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銀紙

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FGOの明智光秀に年中狂ってるオタク。 たまに絵を描く。 好き:横溝正史作品、大河ドラマ、スーパーヒーロー戦隊

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銀紙 @gingami811.bsky.social · 27/07/2025
新聞企画、岡山はマーリンでした
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 15/02/2025
もしZIPANGで秀吉が召喚したのが田中君だったら
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 29/01/2025
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 思いもよらぬ強い言葉に、蘭丸は息を呑む。
「貴殿に誤ったもてなしを教えた輩は、間違いなく悪意を持っていたのです。もしも教えられた通り、誰彼構わず身体を明け渡していたら、貴殿がこの先如何に小姓として、武将として華々しい働きを挙げたとしても、上の人間に肉欲を以て媚びへつらった結果である、という風評がついて回る。そして、貴殿が応じたなら、貴殿の弟御や後輩の小姓達も、同じような事を求められるようになったかも知れぬ。それ程の危機感をお持ちにならねばなりませぬ」
 言ってから、何を熱くなっているのだ、と嗜める自分が居た。
 自分の息子と同年代だからだろうか。
 それとも若者とみるや説教をしたくなる年に、最早なってしまったのだろうか。
 光秀はきまりが悪くなりながら、蘭丸の顔を見た。
「!!」
 泣いている。
 大きな目が溶け出しそうに、雫がぽろぽろ零れ落ちる。
「っ申し訳ない、蘭丸殿。差し出口を申しました」
 光秀の言葉に蘭丸は首を振った。
「いえ、申し訳ないとは私の言葉にて‥明智様の前でお見苦しい真似を‥」
 涙を拭った蘭丸の顔は晴れやかに笑っている。
「これは嬉し涙にございます。そのように親身になって、私を叱ってくださるのが嬉しかったのです」
「蘭丸殿‥」
「明智様の仰る通りでございます。私の無知故に、私自身のみならず森の家名を汚す所でございました。誠に、有難う存じまする」
 深々と頭を下げる蘭丸を見つめながら、聡明さや見目の麗しさもさることながら、こういう素直な気質が信長に愛でられているのだろう、と光秀は得心した。
 するとそこへ、足音が近付くのが聞こえてきた。
「ご無礼仕ります」
 蘭丸よりはいくらか年嵩の小姓だった。
 蘭丸の反応を見るに、唆した輩では無いようだ。
「如何なされた」
「はっ、信長様より明智様にご伝言にございます。『糠に釘を刺し過ぎて疲れた。お前の話は明日聞く』との由‥」
 気が付くと既に雨は止んでおり、熟した柿のような夕陽が部屋を橙に染めている。
 どうやら信長と先客のやり取りはこの時間になるまで続き、その上不首尾に終わったようだ。
 このような事態が起こり得る事を、光秀は予期していた。
 そもそも信長が満足いくような問答を出来る人間の方が少ないのだから。
 故に慌てず騒がず、懐から書状を取り出す。
「伝言、確かに承った。本日参上し、お伝えしようとしていた事柄はこちらに認めております故、中を検めて頂きたい、と信長様にお伝え願えまするか」
 使者の小姓は恭しく書状を受け取ると、この場を去っていった。
 日の紅が光秀と蘭丸を染め上げ、静けさとは対照的に部屋は鮮やかに輝いている。
 ふと蘭丸が呟いた。
「唐紅に部屋くくるとは‥」
「ふ」
 蘭丸の戯れに光秀は思わず笑みをこぼした。
「! 失礼致しました、思わず戯言を‥」
「いえ、こちらこそ。蘭丸殿のおかげで、思いがけず楽しい時間を過ごす事が出来申した」
「そんな、歌に、訓導にと、私の方がもてなしを受けたようなものにて! お恥ずかしゅうございます!」
 本当に顔を赤くして恥ずかしがっているようだが、夕陽の赤が強くてわからない。
 そうしてどちらともなくまた笑い合い、外まで見送るという蘭丸の申し出をあえて辞退し、その場で別れた。
 日の紅が染める部屋で。
 いずれ火の紅の中で対峙する二人の、在りし日の他愛ない語らいだった。
000
銀紙 @gingami811.bsky.social · 29/01/2025
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後者を取る方がマシだと思った。
 光秀の勢いに圧倒されていた蘭丸だったが、ほぅ、と息を吐くと、優雅な仕草で頭を下げた。
「畏まりました。それが明智様のご所望とあらば、早急にご用意致しまする」
 そう言って上げた顔には、身体を開かずに済んだ安堵が滲む。
 そそくさと蘭丸が出ていき足音が遠ざかると、咄嗟の思い付きでおかしな事を口走った自己嫌悪が光秀を襲った。
『もっとやりようがあったのではないか‥』
 例えば秀吉なら、そのするする動く口でその場を上手く切り抜けたのではないか。
 秀吉の事など思い出しようもない雨の日なのに、今日は朝から、誰に言われるでもなく自発的に秀吉と己を比べては、勝手に劣等感に襲われている。
 止む気配もない雨音がじくじくと光秀の思考を蝕む。
『私は、あやつに‥』
 て、て、とと、てと。
 冷たく湿った頭に、ふいに明るい音が響いてきた。
 振り向くと、よたよたと、屏風がひとりでにこちらへ近付いてくる。
 百人一首の屏風が蘭丸には大きすぎたのだ、と気付いた時には、光秀は笑っていて、先程までの昏い思いは霧散していた。
「相済みませぬ、蘭丸殿。大きさまで勘定に入れて居りませなんだ」
「いえ! 嵩張りますが、軽うございます故、運ぶのに難儀はしておりませぬ!」
 屏風の後ろから蘭丸が弾むような笑顔を覗かせる。
 部屋の真ん中に屏風を置くと、光秀と蘭丸はそれぞれ屏風を挟んで向かい合うように座った。
