が降った。イブと当日だけの特別演出だ。スポットライトを受けて舞い散る色とりどりの吹雪がひとひら肩先に降りて、漆黒の舞台衣装が夜空に変わる。なんとなく幸運を掴んだ気持ちで大事にしまった。
 そう、今夜は験担ぎをしてでも気合を入れなければならない。
 晴れやかな終幕から一転、サーカスではプライベートタイムという名のプレゼントが与えられた。どこか浮ついた雰囲気の居住区は部屋代わりのコンテナがずらりと並んでいる。竜大が向かったのは自室ではなく両親のところだった。
「公演お疲れ様ー!」
 いつにも増して上機嫌の母はすでにパーティーハットを被っていた。テーブルにはチキンのバレルが三つ鎮座している。でかい海鮮ケーキ寿司と手当たり次第買ってきたかのような総菜の数々と申し訳ばかりのサラダ。そして横に、シャンパンとワインとビールと日本酒がスタンバイしていた。
「だから飲むなっつってるだろ!」
「だってクリスマスよ?お祝いよ?今日は飲むしかないんじゃない?」
「乾杯は酒だろう」
 真面目な顔で諭してくる母とこちらもパーティーハット装着済みの父と。分が悪いのを一瞬で悟って腹立たしく声を荒げる。
「酔っぱらって一番迷惑するのは俺!皆に頭下げるのも俺、後始末も全部俺!俺俺俺!飲むだけ飲んで気持ちよく寝るだけのお二人には分かんねえだろうけど!!」
「そう怒るな、まずチキンを食おう。熱々だぞ」
「シチューも熱々よ!付け合わせはバゲットとご飯どっちがいい?」
「米」
「米、じゃ!なくて!!」
 酔っ払いを気にせず恋人としっとり通話したい、それだけの願いを叶えるのがどうしてこんなに難しいのか。素直に言えば酒を控えてくれるのは知っているが、実の両親にぬるい笑顔で送り出されるのは未だ慣れない。
「冷蔵庫にケーキもあるわよ、生クリームとチョコとレアチーズとフルーツタルト。あ、真冬ちゃんに写真送るわね。はいチーズ」
「許可と撮影の順序が逆! あと三人で食うのになんでケーキ四つ!?」
「いずれ四人になるでしょ?三人でも食べきる自信はあるわ」
「このサイコロステーキ、焼酎が合うんじゃないか」
「辛めの日本酒もいけると思うわよ」
「だ・か・らぁ!」
 頼むから話を聞いてほしい。星に願わなくても叶えてほしい。他の団員から騒音の苦情が来る前に。
 自分がやりたいことは大体母に先回りされている、そんな状況も早く何とかしたい。
010
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 27/12/2024
🍷12/25🍷 ワイルドバンチ 愛の形
「クリスマス特価、いい響きだなキッド」
「そうだな、素寒貧でさえなけりゃ特価じゃない酒も買えたんだがな」
「ノリノリで賭けたのお前だろ!?」
 騒がしく道端で喧嘩する二人の懐事情は実に寒々しかった。そんなわけで今夜はなけなしの金で飲むのである。
 今のねぐらは隙間風がひどかった。ブッチが外套の端をめくって手招きしたので、ありがたく体温の恩恵にあずかった。余り物のチーズとベーコンの切れ端を固くなったパンに乗せ、安ワインで流し込む。お、とブッチが視線を上げた。
「見ろよ、ツリーに星が飾ってあるぜ」
 窓の外、黒々とした木立の影の天辺に、ひときわ光る星がちょうど重なっていた。思わず笑ってメリークリスマスと隣に声をかければ、キッド坊やは今年いい子にしてたかよと軽口が返ってくる。どう過ごしていたかは互いが一番知っているだろうに。
「サンタなんぞに願うより自分で盗りにいったほうが早いさ」
