帰り道、雨が降ってきた。
今日しか出会えないこの雨を全身で浴びたくなって走り出す。
心地よい。このままもっと感じていたい、もっと、もっと─。
周りの人の声も、街の喧騒も聞こえなくなって、アタシの世界には雨の音だけ。想いに身を任せてスピードを上げていく。そして誰にも、何物にも縛られないアタシだけの世界へと─。
「恐らく君はもう走れなくなる。」
─痛い。
─痛い、痛い。
駆け出す自分の心に反して、爪はズキリと悲鳴を上げる。
痛みを堪えて速度を上げるが、自由の世界はどんどん逃げていく。
走れなくなる、そのことが足枷になり次第に走りが鈍くなる。
雨に混じって、雫が目から零れる。
─やっぱり、痛いなぁ。