「明智様は全ての歌に通じておいでと存じますが、特に好まれる歌はお有りなのですか?」
「その時その時の気分や状況によって、感じ入る歌は異なりますが‥今日はこの歌が染み入りまする」
 そう言って光秀は特に目立つ所に配された一首を指差す。
 蘭丸は軽く目を見張った。
「ちはやぶる‥」
「意外ですかな」
「いえ! そのような!」
 口ではそういうものの、蘭丸の顔にはありありと「意外だ」と書いてある。
 確かに華やかで、わざとらしさすら感じさせる程壮大なこの歌は、普段の光秀なら選ばない種類のものといえた。
『しかし‥』
 光秀はちらりと欄間を見上げた。
 そこに彫られた波に踊る紅葉からこの歌を連想したおかげで、光秀は窮地を脱したのだ。
 感謝を示すように欄間へ目配せすると、光秀は蘭丸へ向き直り話を続けた。
「蘭丸殿は如何です? お好きな歌はありますかな」
「私はこちらの‥道真公の歌に心惹かれまする」
「成程‥」
「そういえば明智様のお好きな在原業平の歌にもこちらも、紅葉を歌っておりますね」
「そうですな、やはり一面の紅というものは人の心を強く動かすという事でしょうか」
「ふふ‥」
 和やかに語らいの時間が過ぎていく。
 しばらくそうしていたら蘭丸の口もほぐれ、話題は百人一首から取り留めのない雑談へと移っていった。
 光秀はここぞとばかりに、先程の「もてなし」について、誰に習ったのかと水を向ける。
 賢い蘭丸はその問いだけで、光秀の意図を悟った。
「やはり私は担がれたのでございますね」
 己の無知を恥じるように俯く蘭丸は、まるで鈴蘭のように愛らしい。
 しかし光秀はそれに冷たく応じた。
「ご無礼ながら、『担がれた』とはあまりにお考えが甘うござる。貴殿は言うなれば、調略に遭って己の領地を危険に晒したも同じなのですぞ」
100
銀紙 @gingami811.bsky.social · 29/01/2025
2/4
 もてなし、と言われても、酒を飲む訳にも行かない。
「お気持ちは有り難いが、この場を離れる事は出来かねまする」
「‥はい、重々承知しております」
「さりとてこの雨では庭に出る事も能わず‥」
「‥‥」
「‥?」
 光秀は違和感を覚えた。
 光秀が喋れば喋るほど、蘭丸の口が硬く、重くなっていくと感じたからである。
 先程はきはきと、明朗闊達に喋っていたのと同じ童とは到底思えない。
 訝しげな光秀の目線に気付いた蘭丸は、月を捕らえた水盤のような瞳を長い睫毛で翳らせながら答える。
「この場を離れることは難しくとも‥あそこなら‥平気かと、存じます」
 蘭丸は腕をさすりながら、ちらと木戸に目をやった。
 そこは隣の小部屋に通じているとみえ、いやに分厚い戸板が使われている。
 木戸と蘭丸を見比べて、光秀はようやく
『あ!!』
 と蘭丸の言わんとする事を理解した。
 そして自分のあまりの察しの悪さに顔を赤黒く染め、次の瞬間には逆に青白くなった。
 幼い蘭丸にあんな事を、即ち、衆道の誘いを口に出させた罪悪感からである。
 光秀自身、誰かと衆道の契りを結んだ事など人生で一度もない。
 美濃の国主だった斎藤道三は商人から立身出世した人物で、そういう武士の倣いを解さなかったし、土岐や朝倉といった守護職の家や室町の幕府は万事公家風を上に置く風土であった。
 故にそういった習慣とは無縁に生きてきたのだ。
 そもそも衆道の契りとはこれと決めた一人の相手と交わすからこそ尊ばれ、称揚されるものであって、こんな風に暇つぶしの慰み者として供されるようなものでは無いのではないか?
 それとも自分が知らないだけで、昨今の流行りはこういう感じなのか?
 光秀の頭の中で疑問が渦の如くにぐるぐる回る。
「明智様‥?」
 押し黙る光秀を不思議に思ったのか、蘭丸がおずおずと声を掛けてきた。
 光秀の額を汗が伝う。
 ここで蘭丸に、「自分は男色など望んでいない」と言うのは簡単である。
 しかし、その物言いがこの場に適当だとは思えない。
 小姓としての仕事を全うしようとしているだけのこの一生懸命な少年を傷付ける事が、光秀には躊躇われた。
『どうする‥』
 蘭丸の顔をまともに見ることが出来ず、光秀の視線は蘭丸の頭の上、部屋の欄間を泳いだ。
 紅葉が波に踊っている、美しい意匠である。
 その時、光秀の中に閃くものがあった。
「‥蘭丸殿」
「っはい!」
 低い光秀の声に、蘭丸は一瞬身をすくめる。
「百人一首を‥持ってきてはくださらぬか」
「は‥?」
 唐突な依頼に蘭丸は大きな瞳を丸くした。
「この邸には百人一首をあしらった屏風がござる。それを家人に頼んでこの場にお持ち頂きたい」
 折からの雨はますます激しくなり、光秀の灰色の相貌に濃い影を落とす。
 呆気にとられた蘭丸へ畳み掛けるように、光秀は一気に語りだした。
「私は百人一首を三度の飯より好んでおりましてな。歌を声に出して詠んだり、人と歌の好みを語り合うのが何よりも楽しみなのです。蘭丸殿のような若い方がどのような歌を好まれるのか、是非! お教え頂きたく!」
 熱っぽい口調とは裏腹に、喋れば喋るほど、光秀の頭は冷え切っていった。
 主君への報告を待つ間に、他人の邸宅で元服前の童子に百人一首を所望する狂人が爆誕している。
 いや、他人事ではない。自分が狂人になったのだ。
 しかし、暇つぶしに童を抱く色狂いと百人一首狂人を秤にかけたなら、光秀は
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 29/01/2025
明智光秀が森蘭丸と語らう話 1/4 #文庫ページメーカー sscard.monokakitools.net/pagemakers…
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「@gingami811」と記載されています。
以下は本文の内容です。

 その日は朝から雨だった。
 思えば明智光秀の不運は、そこから始まっていたのである。
 
 水を吸った衣を肌から剥がす。
 濡れて色が濃くなった着物の下から自分の肌が覗くのがまるで果物の皮を剥いたようで、滑稽だった。