 あおったワインの酸味にちょっと顔をしかめた。つまみを探した隙に何かが口に押し込まれる。チョコだ。
「くれてやるよ、かわいこちゃん」
 軽口で返すにはあまりに慈愛に満ちていて、黙ってチョコを咀嚼する。床に落ちた銀紙がろうそくの細い明りにきらめいて、地上のミルキーウェイのようだった。
 なんて甘ったるい愛だろう。どうにも座りが悪くて、煙草を一本押し付けた。大したご褒美だと明るい笑いが返ってきた。
010
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 27/12/2024
🍗12/25🍗 グ=ビンネンにて あのメンツを思うと時々兵站が心配になる 放蕩息子の札束ビンタで解決してるのかな
 グリフォン隊の厨房では朝から猛然と包丁の音が響いている。冬の海辺だというのに額に汗がにじむほどだ。ちなみに誰一人として食事は済んでいない。
「こいは鶏んえのころ飯か」
「残念ながら中身は野菜だが。間違っても本場のそれをやるなよ島津君」
「提督、鶏肉確保しました!」
「よろしい、大尉。そちらは別口で焼くとしよう」
「もう鍋ふたつ煮えてて調理場も埋まってますけど!? 何人分すかこれ!」
「心配するな隊長、私と大尉と島津君だけで十分平らげられる」
 嘘でしょ、と悲鳴を上げかけた隊長にまた別の漂流者が声をかけてくる。
「君たち、食事は済んでいるか? 困っているご婦人に手を貸したら何やら貰ったのだが」
「スキピオさん!」
 救世主!神!と称えられて面食らった様子のその人は両手いっぱいに携行食を抱えていた。外には食材を満載した荷車が停めてある。家章を見るに、海軍を支援してくれている篤志家からの差し入れだろう。腹の減る匂いに囲まれているにもかかわらず一口も食べられていない今、心から厚意に感謝した。
「スキピオ氏、君は鶏を何羽食べるかね」
「そんなに食べないのは確かだな」
 単位のおかしい問いかけにあっさりそう返したかと思うと、にやりと笑う。
「なぜならここに牛肉の塊がある」
 腹ペコたちは今日一番の歓声を上げる。隊員たちは「まだ食うのか」の顔を隠せなかった。
110
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 27/12/2024
🍪12/25🍪 Thisコミュ いい子、いい事、いい上官
「デルウハ!これって……!」
 朝食の席へ、頬を紅潮させたハントレスが集まってくる。その手にはそれぞれラッピングされた小袋があった。
「ああ、サンタが来たのか。メリークリスマス」
「嘘、去年までこんなのなかった!」
「じゃあ今年からいい子に認定されたんだろ。それよりまだ開けていないのか?不審物を見かけたらまずは中身を確認しろ」
「不審物はひどくない!?」
 それでもまず開けてみようと皆で頷き合い、一斉にリボンをほどいた。中身は全員同じ、薄くて茶色いものだ。からから鳴ったそれをみちがそっとつまむ。
「――かわいい!」
 お手本のようなジンジャーマンだった。きゃあきゃあ賑やかになった少女たちをよそに、デルウハはお待ちかねの朝食に手を付けた。
 昨夜、イペリットが出た。集合をかけた際、談話室にいた彼女らがサンタの話をしていたのをデルウハは聞いていた。
 多少の不手際はあろうと、八時間あれば「今日くらいあいつらを労ってやりたい」と食料班を説得し、厨房を借り、クッキーを焼いてレシピ本通りにデコレーションし、ラッピングして枕元に置いて回るくらいのことはできる。今日この日だからこそ疑われない。
 誰だって夢を信じたいだろう?