 今日のように雨に降られたり、登城までに着物が汚れる事はままある事だ。
 その為光秀は常に着替えを持ち歩いており、主に見苦しい姿を晒すことはない。
『あやつなら汚れたままで参上し、それを話の種にでもするのだろうが‥』
 とふいにいけ好かぬ男の顔が浮かんで、光秀は顔を顰めた。
 想像の中ですら腹立たしい笑顔を浮かべている。
 足軽から身を立てた男―秀吉と、浪人の身から幕臣の末席に連なり、今では織田家でも重きを成すようになった光秀は何かと並べられがちで、意識しない、という方が無理な存在だった。
 しかも光秀は秀吉と仕事以外で接触するのをなるたけ避けているのに、秀吉の方は嬉々として城に与えられた光秀の執務室に勝手に入ってきたり、ともすれば家にまで来るのだから、こうして折に触れて勝手に頭に浮かんでくるのは致し方ない事なのだ、と光秀は誰に対してかわからぬ言い訳を心の中で呟く。 
『ええい』
 纏わりつく秀吉を振り払うかのように、光秀は濡れた着物を脱いで投げ捨てた。
 打ち捨てられた着物は一瞬ふわりと空気をはらんで持ち上がったと思うと、力なく萎んで床に張り付いた。
 
 激しい雨の音と、ぴちゃぴちゃと軒先から雨露が落ちる音とが静かな部屋に響いている。
 同じ雨がもたらす音でも、感じ方がまるで違う。
 それはちょうど、少し離れた間から聴こえる明晰かつ矢継ぎ早な信長と、ぐずぐず長いが要領を得ない誰ぞ家臣との問答にも似ていた。
 あのやり取りが続く限り、光秀はこの次の間に留まらねばならないのだ。
 多少うんざりはしたが、こんな事は織田に限らずどこへ行っても同じように起きる。
 光秀は退屈を顔に出さぬよう努めながら、窓の外を見た。
 季節の花や木々が整えられているが、あまり趣向を感じさせるものではない。
 安土城完成まで、信長の仮の在所とされているここは佐久間信盛の邸であり、庭の工夫のなさがそのまま本人の人間性を表しているようだ、と光秀は冷たく思った。
 自分ならどう作るか、と思案して、ふと、光秀は視線を感じて目を部屋の中へ動かした。
 はっとするような美童がこちらを見ている。
 確か名は
「森蘭丸殿」
 引っ張り出した記憶がそのまま口をついて出た。
 呼ばれた蘭丸はパッと顔を上げ、
「ははっ、信長様の小姓の末席を汚しております、森可成が一子、蘭丸にございます。明智様のような重臣の方にお見知り置き頂き、恐悦至極に存じまする!」
 と一息に捲し上げた。
 まだ声変わりもしていない、鈴を転がすような子供の喉であまりに大人びた口を利くものだから、光秀は面食らう。
 しかしすぐに気を取り直し、
「蘭丸殿の心配りの利くこと、そこいらの大人を遥かに凌ぐ、と信長様からよく聞かされております。今年小姓になられたばかりというのに、ご活躍ですな」
 とそれこそ大人に言うように、褒め言葉を告げた。
 まだあどけなく丸みを残した頬がぽっと赤くなる。
「かたじけなき事‥」
 と嬉しさを隠しきれぬ弾んだ声音でそう答えた蘭丸だったが、すぐさま顔を引き締め、居住まいを正した。
「明智様、恐れながら、信長様はまだまだお時間がかかる由。お待ち頂く間、この蘭丸、明智様をおもてなしせよ、と承っております」
「はあ」
 思わず気の抜けた声が出た。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/01/2025
妹の推し活に随伴した功徳が秀吉と明智の漫画となって返ってきました。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 21/12/2024
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来たる嵐の予感に二人は草臥れ果て、さっきはあれほど鮮やかに映った着物の錦も最早目に染みて痛い心地すら覚えるのだった。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 21/12/2024
2
森長可の接近に。
「‥ッ」
「な、長可殿っ!」
鬼武蔵を前に、光秀と秀吉は二人して固まった。
雲をつくような威容の長可だが、女装大会である今日は薄化粧を施した顔の造作の美しさの方に目が行く。
彼がその美貌を信長に愛でられる蘭丸の兄であるという、普段忘れがちな事実を二人に思い起こさせた。
「羽柴殿、源氏物語読み進めてんのかよ」
かぱっと笑った口がまるで虎挟みのようで、その瞬間光秀と秀吉は我に返った。
「いやいや、読み進めてる等とはとても言い難く‥ほんのすこぅし読んだのみにて」
光秀は秀吉の笑顔を貼り付けたような面付き、と常々思っているが、長可を前にした秀吉の顔たるや、貼った端から剥がれているような有様だった。
「んじゃ読書会しようぜ!」
「「え?」」
繋がっていない会話に思わず光秀と秀吉が異口同音に声を漏らす。
「だからよ、普段書を読まねぇ奴が独りで読もうとするから進まねぇんだよ。知ってる奴の手を借りて、読む機会を強制的に設けちまえば、読むのも捗るし、理解も深まるだろ」
長可の言い分は最もだが、その言葉を受け、秀吉は「俺モテたいだけだからそんな真剣に勉強!て感じの事しなくても良いんだけどな」と、
光秀は「此奴は女遊びの道具に用いたいだけだから、そんなに真剣に勉強させても馬の耳に念仏なんだよな」と、それぞれ大体同じような感想を抱いていた。
「明後日でいいか。俺の屋敷来いよ。明智殿も一緒に」
「「えっ!?」」
自分らの意向をまるきり無視した話の展開に、中年二人は再び異口同音に叫んだ。
「な、何故私も‥!?」
「俺だけだと俺の解釈だけ聞く羽目になんだろうが。てめぇ以外にまともに語れる奴家中に居ねぇしよ」
いちいち言う事が最もだ。
自分達の意思を無視して話を進める所が唯一にして最大の問題だが。
「わ、わ~い、お二方とも某の為にかたじけのうござる~」
秀吉の口調はいつもの陽気なそれだが、目が死んでいるのが光秀にはありありと伝わった。
このままでは秀吉が全五十四帖を諳んじるようになるまで、光秀も秀吉も長可の屋敷から出してもらえない、等という恐ろしい事態になりかねない。
その恐怖が、光秀を突き動かした。
「私の屋敷で催しませぬか!」
紅を引いて尚薄い唇から出た大声に、秀吉と長可が振り向く。
「様々な写本を揃えておりますし、娘らの為にと凝った装丁の書もいくつか持っております。そういった楽しみ方も、羽柴殿にお伝えしたく」
光秀は素早く秀吉に目配せする。
我が意を得たりとばかりに秀吉が続く。
「そこまで言う程凝った装丁、見とうござる!そもそも装丁を凝る、というのもよくわかりませぬし!」
背中に汗が伝うのを感じながら、二人は長可の様子を伺った。
すると
「良いじゃねぇか!」
小柄な秀吉など飛ばされそうな大声で長可は笑った。
「俺も明智殿の蒐集品、見たくなってきたぜ!人の家の蔵書なんざ見れる機会中々ねぇしな!よっしゃ!日取りはそっちに任すからよ、なるべく早く知らせてくれや!」
言うだけ言うと長可は去っていった。
気力の全てを彼に持っていかれたかのように、光秀と秀吉はただそこに佇む。
「明智殿、かたじけのうござる」
「いえ、私にも関わる事なれば‥」
「このまま日取りを定めずに有耶無耶に‥出来れば苦労はせん、でござるよな~‥」
「‥むしろ早々に決めて、一日でも早く終わるように努めましょう」
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 21/12/2024
明智光秀と羽柴秀吉、源氏物語を読む羽目になる話 #文庫ページメーカー sscard.monokakitools.net/pagemakers…
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「@gingami811」と記載されています。
以下は本文の内容です。

普段は黒ずんだ印象の城内が、今日は着物の錦で百華繚乱美しい。
華やかなのは良い事だ。
首から上に乗ってるのが、白粉と紅で飾った泥団子共で無ければもっと良いのに、と自身もその泥団子の一人である羽柴秀吉は思った。
信長の思い付きで開催された、織田家家臣の女装大会である。
滑稽なものを見て笑いたいのか、それとも化粧で意外に化ける様でも見たいのか、意図はよく分からない。
趣旨がなんであれ、男女比が七対三を下回る催しに秀吉は興味が無いのだ。
人が固まっている所に居るのは御免、さて落ち着ける所はないかしら、と辺りを見回す秀吉は、同じく輪から離れた同輩を見つけ、嬉々として近寄った。
「よっ!実写版弘徽殿女御!」
「あぁ、お貸しした源氏物語、ちゃんとお読みになっているんですね」
嫌味を褒められる事ほど恥ずかしい事はない。
秀吉は口を尖らせながら明智光秀の隣に座った。
念入りな化粧が却って彼の顔の険を際立たせ、どう見ても意地悪な年嵩の奥女中である。
「少しは乗ってくれても良いではござらんか」
「羽柴殿がどの程度読み進めているのか、私には分かりませぬ故。下手に先を喋っては興醒めにございますれば」
借りたのは先週だが、読破したとは全く思われていないらしい。
その通りなのだが。
「いやぁ、読み進めるのが大変でして」
「まあ、馴染みが薄い言葉も多いでしょうからな」
「いや、高貴な生まれで顔の良い男がモテるっていう設定がムカついて‥」
「もう返してください」
光秀の苦い顔を意に介さず、秀吉は舌を出して話を続ける。
「自分が女に袖にされたばかり故、引く手あまたの光源氏が憎たらしいのでござるよ」
「どうせ手紙のやり取りもそこそこに、太夫に床入りを迫って叩かれたんでしょう」
光秀は最早秀吉の方を見ようとすらしない。
「失敬な!贈り物をしたのに、フラれたのでござるよ!」
格好が女のそれだからか、しなを作りながらプンスコする様がいつも以上に光秀の不快感を誘う。
「では贈り物が気に食わなかったのでしょう」
「花が嫌いな女がおりましょうや!?」
「花‥?」
「左様!紅花に『太陽のような君へ』と手紙を添えて‥」
その言葉を聞いた瞬間、光秀の目が僅かに見開かれるのを秀吉は見逃さなかった。
「明智殿‥何か、心当たりがお有りのようですな」
「心当たり‥というか、そうですね‥」
光秀は少し考える仕草をし、秀吉に向き直る。
「羽柴殿、やはり源氏物語をお読みになるべきかと存じます」
光秀の意図が測りかねたのか、秀吉は首を傾げた。
「それは‥馬鹿とブスこそ寺に入れ、みたいな話でござるか?」
「全然違います」
呆れ顔の光秀は更に言葉を重ねる。
「羽柴殿。私は貴殿の先程の言葉から、貴殿の読了具合が少し判りましたよ」
今度は光秀の言葉に秀吉が目を見開く番だった。
「そして同様に、貴殿を袖にした女は貴殿が源氏物語も読んだことのない野暮な男、と思った事でしょう」
「ーつまり、某がフラれた理由は源氏物語の中にある、という事でござるか?」
秀吉の言葉に光秀は頷く。
光秀は秀吉に教え諭す優越感。
秀吉は女に袖にされた原因が浅学に依るものだと知った悔しさ。
いずれにせよ強い感情というものは、得てして感覚を鈍らせる。
否、そもそも二人の優秀さは官吏として、将としてのそれであって、中年である事も相まって兵としては特筆すべきものはない。
だから、事が起こるまで気づけなかった。
「おう、なんか面白そうな話してんじゃねぇか!」
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 28/11/2024
4/4 #文庫ページメーカー sscard.monokakitools.net/pagemakers…
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「@gingami811」と記載されています。
以下は本文の内容です。

光秀の目が秀吉を正面に捉え、口元は皮肉げに歪んでいる。
今朝見せた愛想笑いよりよっぽど嬉しい。
レアリティの高さを感じる。
「明智君の驚いた顔見たかっただけやからさ。触れてほしくない話だったら別に聞かんよ。」
「あぁ、説明が面倒なだけで、隠してるわけじゃないんだ。たぶんサマの奴も、秀長君には話してるんじゃないかな」
住宅街の真ん中で語られるには重たいストーリーだった。