 むつの視線が一瞬こちらを向いた。けれど、目の前の談笑によってすぐ逸らされた。
 ――そう、いい子だ。
110
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 26/12/2024
🍰12/25🍰 ダ飯/カブルーとライオス エルフのアレはシュトーレンに寄せれば美味しそうだけど、美味しいものは高カロリーなんですよ
 ライオスの肉付きがよくなっている。
 おかしい、と顎に手を当てて考える。日頃の食事管理はもちろん、政治の合間に運動ができるよう時間を配分している。盗み食いはないはずだが、それでも足りないのだろうか。
 もしや体質が変わったのだろうかと眉間に皺を寄せると、ええと、と心配そうに当のライオスが顔を覗き込んできた。
「カブルー、渡したいものがあるんだ。受け取ってもらえたら嬉しいんだけど」
 差し出されたのは大きくも小さくもない包みだった。几帳面に結ばれた麻紐をほどいて油紙を開く。シナモンとラムの香りがふわりと鼻先をくすぐった。
「……ケーキ?」
「疲れた時には甘いものって言うだろう? きみには迷惑をかけてばかりだから何かしたくて、皆も心配していて、それで」
 要約すると、彼のパーティー全員で協力してこっそりケーキを焼く練習をしていたということらしい。刻んだナッツとドライフルーツがたっぷり入った日持ちしそうなケーキは、執務の合間に少しずつ食べられるようにという計らいだろう。
 彼の『食べてほしい』は親しい相手によく向けられるのだとこれまでの観察で学んでいる。
「……ありがとうございます」
 カブルーは微笑んだ。
「それはそれとして、明日以降の食事から試食分のカロリー分を引いておきますね」
 叱られた上にご褒美を取り上げられた犬のような顔をされても、そこは譲れないのである。
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Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 26/12/2024
✨12/25✨ ショウ律 違う学校で同じ授業をやってると世界が繋がったみたいで嬉しい
 チャイムの鳴ったドアを開けると、「メリークリスマス!」とサンタとプレゼントが同時に腕の中に飛び込んできた。
 驚くやら照れるやらで自室に押し込み、急かされるまま深い青色の包みをほどけば、同じ色味の筒が現れた。凝ったことにリボンと同じ金色の絵具で細やかな星が描かれている。
「美術の授業で万華鏡作ってさ。ちょっと改造してみたんだ、覗いてみろよ」
 言われるがままそうしてみる。見慣れた室内の風景が万華鏡に変化して、思わず感嘆の溜息が漏れた。
「好きそうだと思った」
 悪戯っぽい笑顔が万華鏡に満ちる。視線から筒を外し、鏡像ではない本体に抱き着いた。
「好きだよ」
 声色に全てをのせて、おずおず背中に回される腕に甘んじた。
 机の陰に隠してあるプレゼントは色違いの同じものだと言ったら、きみはどんな顔をするだろう。
131
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 25/12/2024
🎁12/25🎁 ヨシフと統一郎 ヨシフの出身文化と信ずる宗教によってはクリスマスの重大さが変わってくるよな~の話
 囚人とその妻子との面会はホリデーだった。赤と緑のラッピングを検査で返されてしまった妻は、面会の間ずっと申し訳なさそうにそれを抱いていた。
「人の妻に見惚れるとは礼儀がなっていないな」
 面会が終わったところでそう言われて内心驚いた。この男、見惚れると解釈する心があったのか。「浮かれてるのか?」とかろうじて聞き返す。
 この男にとって、家族と過ごせない不幸と、それでも会いに来てくれる人たちである幸福と、どちらが勝るのかと思っただけだ。考えるまでもなかったようだが。
「妻は人間ができているし、息子は立派に育った。多少浮かれても罰は当たらないだろう」
 目を細めた横顔には父親の感慨が滲んでいた。不器用な男だ。その顔を妻子に見せてやればよかったろうに。
 考え事とともに煙草の煙を吐き出した。
「これは独り言だが、俺はこの後あいつらのホームパーティーに呼ばれている」
「自慢か?」
「写真の一枚くらい貰ってきてやるって言ってんだよ」
 男はわずかに目を見張って、珍しく笑みを見せた。
「……自分で見に行くさ。時間はかかるだろうが、いずれ胸を張って」
 ヨシフはそうかとだけ返してもう一服した。きっとそれは、彼らにとってこの上ないプレゼントだろう。
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Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 25/12/2024
🎄12/25🎄 島テル おうちデートと体格差
「お前にとって雪ってどういうもの?」
 ベランダの窓を開け、ふと振り返って問えば、「氷の塵ですね」と想像以上に風情のない答えが返ってきた。そう、島崎はこういう奴だった。
 雪とは氷の塵のこと。理屈で言えば彼は正しいのだけれど。