光秀と秀満は兄弟ではなく従兄弟であり、元々は父を早くに亡くした光秀と母が、秀満の父親である父方の叔父に引き取られて暮らしていたが、その叔父が経営する会社が、親会社のお家騒動のゴタゴタに巻き込まれて倒産し、叔父自身も過労で亡くなってしまう。女手一つで光秀と秀満を育てる事になった光秀の母は、二人を連れ、仕事を求めてこの街へやってきた‥
話し手の説明力と聞き手の理解力が同程度に高くなければ、喫茶店の奥の方でじっくり腰を据えて聞きたいレベルの内容だ。
話の終盤、光秀は冷たく自嘲する。
「室町高校は学力だってそりゃ見るけど、何より重要なのは生徒自身じゃなくてその家の格だ。三代続けて室町高校OB、というのは入学する上で最低限の前提で、歴史があって尚且つ成功している、多少の事では揺らがない地盤がある家の人間であって、初めて人権が与えられる」
自分は与えられなかった側の人間だと、言外に語る。
秀吉は無性に腹が立った。
光秀を嗤った連中に、ではない。
自分と同格の癖に、そんなマウンティングでおめおめと負けを認める光秀に、だ。
『あぁ、そうか』
何故こうも光秀が気に障るのか、ようやく秀吉は腑に落ちた。
同じだから。
何が、までは細かく言語化出来ないけれど。
他の人間なら、ねねに近付いた所で気にも留めない。
他の人間なら、自分が知らない情報があった所でどうでもいい。
自分と同じ光秀だから、こうも気になる。
この感情を、関係を、光秀ならきっと〝同族嫌悪〟と呼ぶに違いない。
自分なら、もう少し素直に名付けたい。
「初回無料ガチャで神引きしましたって自慢しとるやつ、無茶苦茶ダサいやん」
湿度の高い過去話への感想第一声としてありえない言葉に、光秀は面食らった。
「‥何の話?」
「家が太いのを鼻にかける奴ってつまりはそういう事やろ」
「‥」
「室町高校OBです、ってプロフに書いた所で、今日びスパム垢しか引っ掛からんよ。俺は母ちゃんバツ3で、実は弟と妹父親違うし、チビだしクッソ貧乏だった。でも俺は明智君以外の学校の連中教師も含めて全員、ううん、この街の人ら6割なんかしら顔見知りで、ツケがきく店両手両足で足らんくらいあるし、ナンバーワンキャバ嬢とプライベートでサシでカラオケ行ったことある」
漫画のようなタイミングで、トラックが秀吉に向けてクラクションの挨拶をしながら、2人の横を通り過ぎていく。
「明智君は頭ええし、俺には見向きもせん女子が明智君に向けてキャーキャーゆうとるし、応急手当の資格持っとって、人助けた事もあるんやろ」
最後のは弟からの横流し情報だ。
「応急手当の資格が、学歴より上?」
そう問う光秀の声音は、苦笑のような、懇願のような。
「何のために良い学校に行くんか、いうたらそりゃ人の役に立つためや。いつか一万人救うかもしれん奴より、もう1人助けた事が有る奴の方が偉いに決まっとるで」
舗装したての白線の上で、秀吉はまるで舞台の主役のように胸を張る。
「室町のカス共より、俺等の方がモテるし、バズるポテンシャルがあるし、沢山の人の役に立てる!」
そう言って秀吉は、ライバルに向けて笑いかけた。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 28/11/2024
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光秀の目が秀吉を正面に捉え、口元は皮肉げに歪んでいる。
今朝見せた愛想笑いよりよっぽど嬉しい。
レアリティの高さを感じる。
「明智君の驚いた顔見たかっただけやからさ。触れてほしくない話だったら別に聞かんよ。」
「あぁ、説明が面倒なだけで、隠してるわけじゃないんだ。たぶんサマの奴も、秀長君には話してるんじゃないかな」
住宅街の真ん中で語られるには重たいストーリーだった。
光秀と秀満は兄弟ではなく従兄弟であり、元々は父を早くに亡くした光秀と母が、秀満の父親である父方の叔父に引き取られて暮らしていたが、その叔父が経営する会社が、親会社のお家騒動のゴタゴタに巻き込まれて倒産し、叔父自身も過労で亡くなってしまう。女手一つで光秀と秀満を育てる事になった光秀の母は、二人を連れ、仕事を求めてこの街へやってきた‥
話し手の説明力と聞き手の理解力が同程度に高くなければ、喫茶店の奥の方でじっくり腰を据えて聞きたいレベルの内容だ。
話の終盤、光秀は冷たく自嘲する。
「室町高校は学力だってそりゃ見るけど、何より重要なのは生徒自身じゃなくてその家の格だ。三代続けて室町高校OB、というのは入学する上で最低限の前提で、歴史があって尚且つ成功している、多少の事では揺らがない地盤がある家の人間であって、初めて人権が与えられる」
自分は与えられなかった側の人間だと、言外に語る。
秀吉は無性に腹が立った。
光秀を嗤った連中に、ではない。
自分と同格の癖に、そんなマウンティングでおめおめと負けを認める光秀に、だ。
『あぁ、そうか』
何故こうも光秀が気に障るのか、ようやく秀吉は腑に落ちた。
同じだから。
何が、までは細かく言語化出来ないけれど。
他の人間なら、ねねに近付いた所で気にも留めない。
他の人間なら、自分が知らない情報があった所でどうでもいい。
自分と同じ光秀だから、こうも気になる。
この感情を、関係を、光秀ならきっと〝同族嫌悪〟と呼ぶに違いない。
自分なら、もう少し素直に名付けたい。
「初回無料ガチャで神引きしましたって自慢しとるやつ、無茶苦茶ダサいやん」
湿度の高い過去話への感想第一声としてありえない言葉に、光秀は面食らった。
「‥何の話?」
「家が太いのを鼻にかける奴ってつまりはそういう事やろ」
「‥」
「室町高校OBです、ってプロフに書いた所で、今日びスパム垢しか引っ掛からんよ。俺は母ちゃんバツ3で、実は弟と妹父親違うし、チビだしクッソ貧乏だった。でも俺は明智君以外の学校の連中教師も含めて全員、ううん、この街の人ら6割なんかしら顔見知りで、ツケがきく店両手両足で足らんくらいあるし、ナンバーワンキャバ嬢とプライベートでサシでカラオケ行ったことある」
漫画のようなタイミングで、トラックが秀吉に向けてクラクションの挨拶をしながら、2人の横を通り過ぎていく。
「明智君は頭ええし、俺には見向きもせん女子が明智君に向けてキャーキャーゆうとるし、応急手当の資格持っとって、人助けた事もあるんやろ」
最後のは弟からの横流し情報だ。
「応急手当の資格が、学歴より上?」
そう問う光秀の声音は、苦笑のような、懇願のような。
「何のために良い学校に行くんか、いうたらそりゃ人の役に立つためや。いつか一万人救うかもしれん奴より、もう1人助けた事が有る奴の方が偉いに決まっとるで」
舗装したての白線の上で、秀吉はまるで舞台の主役のように胸を張る。
「室町のカス共より、俺等の方がモテるし、バズるポテンシャルがあるし、沢山の人の役に立てる!」
そう言って秀吉は、ライバルに向けて笑いかけた。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 28/11/2024
2/4
「そう、明智秀満。あ、お兄さん高等部の2年生だって言ってたよ。俺もあんちゃんが2年生だって話してさ、どんだけ共通点あるんだよって話になって~」
「ていうかなんで明智秀満でサマちゃん?」
「それね、サマちゃんの‥」
秀吉を置き去りに、食卓の話題はくるくる回る。
流石に兄弟の有無くらいは世間話ついでに聞いていたが、母子家庭と言うのは今日初めて知った。
秀吉が知らなかった光秀の情報が他人からもたらされた。
それが何だか気に障る。
いやいや、労せず光秀の情報が手に入ったのだから、これは秀吉にとっては良いことの筈だ。
いや、筈ってなんだよ、と頭の中の自分同士がごちゃごちゃ喚く。
箸を止めて思考にふける秀吉は、ブロッコリーが妹の皿から自分の皿へ不法入国しているのにも気が付かないのだった。

翌朝。
「明智君、中等部に弟居るんだって?」
挨拶も省略し、秀吉は光秀に開口一番そう言った。
ジャブですらない。案の定光秀は驚いた様子もなく、
「‥あぁ、秀長君にはすごく良くして貰ってる、とうちのが言ってるよ。ありがとう」
と事も無げに返した。
そしてそのまま立ち去ろうとする。
だがそれを秀吉は許さない。
「弟達に倣って、兄貴同士俺らも仲良くしようや!」
踊るように後ろから回り込み、太陽のような笑顔で光秀の進路を防ぐ。
「ああ、そうだね。そう出来たら嬉しいな」
温度のない愛想笑いと社交辞令。
秀吉とは対象的な無駄のない動きで秀吉の横をすり抜けると、光秀は
「1限目は生物だ。移動遅れるよ」
と今度こそ秀吉を置いて去っていった。
置いてけぼりの秀吉は、けれども先程より笑みを深くしていた。

放課後の通学路を男子高生が並んで歩く。
より正確に述べると、秀吉が光秀の左腕に絡みつきながら歩いている。
光秀の面付きの尋常ならざる苦々しさは、決して歩きにくさのせいだけではない。
「嬉しいわ~明智君も俺と仲良くしたいって言ってくれて!」
ひとえに秀吉にまとわりつかれる不快感と、軽々しく言質を取らせた自分の軽挙への憤りだった。
「言っておくけど今日バイトがあるから。いつまでもは付き合えないよ」
イラつきを堪える光秀に、秀吉は笑いを堪えながら応じる。
「室町高校から来たお坊ちゃんがバイトするん?」
朝の言葉とは違い、これは明確なジャブだった。
光秀の眉間の皺が深くなる。
「室町高校から来たからといって、別に金持ちって訳では無いよ。むしろ金がないからあそこから出たんだ。弟から聞いてないかい?」
「それはうちの弟って意味?」
秀吉を振り切るような速度で歩いていた光秀の足がピタリと止まる。
「他にどういう意味があると?」
「いんや、ただの確認。明智君とこの秀満君って、弟じゃないよな?」
秀吉は光秀の左腕を解放した。
もう物理的に拘束しなくても、光秀は逃げないと確信したからだ。
「‥どこでそう思った?」
どうして?と問わない所に嬉しさを感じた。
普通の相手とは滅多に感じられない会話のスピード感が、秀吉の舌を滑らかに動かす。
「朝俺が弟がいるんかって聞いた時。答えを用意しとるような間があったろ?ホントはそうじゃないけど、説明が面倒臭いからそういう事にしとこ、っちゅー感じが出とったよ」
「なるほど。説明し慣れてるつもりだったけど、見る人が見れば分かるんだね」
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 28/11/2024
現パロ 高校生の明智光秀と羽柴秀吉の話 ※捏造設定多々在り ※秀吉の口調が筆者の空想上の尾張弁 1/4 #文庫ページメーカー sscard.monokakitools.net/pagemakers…
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「@gingami811」と記載されています。
以下は本文の内容です。

転校生の明智光秀は色んな意味で目立っていた。
歴史ある名門校として名高い室町高校からやってきた事。
転入試験を非常に優秀な成績でクリアした事。
どうやら留年しているらしい事。
そんな光秀に対し、秀吉は何くれとなく世話を焼き、クラスに馴染めるよう働きかけた。
目の前の人間に親切にする事、そしてその人物の懐にスルリと入り込む事は、秀吉にとってほぼ反射のようなものだ。
心を掴んだ後、それを利用する事もあれば、何もせず、ただの親切な隣人として在り続ける事だってざらにある。
しかし光秀は秀吉の親切に感謝はしても、心の裡を明かす事は全くしなかった。
秀吉の親切に対し、勝手に穿った見方をするような連中とも違う、易々とは越えがたい一線を感じるのだ。
まあ勘の良い奴はたまに居る。
気難しそうな顔をしているし、パーソナルスペースが広いんだろう。
そう、光秀が自分に打ち解けない事など、秀吉にとってはどうでもいいのだ。
秀吉が気に食わないのは―
「明智君、視聴覚室はこっちよ」
「ありがとう、浅野さん」
彼女のねねが、熱心に光秀の面倒を見ている事。
その一点だ。
今日もまた移動教室まで並んで歩く二人の後ろを、秀吉は不満を隠すことなく付いていく。
ねねの奴、クラス委員だからって高校生にもなってそんなに一から十まで教えてやる事ないだろうに。
おいおい、そんなニコニコしてたら勘違いするぞ。
なんか思い詰めたら突飛な行動にで出そうじゃん?そいつ。お節介委員長キャラも程々にしとけし!