「ロマンがないなあ……」
 ぽつりと零した。サンタクロースの正体を知ってしまったような気分だ。それとも視覚の情報が多い分、自分が夢を見すぎなのだろうか。
 焦がれるように手を差し伸べる。風に吹き寄せられた一片が手のひらに落ちて、儚く溶けた。ひとつ、またひとつ。
 どれだけそうしていたか、「雪についてのロマンや風情は分かりませんが」と、背後から影が差した。
「キミはきれいですよ、超能力の気配が光に似ている」
 調味タワーでは他に雷も疾風も地鳴りも感じたけれど、キミは。
「……お前はケーキの上のサンタさんみたいだよ」
 くつくつ笑って、頭から粉砂糖を振ったようなその人の雪を払った。
122
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 23/12/2024
12/24 クリスマスイブ(SD🏀/147) あの頃の学生あるある・しるこorコンポタをカイロ代わりにしつつ、ちびちび飲んで胃を満たす帰り道
 学生にとっての十二月二十五日はクリスマスと終業式を兼ねる。もう明日かと感慨深く部室の戸締まりをする頃には、自分ともう一人しか残っていなかった。三年生のくせにまだ引退せず寒空に文句を垂れている男に嫌味を言う前に、あのフリースローに似た美しいスナップで何かが飛んできた。しるこ缶だ。
「皆には内緒な。風邪引くなよ」
 照れ隠しに口を尖らせて、あざすとだけ小さく返した。
 一足早いプレゼントだと目を細めて笑うこの人たらしが、他の誰かに同じことをやって勘違いされないといいけれど。
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Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 22/12/2024
12/23 東京タワー完成(ゲ謎/💧木) 書くしかなかったパート2 今回はわざと読みにくくしてありますので、適宜ALTをご利用ください
 一足先に仕事納めを迎えて、世界一の電波塔を見に行こうなどと思い立ったのは何故だったか。淡く雪の舞う中に立つ赤い鉄塔が印象に残って、土産にスノードームを買って帰った。
 こんなことが度々ある。銀座のパーラーの前を通りがかって、誰かを連れてきたかったのだと思う。煙草を切らしていたのに気付いて、あいつにやったんだったかと思う。
 でも――誰に?
 記憶の空白の中に住む誰かたちは確かにいて、口先ばかりの営業職を辞したり食事の速度がゆっくりになったり、端々の変化に気付くごとにこう思うようになった。きっとまた助けられたのだ、と。
 スノードームを小さな手でこねくり回していた赤子はようやく眠ったらしい。墓から生まれた子供であっても無垢な寝顔は無条件に愛しい。
 拾った命はお前のために。きらきらと降り注ぐ希望をまとって、何を悔いることもなく生きられるように。そんな未来を願って、眠る。
133
Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 21/12/2024
12/22 労働組合法制定記念日(94/ドラ🧛ク) る~まにあ革命記念日と同日ときたら書くしかなかった
 あらすじ――2時間前が締切だった(過去形)
 修羅場特有のカオスな悲鳴がようやく静まり、どうにかフクマさんに原稿を渡せたロナルドは死んだように眠っている。これで年末休暇でもあるならいいが、この時期の浮かれ騒ぎに便乗して迷惑をかけるポンチもいるため油断ならないのがシンヨコ在住退治人のつらいところだ。シー、と人差し指を立ててジョンと顔を見合わせ、メビヤツと目配せをしてキッチンに立った。なおキンデメさんはさっさと寝ている。
 こんな日は芯から温まるメニューがいいだろう。
 白菜、しめじ、豚肉、大根、と下ごしらえをしては鍋に入れ、ことことと煮る。やわらかく湯気の漂う室内は出汁の匂いがして、ふと笑う。
 竜の一族たる高等吸血鬼がこんなところで肉うどんを作っているなんて、誰が想像するだろう!
 まったく愉快だ。天才ドラルクの見立てでは、同居人はそろそろ腹を空かせて起き出してくるだろう。退治人のくせに、吸血鬼の手料理に微塵も疑いを抱かないぴかぴかの笑顔で。
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Mg.D/マグ @mgdeer.bsky.social · 20/12/2024
12/21 冬至(律) 明るさが増すばかりの日々へ
 夕飯のおつかいで友人を思い出す、というのも妙な話だ。律は彼のしかめっ面を思い浮かべて微笑み、特売ポップのついた立派なゆずをカゴに入れた。
 他に青果をいくつかと、豆腐は好きなものを選んでいいと言われたので以前美味しかったものを取る。母は今頃カボチャと格闘中だ。
 会計を終える頃にはすっかり暗くなっていて日の短さを改めて知る。彼も柚子湯には入るのだろうか。帰ったら電話で訊いてみよう、と話の種の入った袋を鳴らした。
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