と斜め後ろから突き刺さる秀吉の視線が、言葉よりも雄弁にねねに文句を投げつけてくるのだ。
たまらずある日の帰り道、ねねは秀吉に抗議した。
「トーキチロー、いい加減にして!明智君、彼女居るんだから。私とどうにかなったりなんか絶対に無いわよ!」
「おいおい、結婚しとっても不倫する奴がおる世の中やぞ?彼女が居る事なんか何の安心材料にもならんわ。実在するかも怪しいし」
「トーキチローも私の存在を無かったことにして、よく他の女の子と遊んでるもんね?」
思わぬブーメランに秀吉は串刺しだったが、それに怯んで二の句が継げぬ男ではない。
「とにかくアイツは虫が好かん。惚れた女と嫌いな男が仲良うしとって気分のええ男はおらんて。わかるやろ?」
どの口が、という話だが、ねねも結局秀吉に弱い。
「上手いことばっか言うんだから‥」
うっすら染まったねねの頬に、秀吉は己の勝利を確信する。
安堵する秀吉の耳に、ねねの小さな呟きは届かなかった。
「明智君とトーキチロー、仲良くなりそうな気がするけどな‥」

その日の羽柴家の夕食。母と姉が、弟の話に耳を傾けていた。
「それでね、今度サマちゃんと自転車で行けるとこまで行ってみようって話になって」
「大丈夫なの?」
「平気だよ。僕とサマちゃん、体力テスト学年ワン・ツーだもん」
「そのサマちゃんって最近よく話に出てくるわね。転校生なんだっけ?」
ご飯をかっこんでいた秀吉が、転校生というワードにピクリと反応する。
「うん。サマちゃん家もお母さんとお兄さんだけらしくて、それきっかけで話すようになったんだ」
「サマちゃんって苗字明智?」
突然会話に割り込まれ弟は一瞬驚いたようだが、兄が自分の友達に興味を持った事が嬉しいのか、笑顔で返す。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 23/11/2024
3/3
そういえば光秀は越前に居た頃、暇にあかせて医術に銃と様々な分野の学問を修めたというから、陰陽道を齧っていても不思議はない。
なーる、陰陽術ね、理解理解と一人合点した秀吉の頭上から光秀の声が降ってくる。
「そういう事ですので」
どういう事だろう。
「我等はこれにて。参りましょう、羽柴殿」
「アッハイ」
ぽかんとした面のまま動けずにいる他の連中を尻目に、光秀は悠然とその場を後にし、秀吉もそれに続く。
先を行く光秀の後をただついて行く道のり。
何が起きたか訳が分からず、秀吉は狐に抓まれたような心地がした。
あ、光秀だと思っていた眼前の男は、実は狐だったのではないかしら。
鼻から顎から、顔のあらゆる部位が尖っているし、そういえば髪型も狐の尻尾の先みたいだし。
なーる、狐ね、理解理解、と秀吉が本日二度目の一人合点をした所で、ふと狐の光秀が足を止めた。
気が付くと二人は門の前に立っている。
「ここまで来れば、追いすがっては来ますまい」
と光秀は広間の方向を見やって言った。
「長可殿があの場に居られず幸いでござった。あの方が居られたなら、あのように工夫のない引用ではその場を辞すのを許しては貰えますまいから」
そうなんだ。
「あの、あの言葉はなんだったのでござるか?」
秀吉にしては珍しくおずおずと口を開く。
「万葉集にある山上憶良の歌にござる。『憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ』子供と妻が待っているので宴を中座します、という‥正に今の我らそのものを表した歌ですな」
そうなんだ‥さっきから俺、これしか思ってないな、と秀吉は心の中で一人ごちた。
「さて、歌の通りに早々に帰るとしましょう。羽柴殿も寄り道などせず、真っ直ぐ屋敷に戻られませ」
屋敷の方向は同じなのでわざわざここで別れずともよい話だが、秀吉が真っ直ぐ帰るとは思ってないのか、単に秀吉とこれ以上並んで歩きたくないのか、何にせよ光秀は秀吉の言葉を待たずにずんずんと歩き出す。
光秀に借りを作った事や、学をひけらかされた悔しさが湧き上がっても良い筈だが、酒の回った頭ではそんな考えも浮かばぬのか、あの地獄から無事抜け出せた喜びが勝るのか、とにかく秀吉はただ黙って光秀の背を見送った。
いつか生まれてくる子供には最高の師を付けて学をつけてやろう、と密かに誓いながら。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 23/11/2024
2/3
もない言葉だ。
光秀が時々見せる、この純朴な家族観は光秀の持つ何よりも秀吉の心にざわめきを齎す。
秀吉自身には冷たく憎らしげな光秀だが、秀吉の家族には概ね好意的である。
彼は今現在の羽柴家を以て、昔の羽柴家も同様に明るく仲の良い家だったのだと、疑いもなく信じているのだ。
自分自身が、苦労は多くても明るく互いを慈しみ合う家に育ったのと同じく、秀吉の幼少期も、そのような温もりに包まれていたのだと。
光秀の母は茶碗いっぱいにほおずきを食べたりしない。
光秀に後事を託して逝ったという叔父は、光秀を殴ったことなどない。
光秀は―
「やはり通字にするなら「秀」が良うござる」
光秀の方を見ずに、秀吉は答えた。
光秀が少し目を見張るのを横目に続ける。
「日「吉」から始まる人生など、子供には送って欲しゅうござらん。「秀」吉となってからの上り調子を、子にも受け継ぎとうございます故」
言い切ってから、ようやく秀吉は光秀を見た。
光秀は微笑んで
「それが羽柴殿が子々孫々に願う事なら、お考えの通りになさるのが最も良い事と存じます」
と応じた。
光秀に心の裡を悟られずに済んだ安堵と、何の衒いもない彼からの賛辞に、秀吉も軽く笑みを浮かべ、二人の間には心地よい静寂が

訪れなかった。
「■■■~!■■■■!」
認めたくない現実がのしのし近づいてくる。
最初に届いたのは酒と汗の混ざった臭い。
次に飛び込んできたのは黒光りする肉と毛。
そして最後に胴間声が鼓膜を殴りつける。
「サル!明智殿!楽しんでおられますかな!?」
褌一丁の柴田勝家だ。
むさ苦しさという概念の擬人化であり、この古参飲み会を象徴する存在でもある。
その出で立ちに気圧されながらも、光秀が口を開いた。
「柴田殿、何故‥そのようなお姿を‥?」
「いや、昔話に花を咲かせておったら、ふと二人の様子が目に入りましてな。話題に入れず、ご不快に思われたのではないかと」
ご不快なのは話題ではなくこの場の全てなので、無用の気遣いだった。
そんな二人の心の叫びには当然気付かず、勝家は続ける。
「故に人を選ばず楽しめるもの‥相撲をやってはどうかと思った次第にて!!」
相撲こそ人を選ぶだろう!と思っても、舌が喉に張り付いたように動かない。
どうする、と秀吉は頭を巡らせた。
この場から逃れる事自体は難しくない。
なにか理由をつけて回れ右して駆け出せば、酒に足を取られた連中は身軽な秀吉に追いつけない。
しかし、面子を重んじ、臆病者を何よりも下に置く武士の社会にあって、相撲が嫌で逃げた等と言われた日には生きて行けぬ。
普段は独楽のように回る頭が、今は石臼のように重い。
酒のせいか、そも酔っぱらい相手に考える事の無意味さが、無意識のうちに思考の歩みを止めさせるのか、今の秀吉にはわからなかった。
窮した秀吉が隣の光秀を見ると、一瞬目が合った、ような気がした。
光秀は秀吉と勝家の間に立つと、すうと息を吐き、この場の全員に聞こえるように声を上げた。
「おくららは いまはまからむ こなくらむ それそのははも われをまつらむそ」
「は?」
場を支配していた喧騒が一気に静まり、無音となった。
全員固まっている。
かくいう秀吉も何が起きたのかよくわからず、ただ横にいる光秀を見上げた。
人の動きを止める呪文か何かなのだろうか。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 23/11/2024
明智光秀と羽柴秀吉が地獄の飲み会に出る話 ※秀吉の幼少期が若干薄暗い捏造描写有り 1/3 #文庫ページメーカー sscard.monokakitools.net/pagemakers…
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「@gingami811」と記載されています。
以下は本文の内容です。

隣に座る光秀の渋面を肴に、秀吉は杯を傾けた。
囃し立てる言葉が頬に溜まっては、口にすることなくため息となって出ていく。
いつもの秀吉なら、ありとあらゆるうざ絡みと軽口で光秀の眉間の皺を深めているだろう。
そんな気力も今日は湧かない。
だってここは地獄なのだ。
「うおおおお!!!」
何度目か知れぬ雄叫びが耳をつんざき、酒臭い男達の吐息が部屋の空気をますます濃く重くしてゆく。
古参家臣中心飲み会という名の地獄なのだ。

始まりは信長も交えた戦勝祝の宴だった。
全てが速い主は興が冷めるのも殊更早い。
「うん、もう寝る。お前らは好きにせよ」
の一言で引き留める事すら許さず去っていった。
そこで終われば良いものを、不忠者共は「好きにせよ」を錦の御旗に宴を再開したのである。
信長の去り際の見事さを、秀吉も真似るべきだった。
戦勝祝の高揚感が判断を鈍らせた。
信長の居ない酒席なら、女を呼んで盛り上がれる、という下心もあった。
小一時間後出来上がったのは、白粉の代わりに蒸発した汗が塩となって輝く男男男の地獄の宴であった。
最初は酔いに任せた連中が何か使える情報や秘密を吐きはしないかと嬉々として加わっていた秀吉だったが、玉石混交の石の割合があまりに多い無駄話に愛想の弾も尽きてしまった。
抜け出そうにも無限に絡まれ、酒を勧められ、また輪の中に戻される無限地獄だ。
光秀の隣から動かぬのは、秀吉としては消耗を抑えるための消去法の消極策なのである。
丁度車座の話題は織田家の先代だか先々代時代の苦労話であり、秀吉と光秀は蚊帳の外なのも都合が良かった。
ノブ、ヒデだかカツだか、登場人物の名前が似通っていて、傍から聞いていてもちっともよくわからない。
「何故武士というのは皆似たような名前をつけるのでしょう」
独り言のつもりで呟いたが、光秀もこの騒音の中黙っているのが苦痛になってきたのか、言葉を返してきた。
「同じ字を用いる事で一門としての結束を強める横の繋がり、代々続く歴史ある家なのだと示す縦の繋がり、似たような名前を付ける利点は多数ございまする」
別に「うんうん、みんな似てて混ざるよね~」みたいな相槌を期待していた訳では無いが、それにしたって説教くさい。
何となく面白くない心地がして、秀吉は常には出さぬ棘を含めてこう返した。
「ふぅん‥では歴史ある明智のお家にも、当然通字はお有りなのでしょうな」
光秀にとって明智の家とは、歴史ある清和源氏の流れを汲むという誇りと、危うく滅びかけた没落した家門である、という負い目が同居しているのである。
明智一門といった所で、今現在成人した男子は光秀の他には彼の従弟の左馬助しかいない。
秀吉の読み通り、光秀はまだ塞がらぬ傷を撫でられたような顔を一瞬浮かべ、質問に答えた。
「明智の家は土岐の本家から別れた家門故、分家した当初は土岐本家と同じ「頼」を通字としていたそうですが、私の何代か前から「光」を通字としております」
「じゃあ「光秀」の余った秀の字は某が貰い受けても問題ないですな」
「どういう理屈なんだよ」
酒が入っているとは思えない速度とキレのあるツッコミである。
常ならばここで会話が終わるが、意外にも光秀は言葉を繋いできた。
「普通に考えたら、通字とすべきは「吉」の方ではないですか?」
普通の意味が判じかねて、秀吉が先を促すように唇を突き出すと、光秀は不思議そうな顔をして
「親から貰った名にも入っているのでしょう?」
とさも当然のように言った。
秀吉に対し何かしらの嫌味を込めないと気がすまない光秀には珍しい、何の他意
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/11/2024
最後
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/11/2024
4
010
銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/11/2024
3
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/11/2024
2
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/11/2024
続き
110
銀紙 @gingami811.bsky.social · 19/11/2024
【FGO】明智光秀と羽柴秀吉が小姓探しをする話 ※時系列、設定等全てご都合主義の妄想設定 ※光秀視点なので秀吉に対してあたり強め
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 16/11/2024
先週神戸に遊びに行って来たんですけど、これは友達が「銀紙が好きそうな草があるよ!」って呼び止めてくれた明智みたいな植物(神戸感よ)
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 04/10/2024
明智をしばく準備は万端整ってるのだが…
020
銀紙 @gingami811.bsky.social · 21/09/2024
Bluesky のユーザー数は現在 1,000 万人を超えており、私は #5,463,516 番目でした。
A virtual certificate with text "Celebrating 10M users on Bluesky, #5,463,516, 銀紙 ‪@gingami811.bsky.social‬, joined on 2024年4月15日"
020
銀紙 @gingami811.bsky.social · 12/09/2024
0120
銀紙 @gingami811.bsky.social · 12/09/2024
1100
銀紙 @gingami811.bsky.social · 12/09/2024
明智光秀ぬいを作った苦労を少しでも世の人に知って欲しい、と妹が言うので、明智のぬいを作ってもらうまでを漫画にしました。
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 11/08/2024
誕生日プレゼントに妹から明智のぬいを貰いました!嬉しすぎ!!!!滅茶苦茶明智なのに滅茶苦茶可愛いので、全人類見てください
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 01/05/2024
トーキチローと明智、お見舞いに行かされるの巻
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銀紙 @gingami811.bsky.social · 18/04/2024
天海と信綱さん
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